「外国にルーツを持つ子ども」や「外国につながる子ども」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?正確な定義はなされていない言葉ですが、「親の両方またはいずれか片方が外国出身者である子ども」という意味で、多文化共生や外国人支援に関わる方々に使われています。

同じ状況にある子ども達をあらわす言葉として、このほかに「日本語を母語としない子ども」や「移民の子ども」など、子どもの状況やニーズや地域などにより様々な呼ばれ方をしていますが、共通しているのは、その範囲を「外国籍の子ども」に限定していないということです。
 
2015年に生まれた赤ちゃんの50人に1人が両親のどちらかが日本人で、もう片方が外国人であり(厚生労働省・平成27年度人口動態統計)、日本国籍を持つ日本人の子どもの中にも、少なくない数の「外国にルーツを持つ子ども」が含まれていることがわかります。また、外国籍を持つ子ども達の中にも、日本で生まれ育ち、日本語しか話せないという子どもも、筆者がこうした子ども達を支援する現場レベルでは増加している印象です。
 
 
「言葉」の壁が不登校を招いたり、進学を阻んでいる
 
彼らの抱える最も大きな課題の一つが「ことば」であるという点は想像しやすいかもしれません。

特に来日直後の外国にルーツを持つ子どもたちは、日本語がわからないため、学校の勉強についていくことができず、教室の机に向かってただ座っているだけしかない日々を送ったり、友達を作れず、強い孤独を感じたりということが少なくありません。文科省の調査によれば、このような日本語のわからない子どもたちが、全国の公立学校に37,000人在籍していて、このうち6,800人は何の支援も受けることができていないことが明らかとなっています。(文部科学省「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成 26 年度)の結果について」
 
 
言葉がわからない中、日々学校に通わなくてはならないことの負担は大きく、不登校になる子どもも少なくありません。また、言葉の壁から基礎学力を伸ばすことが難しく、一説には外国にルーツを持つ子どもの高校進学率は50%前後にとどまるのではないか、とも言われています。

一方で、子どもたちの日本語教育機会はその質と量ともに、自治体や地域による格差が大きいのが現状です。自治体の人口に占める外国籍住民の割合が高い「集住地域(しゅうじゅうちいき)」では比較的手厚い支援が行政主導で行われているのに比べ、外国人割合が少なく、地域の学校に1人しかいない、市内にも数名がパラパラと点在しているだけ、というような「散在地域(さんざいちいき)」では、十分な支援体制が整わないところも多数存在しています。
 
いじめや差別、偏見にさらされ、居場所が見つけられない
 
外国にルーツを持つ子どもたちは、自らのアイデンティティに「ゆらぎ」を抱えることも少なくありません。

日本で生まれ育ったり、幼少期に来日していたりしても、あるいは日本国籍であっても、肌や瞳の色、親が外国人であるという事実だけで、いじめや差別、偏見にさらされ、居場所を見つけられずに苦しい思いをすることがあります。筆者が出会ったある子どもは、日本で生まれ育ち、日本から出たこともなく、日本語しか話せないにも関わらず、見た目の違いからいじめのターゲットとなり、長期にわたって不登校状態に陥りました。「自分は日本人だと思っているけれど、日本人はそうは思わない」という言葉は、その子どもの深い悲しみを強く表しています。
 
保護者の就労状況が不安定で、経済的に苦しんでいる家庭が多い
 
外国人保護者の中には、日本語の壁などから就労状況が不安定となり、失業と就業を繰り返したり、工場のアルバイトなどで子どもたちを養う家庭は珍しくありません。筆者がこれまでに出会ってきた400名を超える外国にルーツを持つ子どもたちの中では、約30%が困窮家庭や外国人ひとり親家庭の子どもたちでした。

貧困・困窮あるいは十分な収入のない不安定な状況は、外国にルーツを持つ子どもたちに様々な影響を与えており、昼夜働く親に代わって幼い兄弟の世話をするために学校から足が遠のいたり、親の失業に伴って高校進学をあきらめ、働いて家族を支えようとする子どももいます。

子どもの貧困の厳しさはもちろん、日本人の子どもたちにとっても同様ですが、外国にルーツを持つ子どもたちの場合は、外国人保護者や本人が、日本語が十分にわからないため、必要な支援にアクセスできなかったり、情報を得られなかったりと言った困難が重なり厳しい現状です。
 
適切な支援環境や教育機会があれば、日本と海外をつなげられる可能性を持っている
 
こうした外国にルーツを持つ子ども達は、現時点では、彼らが抱えている困難や課題がクローズアップされがちですが、適切な支援環境や教育機会が提供されれば、バイリンガル・バイカルチャーとして日本と海外とをつなげられる可能性を持つ貴重な存在です。

海外で生まれ育ち、成人前後に来日する留学生と大きく異なる点は、外国にルーツを持つ子ども達は、その家族の生活基盤が日本に根付いている上、日本国内で幼少期から基礎教育を受けることなどから、日本の文化や社会や事情に精通し、日本側に根付いた視点でも活躍できることです。いわば、「内発的なグローバル人材」としてのポテンシャルを有する彼らの教育や生活を支え、地域での自立と就労を推進する事で、日本社会が得られるメリットは決して小さくありません。

現在、日本で暮らす外国人の、日本への定住・永住志向の高まりが全国的に指摘されています。2015年度の統計でも、外国人の在留資格内訳は定住や永住など、日本国内に長期的に滞在することが可能な資格が半数以上を占めています。(法務省「在留外国人統計」2015年12月末)つまり、外国にルーツを持つ子ども達とその家族は、いつか「帰国する」お客さんではなく、共に地域や社会を作り上げる仲間であり、私たち日本社会の未来に新たな力を与えてくれる鍵となる存在だと言えます。
 
 
多様性が「豊かさ」となる未来を目指して 
 
今回は外国にルーツを持つ子ども達の現状と課題、そして彼らの可能性を簡単にご紹介させていただきました。次回以降は、もう少し詳しく、子ども達が抱える課題を見つめながら、どのような支援が必要なのか、現在どのような取り組みがなされているのか、私たち1人1人にできることはなにかについてご紹介していきたいと思います。

外国にルーツを持つ子ども達、その家族をはじめとする多様な人々が織り成す社会が、豊かさの源泉となる未来を目指して、ぜひ外国にルーツを持つ子ども達の事を多くの方々に知っていただけたらと思います。

NPO法人青少年自立援助センター 定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター 田中宝紀 
 

 
【外国にルーツを持つ子どもたちに、日本語を学ぶチャンスを】 
 
 
NPO法人青少年自立援助センター・定住外国人子弟支援事業部は、外国にルーツを持つ子どもと若者のための日本語教育・学習支援事業、「YSCグローバル・スクール(旧:多文化子ども・若者日本語教室)」および、就労支援事業、講演活動などを行っています。現在、東京都福生市において、5歳以上の子どもたちの日本での暮らしを支えています。2014年度は5歳~18歳の計106名が通学し、出身国は中国、フィリピン、ネパール、ペルーほか12カ国にのぼりました。

当教室で日本語教育を必要とする子どものうち、30%がひとり親家庭、32%が生活困窮・低所得家庭です。生徒たちの中には、ひとり親や就労が不安定な家庭など、月謝が払えずに通学が続けられない子どもが大勢います。子どもたちが豊かな可能性を花開かせることができるよう、ご協力いただけませんか?