放課後とは、「課」(学校の授業)から解き「放」たれた「後」という意味があります。世界の子ども達は、学校の授業から解き放たれた放課後をどのように過ごしているのでしょうか?前回の記事(個を優先するアメリカとコミュニティの中で過ごすカナダ)では、アメリカとカナダの放課後についてレポートしました。今回の記事では、フィンランドの放課後について見てみましょう。他国の「放課後」から見えてくる日本の「放課後」を考えます。
 
(放課後での遊びを楽しむフィンランドの子どもたち) 

子どもでいられる短い期間を子どもらしく楽しむ
 
「学力が世界一」など近年取り沙汰されることが多いフィンランドの教育。フィンランドの文部大臣はこう話しています。「宿題を止めたら成績が伸びたのよ。」

実際の様子を見てみましょう。宿題は、日本の学校よりは量は少ない感じではありますが、平日はほぼ何かしら出ている様です。でもそれは時間がかかる様なものではなく、国語の本読みなど、パパッと短時間で終わらせることが出来るものがほとんどです。ちなみに夏休みなどの長期休みには、宿題はありません。この辺のメリハリが日本とは違うところでしょう。

基本的には授業時間は、3~4時間と他国と比べると短く、「子ども達は遊ぶことが仕事」と考えられており、学校が終わると、子ども達は近くの公園や自宅で友達と遊んだり、不定期に学校で提供されている放課後クラブ(楽器演奏、手芸、コーラス、美術工芸、語学など学校によって様々)に参加したり、有料の日本で言う所の学童保育所の様なところで過ごしたりするのが一般的です。遊びの中で学ぶことが大切にされ、子どもでいられる短い期間を子どもらしく楽しむことが大事だとされています。
 

(フィンランドの放課後は、様々な場所で友達と遊んでいる姿が見られる)
 
スポーツクラブや各種習い事に通う子どもたち

日本の学校のような学校単位の部活動はありませんが、市や競技団体などがやっているスポーツクラブや各種習い事に通う子は結構います。何もしていない子ももちろんいますが、何かしら子どもが楽しく打ち込めるものを持っていた方が、「何もせず家でゲームばかりするより良い」と思うのはどこの国でも同じです。それに、運動なり何かしらやる事は、横道に逸れてしまうのを防ぐためにも有効と思っている親も多いです。

基本的にスポーツや武道などの習い事は、教えている大人達の仕事が終わってからの夕方か始まりがほとんどで、そういった習い事を子どもがしている場合、フィンランドでも親はその送り迎えに忙しいのは同じです。土日も試合や遠征等あり、忙しいのもやはり同じ様です。ただ、日本の部活動の様に強制ではもちろんない為、習い事の有無で休日の過ごし方はかなり変わってくると思います。

日本の学習塾のような、学校外で勉強を有料で教える様な場所はありません。学童で宿題をみてくれたりする事はあるようです。学校によっては先生も授業が終わったら帰宅し、子どもたちはそこからフリー。近所の子どもたちと誘い合って、一度帰っておやつを食べてから学校にきて校庭でサッカーなりアイスホッケーなりをしている子も多いです。もしくは、近所の子どもたちと遊んでいるのも良く見かけます。町の子ども達は、ユースセンターが主催しているクラブやイベントに参加しています。

子どもだけを家に置いておくことはあまりないので、両親のどちらかが仕事を調整したり、お友達のお宅に遊びに行く場合は、そこのお宅にお任せする。この国では親もそんなに遅く帰ってくるわけではないために、親御さんの忙しさも日本のそれとは少し異なっているようです。


(身近に豊かな自然があるフィンランドでは、自然の中で遊べる機会も多い)
 
滑舌が悪い子どもたちの特別支援ような形で、放課後に学校に言語の専門家が来て、ちょっと教えていたりもしているようです。フィンランド人と話をしていて驚くのが、使いこなせる言語の数。フィンランド語、英語はあたりまえ。そこにスウェーデン語、ドイツ語、フランス語、スペイン語などが加わることもしばしば。以前働いていたフィンランドの会社は、共に働いていた同僚約40人の全てが三言語を話すトライリンガル(trilingual)、もしくは四言語以上のマルチリンガル(multilingual)だったことです。彼らの大部分がそれらの言語を学校、もしくは放課後に遊びながら覚えたと話していました。

オーストリアの放課後は、かなり時間があるとのこと。日本の小学4年生くらいまでは、自由すぎて、先生も子どもと一緒に帰宅。そのあとにギムナジウム(ヨーロッパの中等教育機関)か、職業教育の学校に分かれて行って、ギムナジウムになると勉強が厳しくなります。

世界と日本の放課後の過ごし方の違い
 
こうやってみると、世界の放課後も日本に似ている部分もありますが、大きな違いは放課後の過ごし方が「本人の意思であるか」、そして「遊ぶ時間の大切さにも重点を置く」ということでしょう。そのため学校側も宿題の量とその質、または出し方を工夫しています。子ども達は遊び、友達と過ごし、そしてその中で人として成長します。そのための放課後であると考えられているのです。

もちろん日本の部活動が子ども達の心と体に与える素晴らしい影響もあります。成長期の一時期に、一つの事に集中することで得られる成功体験は、その後の人生を支えてくれます。

昔は良かったという懐古の情で考えるのではなく、「昔」から学ぶ良さ、そして「現代」の社会が持つ良さとを融合し、子ども達が将来を生き抜く「知恵」を学ぶ時間となることを考えて行く岐路に立っているのでしょう。

そして、記憶に残る放課後の風景を沢山も持たせたいものです。彼らが成長したとき、その風景を思い出して元気になることが出来るような。過ごした地域、友人、隣人を思い浮かべることが出て来きるような風景。思い出す放課後の風景が勉強机だけにならないように。

最後にこの原稿を書くにあたり、多忙の中、快く協力してくれたManako Takahara Peiponen(フィンランド)、Michiko Shiraishi(オーストリア)世界中で頑張る仲間たちに感謝します。
 
 
多文化共生子どもサポート団体「感環自然村」代表/通訳・翻訳家 坂井公淳

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感環自然村は「五感を使い人と人、人と自然の環(わ)を創る」「違うがいい、違うが楽しい」「Think outside the box - 型にはまらない自由な発想をしよう」この三つをモットーに国籍や言語の違い、障がいの有無に関係なく誰でも集える場所を創るという想いのもと、2010年5月に長野県飯田市で設立された多文化共生子どもサポート団体です。多文化と触れ合うことで心に壁を持たない大人を育てること、異年齢での活動の中で他者と支え合い協力することを学ぶ事、これらを通しての次世代育成と真の国際人育成を目的として活動しています。現在、日本人、外国人合わせて約60名の子ども達が15名の国籍が異なるスタッフたちと活動しています。

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