昨今、長時間労働や精神疾患休職者数の増加など、学校教員・教師の厳しい労働環境について、様々に報じられるようになりました。「将来、学校教員・教師になりたい!」という気持ちで教育学部に進学しつつも、心のどこかで「本当に大丈夫だろうか?」と不安な気持ちを抱えている学生も多いと思います。根本的な労働環境の改善が進むことが必要であることが第一ですが、この状況がすぐに是正されるとは限りません。以前と比べても、子どもや保護者、社会から学校教員・教師に求められる対応のレベルも年々高まっています。それに比例するように、初任者に求められるレベルも高くなっています。教員採用試験に合格して、初任者として学校へ勤めるようになれば、すぐに教育現場を任されることになります。民間企業のように新卒同期と一緒に数か月の研修・指導を受けて、配属されていくわけではありません。

大学1・2年生のうちから準備を進める

実際に学校教員・教師になってから苦労しないように、大学在学中から教員として活躍できる力を身につけておく必要があります。もちろん、まだ学校教員・教師になるのか迷っているのであれば、早い段階から自分の適性を見極めておかなければなりません。大学3・4年生の数週間の教育実習期間で、初任者として必要な力が身につくことはありませんし、就職活動が早期化している現状を踏まえれば、教育実習後に適正を見極めるのでは遅いと考えるべきだと思います。

教員採用試験の勉強や実習などを踏まえると、大学1・2年生から準備を進めておくことが非常に重要です。学校教員・教師の適性を見極めるうえでも、実際に学校教員・教師として活躍するための力をつけるうえでも、二つの「経験」が必要だと考えています。一つは、「学校教員・教師以外の民間企業などで働く経験」、もう一つは、「学校内外で多様な子どもを指導する経験」です。「経験」は、一朝一夕でできるものではないので、早くから取り組んで在学中に一つでも多くの経験を積み重ねられるようにしなくてはなりません。

インターンシップに参加して学校以外で働く

一つ目の「学校以外で働く経験」は、民間企業・NPOなどの中長期のインターンシップで経験することができます。なお、1日や数日の体験イベントではありません。学校教員・教師を志望する学生の中には、それ以外の仕事に関して視野の狭い学生がたびたび見受けられます。学校教育を全く受けないで大学に入る人はいないので、学校教員・教師のイメージは持ちやすく、その他の仕事についてあまり知らないままに教育学部に入っている学生も少なくありません。民間企業での中長期のインターンシップを経験することで、様々な社会人と関わって、どのような仕事をしているのか理解を深める中で、「この仕事も面白いな!」と感じたらそちらへシフトしていくことも良いと思います。

また、このような経験は、「学校教員・教師になる!」と決めている学生にとっても、将来、子ども達を指導していくうえでメリットがあります。自分の指導している子ども達が何らかの民間企業に勤める可能性は高く、進路指導・相談やキャリア教育などを行っていくうえでは、とても有益な経験になります。インターンシップの中で、効率性やマルチタスクなど仕事の基本を学べることは、学校教員・教師の業務にも役立ちます。

>>大学1・2年生からはじめる本気のインターンシップ「DRIVEインターン」

(NPO法人ETIC.のインターンシップには、これまでに3,000人以上の学生が参加している。月1回のインターンシップの説明会を行っている)
 
ボランティアで多様な子どもを集団指導する
 
二つ目の「学校内外で多様な子どもを指導する経験」は、学校や教育系NPOの中長期のボランティアで経験することができます。文部科学省の中央教育審議会の答申(平成27年12月21日:これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について)では、「学校インターンシップ」(就業体験)の導入が挙げられています。教育実習とは別に、1年生から小学校・中学校・高校の教育現場でインターンシップを行うというものです。正にこれにあたることですが、学校教員・教師は子どもを取り巻く環境や教育資源を包括的に学ぶ必要があり、学校内だけで留まるべきではないと思います。
 
島根大学教育学部では、高度な教育実践力を養成するため、「教育支援センター」を立ち上げ、全国初の1,000時間におよぶ体験学修の必修化(卒業要件)をスタートさせました。そのうち、約半分の510時間は、基礎体験として、学童クラブやキャンプ指導などの学校外の教育・福祉の場も含めた体験を必要としています。「教育支援センター」は、これらの体験学修の企画、運営、管理をしています。
 
 
学校教員・教師に必要な力として、「授業力」という言葉がよく聞かれますが、教師には「授業」のほかに、「学級経営」をする力も求められます。一人ひとりの子どもと信頼関係を築きながら、30人~40人の学級という一つの集団を作り上げていく能力が必要です。学級の中で起こる様々な問題やトラブルにも対処していかなければなりません。もちろん、個別対応が必要な場合もあります。しかし、個別対応では限界があり、「学級をどう作っていくか?」「学級としてどう解決していくか?」と、学級という集団で問題に向き合っていく必要があります。そのためには、学校教員・教師としての高いリーダーシップやコミュニケーション能力が必要です。こういった力を身につけるためには、一朝一夕では難しく、早くから多様な子ども達と関わってトレーニングする必要があるのです。
 
教職課程がはじまると、大学の授業や課題で忙しくなり、単位として認定されない限り平日の日中の小学校・中学校・高校でボランティアやインターンシップを行うことは難しくなります。土日祝日や長期休みと重なって参加できる教育系NPOでのボランティアやインターンシップは、活用しやすい機会になると思います。

>>子どもの遊びと学びを支える教育ボランティア

(NPO法人夢職人では、多くの大学生や若手社会人が週末や長期休みに教育活動に取り組んでいる。継続的に参加した学生の幼小中高の教員合格率は100%)

大学3・4年生と学年があがるにつれて、教員採用試験の勉強に時間もかかるようになり、学校教員・教師になるために必要な経験を積み重ねていく時間が十分に取れなくなります。大学1・2年生のうちから大学の授業以外でも積極的に行動していくことが、いずれ子ども達と向き合う教育現場に立った時、大きな自信にもつながると思います。
 
「教師」に関する記事一覧
 
ウェブマガジン「ひみつ基地」編集部