(3keysの学習支援・教室型指導の様子)




◆ 起こりやすい支援のミスマッチ

私が運営している特定非営利活動法人3keysは、すべての環境の子どもたちが自立するために必要な支援や情報が十分に行き届くことを目的に、格差の下にいる子どもたちへの支援を届けています。対象としている子どもたちの親は、貧困、精神疾患、離婚、DV、無業者、生活保護等、精神的にもしくは経済的に自立していないことが多く、子どもたちに十分な学習どころか、愛情や安定した生活の提供も難しい家庭も少なくありません。そのような子どもたちは状況がさらに悪化し、育児放棄や虐待に及ぶと行政の下で保護され、児童養護施設等の施設に保護されたり、里親の下で育てられるなどしています。3keysが現在、特に対象にしているのはそのように行政の保護下で暮らすことを余儀なくされた子どもたちです。このような子どもたちを総称して社会的養護下の子どもたちと呼びます。

このような子どもたちを支援していると、ありがたいことに企業や他NPO、個人の方からあらゆる支援の申し出を受けることがあります。特に多いのが、以下の3種類です

①感銘を受けた本やぬいぐるみ、古着など、使い古しのものの寄付

②オンライン教材や、タブレットなどの高度のツールの提供

③1日のイベントやワークショップの実施や、1~2か月限定の学習支援

3keysではそのような寄付やイベントと子どもたちをつなぐためのあっせんも行っていますが、基本的に上記のものは支援のミスマッチが起こりやすかったり、提供数に対して希望数が少なかったりすることが多いのです。

図1は3keysの支援対象である、児童養護施設で外部にどのような支援を求めているか、2011年に調査されたものです。勉強サポートや、マンパワーの増強など、日常的な支援や継続的な人手を介した支援のニーズは非常に高いのに対して、プレゼントや本、イベント実施などの非日常的な支援はほとんど求められていないことがわかります。

◆ 児童養護施設の過酷な労働環境

まず前提として、子どもたちが保護されて行く児童養護施設等は、他の福祉や教育現場と同様、子どもの人数に対して大人の数は少なく、労働環境もかなり厳しいです。具体的には児童養護施設の場合、大人一人で5.5人の子どもたちの親代りとなり24時間体制で運営されています。24時間勤務はできないため3人で3交代制となっていますが、1人親が6人近くの子どもを育てている状況と変わりません。それに加えて1人の子どもの病院の付き添いや、学校で3者面談の付き添いが入ると、残りの子どもたちを見るために別の人が残業をすることになったりもします。18歳を超えて施設を出た子どもたちとも継続的に連絡を取り合い、トラブルがないかも確認しているので実質は10人以上の子どもたちのことを常に頭の中で把握していなくてはいけないという、とても厳しい環境です。基本的には日常的なケアを行うのに手いっぱいな状況であることが前提です。そんな中でなぜ①~③の支援にミスマッチが起きているのかについて、今回はまず①の使い古しの物や思い出の品の寄付について紹介します。 

最初に断わっておきたいのは、このミスマッチについては決して支援をしたい側だけの責任ではないと思っています。現場が現状を適切に伝えていないことや、NPOや支援現場が本当はいらないものも相手を傷つけないように受け入れすぎてしまった結果なのかもしれません。しかし、日常的なケアで圧迫している支援現場にとって、不要なものを受け入れ、必要なものとそうでないものをわけ、不要なものを処分したり、在庫を抱えたりするのも実は大変な作業なのです。そうでなくても少ない時間を、より子どもたちへの愛情や支援に回してほしいと思う気持ちが強く、誰かしらがこのミスマッチの現状を伝えないといけないのではと思い、この記事を書くに至りました。また地域や施設によってはニーズの差も多少あると思います。私たちが見ているのは主に東京を中心とした都市部で、都市部は支援を行い人も地方に比べたら多く、地方に行くと状況は変わる可能性もあります。

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