ビッグイシュー・オンライン編集部より:2014年12月14日(日)、東京・新宿の損害保険ジャパン日本興亜本社ビルにて、「若者政策提案書・案」の発表シンポジウムが開催され、若者支援団体のスタッフや若者問題に関心を寄せる方など、100人以上が集まりました。当日の様子を一部紹介します。

▼若者の支援に必要なことは?シンポジウム参加者とのディスカッション

第3部では、特別発題として「地域若者サポートステーション利用者1,200人の調査から見えてきたこと」として、NPO法人文化学習協同ネットワークの佐藤洋作さん、原未来さんにご報告をいただいたあと、シンポジウムの参加者による自由討論を行いました。調査報告の内容は、2015年2月に発行した『若者政策提案書』に掲載しています。ここでは、自由討論の内容をご紹介します。



有給休暇取得、残業代をもらうのは当たり前の権利(参加者1)

残業代をもらってない若者が多い。福祉施設で実習したことがあるが、彼らは残業代を当たり前のように請求しない。有給休暇をとるとか残業代をもらうのは当たり前の権利だということを、誰かが教えてあげるべきではと思う。

(高橋)弁護士会の取り組みに、法教育というものがある。学校のなかで、もう少し実社会で自分たちの持っている権利とか義務をきちんと理解するための教育をしていこうという考え方がある。また一方で、そのもっと手前、「あなたは、あなたとして、そこにいていいんだよ」という自己肯定感をもつこと、「個人の尊重」というものが、社会のベースとして必要なんだという人もいる。

日本は北欧に比べて、何でも親任せ。国が子どもを育てていない(参加者2) 

日本の全体的な問題として思うことは、今の政治では投票権のある高齢者や働いている人にばかり税金を使われているイメージがあること。日本は北欧に比べて、何でも親任せ。国が子どもを育てていないイメージが強い。住まいが余っているのに民間で管理しているとか、奨学金が給付じゃない点とか問題がたくさんある。

子どもたちの格差についていえば、経済的なものと、精神的なものの2種類あると思う。僕は22年間生きてきて、住まいと家庭環境が幸せに一番直結すると思っている。教育とか、友達がいるとか、働くとかいうのは、あくまでプラスアルファ。住まいと家庭環境がしっかりしてないと、「幸せだ。心から豊かだ」とは思えない。

誰も家庭環境は選べないが、子どものうちは収入がまったくない。今の社会だとなんでもお金がかかり、生まれた環境が嫌でも親からの収入がすべて。施設に行っても、親がいれば親に相談させられる。

その解決策として、公的な無償の寮やホテルを小中学校や大学の周りにたくさんつくるほか、給付型奨学金、教育費の無償化などの政策を政府にはしてほしい。

今の政治は数で行うイメージがあり、いい政治家やいい意見があっても意味がない。メディアも扱わないので、どこから情報を仕入れていいかわからない。政治家ひとりひとりをみて尊重すべきだと思う。

サポステのような若者支援があることを、今日初めて知った(参加者3)

私自身が15年以上ひきこもっていた。でも、サポステのような若者支援があることを、今日初めて知った。

ひきこもっている間もテレビや新聞やネットは見ていたが、まったくそういう情報につながれなかった。いまひきこもっている方に届ける手段として、大きなメディア、接しやすいメディアとつながることが大事ではないか。

あと、若者同士だけだと行き詰るところもあると思うので、ダメな大人でも、成功している大人でもいいから、若者がいろいろな人や世代の姿を見て学んでいくことが大事。いろいろな年齢層の人が交流できる場にしたほうがいい。

また、中高年などの社会人向けセミナーを開いて、若者問題への意識を持つ人を広げたい。こういうことが問題だと、もっと知らせる場を作っていけたらいい。そのためには、お金が問題になってくるが、政府にばかり頼っていていいのか。政権交代で今まで続いていた支援が切られることもある。自分たちで財源を確保する道を探すべきじゃないか。

メディアの課題(白水)

(白水)「サポステの存在を知らなかった」とおっしゃった方には、情報が届かず申し訳なかった。

テレビや雑誌など、メディアの取材依頼は多い。若者や生活困窮などがキーワードになると「当事者を紹介してほしい」という話がほとんど。取材対象とつながりたいから支援機関から紹介してほしい、と。

社会全体の問題としてとらえるとか、社会はみんなで支えていくものだということが前提の取材ではなく、「個人」のこととしてアプローチした方がわかりやすい、と言われる。そのほうがうけるから作るのだと思うので、国民側の意識も学ぶ必要がある。

子ども・若者の育ちの期間にはいろんな人と出会うことが大事。地域のボランティアからフルタイムのスペシャリスト職員までさまざまにいたらいいし、出会う場所としてユースセンターが有効だと思う。ただ、年齢が上の人がいると発言しにくい場面もあるので、子どもが主役で大人はわき役としての出会いと運営が大切という認知が必要になる。

自然な会話・つながりから仕事に出会う(参加者4)

静岡県の事業で若者や生活困窮者の就労支援を行っている。

小さいテナントの2フロアを借りて伴走支援をしている。ここでは、若者と地域の大人がつながって地域の資源にあたっていく。1階のスペースを使って、ボランティアが手芸や簿記の講座を開くなどしている。人との関わりの中で、気持ちがあたたまる場所としての取り組みをしている。

その中で、たまたま耳にした仕事の話に興味をもって、それをきっかけに社会に出ていくようなイメージ。親以外のかかわりが一人増え、二人増え…という形になるよう活動を展開している。

(津富)公開求人で仕事に就くのが難しい人も多い。今発言いただいたように、私の団体では、会話の中で「こういう会社を知っているよ」と仕事につながる情報が自然に公開されることを目指している。

若者支援の必要性を共通認識に(参加者5)

2010年に若者自立塾の事業が廃止になって悲しかった。せっかく現場で経験を積んだスタッフが散ってしまう。経験が継承できないのが悲しい。児童養護施設でもどこでも、スタッフの経験や技能を継承していくのは大切な問題。政策の中で、スタッフ・職員の生活の安定や技術の継承を訴えてほしい。

宮本先生が3年くらい前に「会議を3年やってきて、ようやく若者に支援が必要だということが議論できるようになった」とおっしゃっていたのが印象に残っている。「若者に支援が必要だ」ということを社会全体の共通認識にし、恒久法を通して予算をはかり、支援員の継続的な教育や技術向上をはかっていかないと対応できないとあらためて感じた。そこが盛り込まれたらうれしい。

単年度事業の苦しさ(白水)

(白水)単年度事業の苦しさは大きい。若者のサポーターはプロの職業としては認められていない。大学にも養成コースはない。例えば大学院で専門教育を受ける臨床心理士のような対人援助の基礎学習を終えた人たちが若者支援の現場で働いてくれるのは、資格がない間だけ。その後、福祉職求人の条件となる「支援経験3年以上」をクリアし、結婚や子育てなどを考える年齢になると、継続的に働ける医療や福祉の現場のほうが安定的に生活できるから、転職したいというのを引き留められない。

単年度事業なので、来年スタッフを継続的に雇えないかもしれないという苦しみがある。よく行政の方が「自主事業でお金を集めてください」とおっしゃるが、当事者はお金払える状態じゃない。

だからといって生活困窮者の枠に若者が入るかと言えば、収入は世帯で見られるので親に収入があると、本人が無職で困窮状態にあっても、困窮者だとは認められない。若者がどんな状態でもユニバーサルな支援が受けられる状態にしてほしいし、そのためには拠点とスタッフを継続できる制度が必要だと思う。

親の家にいるから飢えずに、路上に出ないで済んでいる(佐野)

(佐野)佐藤洋作さん、原未来さんによる12か所の地域若者サポートステーションでの利用者調査報告でも、利用者層は「困窮していない」のが69%という話がありました。

若者の住宅問題の調査報告資料を出しましたが、40歳未満を若者として、若者・未婚・年収200万以下という条件で、首都圏と近畿圏の若者1767人を対象に調査をしました。そうすると、「親の家に住んでいる人」は77%だった。

つまり、親の家にいるから飢えずに、路上に出ないで済んでいる。27%が就労経験なく、無職の人も4割います。ひきこもりや無業の人と重なる人がずいぶんいる。年収は若者個人でみると、50万円未満が半分以上でした。若者で未婚で200万未満の中に無収入が随分いる。この住宅問題の調査からも、貧困状態の若者がいることがわかる。

奨学金、児童手当、職業教育の課題(参加者6)

「若者政策提案書」ということなので、3点強調してほしいことがある。

①大学の授業料と奨学金の問題。困窮者が高等教育など、学び直しをするときに今の大学の授業料では無理。奨学金が肩にかかってくる中では自立できない。

②児童手当の件を入れてほしい。

③職業教育はデュアルだけじゃない。今の大学のキャリア教育もインターンで企業に行かせる形になっている。学校内での職業訓練が欠かせないと思っている。職業の技術的な訓練と合わせて労働者の権利、働くのはどういうことか、などを含めた職業教育を学校教育の中で定着させる必要がある。

工業高校に行くことも選択肢に(参加者7)

大田区は中小企業が多いが、若者の担い手が少なくて困っている。大田区の工業高校でデュアルシステムを採用しているところがある。学校が管理できる形で提携している町工場に半年くらい派遣するのは意義があると思う。

なぜ小中高校と普通科を出ないといけないのか。工業高校に行くことも選択肢として目を向けたらいい。職業選択として選んでもらうモチベーションを与えていただくのも一つの提案になると思う。

自殺してしまった障害者の友人(参加者8)

若者問題は包括的で、生活につながるすべてに関わる問題。高橋さんの「若者にこの社会をどう受け入れてもらうか」という視点が新鮮だったし、重要だと思う。残業代を請求しないのは、権利を知らされていないから。中高年や社会を構成している人に、若者が働きやすい環境を作る必要があることが周知されていない。

障害のグレーゾーンにいた友人がいて、障害雇用で仕事に就いたが、雇用主に理解がなかった。「障害者だから給料を安くする」という態度だったので、友人は仕事を辞めた。そして最後は自殺してしまった。

社会や地域で包括的に若者を見守っていく、働けるようにする、受け入れる。それがどういうことなのか、理解して共有することが不足。若者だけでなく社会構成している人、稼いでいる人、雇っている人に知ってほしい。権利をこどものときから教えて、大人にも周知していくことが必要。 

「若者自立支援ルーム」で見えたこと(青砥)

 (青砥)さいたま市と連携しながら、「若者自立支援ルーム」という、行き場のない若者の支援をやっている。これは行政がつくった施設。自治会や地域の方と交流しながら若者とイベントもする。最初にルームができるとき、地域の人は「変な施設ができる」、「変な子たちが来るのではないか」と不安がった。

しかし始まってみると若者たちがたくさん来て、地域に刺激が起きた。地域につながるためには、一つひとつの積み重ねだと思う。少なくない学校が交流や開放の道を閉ざしている。地域社会の必要性をもっと理解することが大切。現状の先生のスキルだけでは、今の格差が拡大する中等教育は成り立たない。そういう子どもや若者の現状を見ることから支援は始まる。

支援の障害となる親の存在(参加者9)

東北で教育支援をしている。現場で感じるのが、支援の障害となるのが親だったりすること。親の感度が低く理解が低いときに、サービスを届けられない。若者政策の観点からの「親の再教育」を盛り込んでほしい。

住宅の支援がない(参加者10)

京都市で生活困窮者のシェルター利用者の調査をしている。生活困窮者の中にも若者が増えている。貧困状態の家庭で育って、そこからの脱却が困難な若者が多いが、一方で安定していた家庭環境、労働環境からも落ちてきている若者が一定数いる。背景には長時間労働やブラック企業での勤務のなかで、疲弊して離職していることがある。それが貧困、生活困窮へつながってしまう。

今の若者が置かれている社会そのものを変えないといけない。労働のあり方も、全体がしんどい状況に置かれていて、そのしわ寄せが若者にきていることを盛り込んでほしい。若者が自立するためには、いまの家賃は高いし経済的にしんどい。住宅の支援がないことも提起してほしい。

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