Facebook、LINE、Twitterなどの様々なSNSがコミュニケーションの手段として世の中に定着していますが、皆さんは何を使っていますか?実は、世代によってかなり使うツールや使い方が異なり、今、若者のコミュニケーションや人間関係のあり方がガラパゴス化しつつあると言えます。前回の記事(日本の10代の妊娠中絶は1日約53件!他人事ではない若者の性のリアル-性教育が性行動を助長するという誤解)では、若者の分極化する性の現状と求められる対策についてまとめましたが、今回はその背景にある若者の恋愛・コミュニケーションの変化について迫りたいと思います。
ネットからの出会いや恋愛が日常化しつつある若者世代
とある中学生が「ネットで出会った人に会いに行く」と言っていたら、あなたはどう思うでしょうか?「なぜ?」「危ない!」「やめておけ!」という意見もあれば、「普通のことじゃない?」という反応もあるかもしれません。ベネッセ教育総合研究所の2014年調査(ベネッセ教育総合研究所 中高生のICT利用実態調査2014)によると、インターネットで知り合った人がいる人(ネット利用者の約4分の1)のうち、直接会った経験のある人の割合は、中学生23.6%、高校生34.7%であり、決して珍しいことではなくなってきています。

さらには、私たち30代世代が若い頃に、カップルで撮ったプリクラを友達に配っていたのとおそらく同じような感覚で、動画共有SNSで「カップル動画」を投稿することが流行っているようです。その動画の中では顔を隠さず、中には制服姿でキスをする動画を投稿する人もいます。ネットでの出会いをきっかけとする男女交際も広がりつつあり(リクルートブライダル総研「恋愛観調査2014」)、出会いや恋愛の場にネットによるコミュニケーションが若者世代に大きく関わってきているのです。
簡単に出合えるからこそ…若者の性への影響
少し前までは俗に言う「出会い系サイト」に登録するというハードルを越えてつながらなかったネットでの出会いが、今やSNSを通じてだれとでも簡単に知り合い、つながり、ある意味で密室的な環境で仲を深めることができるようになった中、若者の性トラブルへ発展する事例も増えています。実際に、匿名のSNSから二人でのチャットが始まり、仲良くなったと感じリアルで会ってところ、すぐに性関係を迫られたり、セクハラやストーカー、性被害にあったという話や、さらには若年妊娠や性感染症に発展したものの、そのことを告げると相手との連絡がつかなくなってしまった、という話も聞きます。
「そんなに危険ならそもそも会わない方がいいのでは?」 と思いがちですが、ネット上で趣味や共通の話題を深めたり、SNSでの出会いをきっかけにリアルでもよい友人関係に続く場合もあり、ユーザーにとってのメリット面が大きいからこそ使用が広がっているのも事実です。一概にSNSの使用やネットでの出会い=悪と大人が短絡的に決めつけたり、禁止せず、しかるべきリスクを知り、上手に付き合う方法を子どもも大人も学ぶことが現実的な対策と言えるでしょう。
若者が性トラブルから身を守るリテラシーを身に着けるには?
NPO法人ピルコンが実施しているSNS・ネットリテラシーを学ぶ講座では、リスクを予測し、より安全な使い方を具体的に学ぶプログラムを作っています。具体的には、実際のSNSのやりとりの事例や事件を紹介しながら、ネットで知り合った人とリアルで会った際にどんなトラブルが起こりうるか、どういうことに注意すべきかをワークショップ形式で考えながら、大学生たちが実際にしているネットのセキュリティ対策などを紹介しています。

たとえば、注意すべき人として、すぐに直接会いたがったり、2人きりになりたがる人、ご飯をおごったりプレゼントを条件に会おうとする人は危ない。対策として、誰もが見ることができるSNSでは実名で使ったり、自分や友人の顔写真はアップしたりしないという基本から、ネットで知り合った人と会うことのリスクは高いという前提の上で、どうしても会ってみたいという場合は、信頼できる大人に相談したり、一緒に大人についてきてもらう、昼間の周りに人がいる状況で時間を区切って会う、付き合ってからも、リベンジポルノ対策として写真は撮らない・撮らせないように気をつける、などの現実的で具体的な対応策を考えていきます。
受講した生徒からは、「インターネットで知り合った人と会ったり遊んだりするのは、危ないと思った。」「知らないことも多く驚きました。でも知っておくことで予防できることや守られることもあるんだと思いました。」などの声をいただいています。
最近は、小学校の段階でスマホを持ったりネット通信が可能なゲーム機などでもネット環境に触れる子どもがより増えており、中高生といわず、より早期からの対策が必要とされています。これからの性教育にも、SNSリテラシーの視点が重要であり、大人も子どもが普段接しているメディアやその使い方もよく知る必要性があるでしょう。
そして、リテラシーや警戒心のなさからではなく、意図的にネットから出会いを求めている少女たちもいます。Twitterのタイムラインを辿ると彼女たちに共通するのは寂しさやかまってほしいという気持ち。ソーシャルメディアを通してつながる世界が居場所や暇つぶしになっており、「少女」という属性から自分を認めてくれる存在に心地よさを感じているように思います。その背景にあるのは、家庭での機能不全や、子どもを守る社会システムの不足であり、子どもの自己責任とする前に、親のサポートや子どもの居場所作りが大人には求められています。
NPOピルコンでは、医療従事者の監修を受けながら、中高生向けに性教育の出張講座を行う大学生・若手社会人のボランティアスタッフの育成・派遣を行っている他、性の問題に関する一般向けの勉強会を開催しています。まずは、子どもたちの現状を知り、そして自分からも伝える事で次世代の未来を守っていくことにつなげていきませんか?
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