Eduwell Journal

2013年06月号 vol.4

拡大し続ける子どもの貧困-結局、日本の教育格差はどこで生まれるのか?

2020年05月23日 22:12 by yusuke_imai

日本の子どもの貧困の現状

私は、日本で経済的貧困により教育費を捻出できない家庭の子ども達の支援活動を仕事にしています。貧困とは、衣食住がままならない「絶対的貧困」と、「相対的貧困」に分けられます。

特に「相対的貧困」は、あまり聞きなれない言葉ですが、かなり大雑把に説明すると国民の標準的な所得の半分以下で生活している人たちのことを指し、実際の所得でいうと「4人世帯で250万円以下」くらいの方々をイメージしてください。冒頭であげた日本の貧困とは、「相対的貧困」の方を指し、日本の子どもの相対的貧困率は実に15.7%。約6人に1人の子どもが貧困状態にあります。

果たして貧困は自己責任なのか?
 
さて、現在私たちが支援している子ども達は、大きく次のような理由から経済的に困窮しています。

(1)東日本大震災で被災して収入や資産を失った等の理由

(2)それ以外の理由(生まれたときから貧困家庭だった、両親が病気などで働けなくなった等)

これらは、理由は違えど、経済的に困窮している事実には変わりません。しかしながら、色々な人と話していて、その反応は上記の理由によって、大きく異なることを実感しています。

とりわけ、(1)の東日本大震災で被災した子どもたちに対しては、ほぼ100%の人が支援の必要性を理解します。「突然の災害で教育機会を失うなんてかわいそうだ。支援しなければ!」と、支援の必要性はもはや説明不要であることも多いです。

一方、(2)にあてはまる子どもに対しては、「親の努力が足りない。自分が親なら子どものために必死で働くけど。」とか、「それは自己責任でしょ。教育費出すのが大変なのはみんな同じ」等、冷ややかな反応をする方が多いです。

災害が理由だと「なんとかしなきゃ」。それ以外の理由だと「親の責任でなんとかしろ」。私はこの反応に対して強い違和感を覚えます。

「教育費は自己負担」が当然の日本。教育費の公的支出は先進国最低水準
 

日本では、子どもの教育費を家庭が自己負担でやりくりするという考え方が強く根付いています。学術創成科研の保護者調査によると、約半数の親が「教育費は当然、親が負担すべき」と答えており、その傾向は高所得層・高学歴層になるほど高くなります。

実はこの「教育費はだれが負担すべきか?」という考えは、国によってかなり異なります。それは、教育費の公的支出額に顕著に現れます。上記の国際比較(グラフ)をご覧ください。

このグラフを見てわかります通り、日本はOECDの先進国の中で、公的な教育関支出額の割合が最も低い水準です。

一方、対照的なのがグラフの上位を占めている北欧諸国です。例えばスウェーデンでは、小学校から大学卒業までは、家計負担がほとんどありません。ここには教育費は税金で賄うという福祉国家的教育観、「子どもの教育は社会全体で育てるものだ」という考え方が強く根付いていることがわかります。

実は日本の教育格差は「学校外教育」で広がっている



「でも、日本では小中学校は義務教育、公立高校も授業料無償化始まったので教育機会は平等に保たれているのでは?」そんな疑問がでてきそうなので、日本の子どもの学習費(私的負担)の内訳を詳しく見てみましょう(上表)。

こちらを見て分かる通り、例え学校の授業料がかからないとしても、その他の部分で私費負担しなければならない費用が非常に多いことがわかります。幼稚園から高校まですべて公立であった場合でも、最低500万円を家庭が自己負担する必要があるのが今の日本です。

ここで注目してもらいたいのは塾や習い事等の「学校外活動費」です。実は公立小・中学校に通う子どもの学習費のうち、最も比率が高いのが学校外活動費です。教育費全体の60%以上、年間20万~30万程度を投資しています。そして、学校外教育費(=学校外活動費)については、公的な保障がほとんどありません(学校給食費や教科書代などは自治体による就学援助制度によって補助が出ます)。実は日本において、所得格差による教育格差が生まれやすいのが「学校外教育」であると言えます。

「自己責任」の前提には「機会の平等」が不可欠
 
このように、日本の教育費をめぐる現状を次のようにまとめることができます。

(1)教育費の公的支出額が少なく、私費負担額が大きい

(2)塾や習い事等の学校外教育支出の割合が多い

これによって、所得格差による教育機会の格差が生まれ、結果的に経済的貧困状態が次の世代にまで連鎖していくという構造が出来上がっています。

果たしてこのような状態で、貧困は「自己責任」だといえるのでしょうか?答えはNOです。なぜなら、「各人が結果の責任を負うべきだ」というロジックは、「機会が均等に保たれている」という前提があって初めて成り立ちます。日本ではそもそもスタートラインが同じではありません。このような状況下で貧困を自己責任で片づけることはできないと思います。

長年に渡る教育費の私的負担は民間の教育力を成熟させた!?
 
次に、少し視点を変えて、教育費の私費負担額が大きいことによって、生まれた日本の教育の特徴にも注目したいと思います。

様々な見方がありますが、日本では教育費の私費負担が多いことによって、結果的に民間の教育力がかなり成熟したという側面もあるのではないかと思います。教育に限らず、公的なサービスはどうしても画一的なものになりがちですが、民間のサービスは個々の子ども達の状況に応じてきめ細やかな対応をできる等、公的サービスにはない利点を持ち合わせています。

私は前職の学習塾関連の仕事を通じて学校外教育の現場を見てきましたが、学校の一斉授業で完全に落ちこぼれてしまった子どもが、地域の教育者によって救い上げられるということは本当によくあります。また、学習分野だけでなく、NPO等による子ども達の細かなニーズに適応した質の高い民間サービスが多く存在しています。しかしながら、これらを享受できるのは家庭の所得が高い子どもだけ、というのが実情です。

よって、日本の子どもの教育費負担の問題を考えていくときに、日本が誇るべき「民間の教育力」をどのように活用するか?という観点は非常に重要になってくるのではないかと思います。

子どもの教育費は誰が負担すべきなのか?

今の日本の教育費の私費負担額の多さは他国と比較しても特異な状況で、今後子どもの教育費の在り方や国の政策等は十分に検討していく必要があります。

もちろん、単純に教育費の公的負担を増やせば全て解決するいいというものでもありません。また、日本の財政上、教育の公的支出を増やすことはそんなに簡単なことではありません。

ではどうすればいいのか?子どもの教育費は、一体誰が負担するのが正解なのか?次回以降、この問いに対する私の意見を述べさせていただきます。

Author:今井悠介
大学在学中に、不登校児童等の支援に携わる。卒業後、株式会社公文教育研究会(KUMON)に入社し、子どもの学習指導や学習教室のコンサルティング業務に従事。東日本大震災後、チャンス・フォー・チルドレンを設立し、代表理事に就任(2014年に内閣総理大臣の認定を受け、公益社団法人化)。全国子どもの貧困・教育支援団体協議会幹事を兼務。共著「東日本大震災被災地・子ども教育白書2015」。

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