Eduwell Journal

2016年6月号 vol.40

夏休みを重要な学びの時間に!子ども向けキャンプのすすめ-夏休みだからこそできる長期キャンプの魅力は?

2020年09月06日 11:48 by uedanna

夏休みといえばサマーキャンプ!親元を離れて集団生活をしながら、様々な自然体験活動を行う子どもキャンプが全国各地で行われています。

以前の記事(自然体験活動にどんな教育効果があるのか?)では、どのような内容の教育キャンプが行われており、どんな教育効果が得られるのかをデータを交えて教えて頂きました。

今回は、前回に引き続き、長年に渡って北海道で多くの子どもキャンプを行ってきた上田融さん(NPO法人いぶり自然学校・代表理事)に、「夏休み」にオススメのキャンプとその魅力についてお伺いしました。


(北海道でのサマーキャンプの様子:森の中で自分たちの秘密基地を作り、実際に一晩泊まってみる。)

夏休みだからこそできる長期キャンプの魅力とは?

夏休みに各地で展開されるサマーキャンプの最大の魅力は、なんといっても「長期」です。

普段行けない場所で、普段できないことをじっくりと取り組めます。2泊3日前後の短期では、天候による変更が難しい場合が多いのですが、長期になってくると日程変更もしやすくなります。

長期キャンプの圧倒的な効果は、「子どもたちの心の振れ幅を大きくすることができる」であると思っています。それはどういうことなのかを少し実況解説してみたいと思います。

まずはキャンプ初日。集合場所にやってくる子ども達は、やたらとスタッフであるぼく達に絡みついてきたり、初めて会ったのに「きもい」と全否定されたり、猫を被ったように大人しかったりと、まず平常ではありませんね。

そりゃそうです。突然、知らない人たちと、知らない場所で生活をするという「超非日常」が始まるのですから、平常であることの方が難しいはずです。

また、ドキドキワクワクがパンパンに膨れ上がりながらも「人に迷惑かけんじゃないよ」と保護者の方にきつく言われてくるんでしょうね。はじめのうちは、みんなおりこうさんです。活動中も、生活の時間も、見た目はなんとなくスムーズに進んでいるような雰囲気ではあります。

そして、キャンプ2日目の夕方あたりにはたいていの子は緊張感が抜け、自分のリズムがつかめてくるのでしょうか、ややピリピリしていた雰囲気も少し馴染んでくる感じが生まれます。


(北海道でのサマーキャンプの様子:これから自分たちの力で森の中に秘密基地を作ります!)

しかし、おりこうさんがおりこうさんでいられるのは、3日が限界。

3日目の午後あたりから、なんかこうざわつくような空気が流れ始めます。

脱ぎ捨てた靴下が玄関に落ちていたり、テーブルの上に落ちたご飯粒を「デコピン」で飛ばし始めたり、それが隣の子に当たって何やらかんやら言い合ったりと、快適ではない一瞬が出てきます。おそらく、やっとその空間にも慣れて、緊張が解けてきた反面、その緊張による疲れやイライラがチラチラと見えてくる感じでしょうか。決して大きくはないが小さな怪我・・・救急箱の絆創膏が使われ始めるのもこの時間帯です。

たいていのキャンプは、このぐらいの状況で終了します。3泊4日ぐらいでしょうかね。だから、ある意味ちょうど良い疲れ加減で自宅という日常に戻れてしまうだけに、心の振れ幅は小さいというか、起承転結の「転」がないまま終わってしまう感じで、ちょっと物足りないのです。


(北海道での(サマーキャンプの様子:川でたくさんのエビを獲り、すりつぶして「えびせん」を作ります。)

大きな心の揺れ動きが生み出す「ほんのちょっぴりプラスの心情」

夏休みの長期キャンプは、ここからが面白い。ここからの物語を紡ぐことができるのです。

この辺から見られるちょっとしたイザゴザや、一緒に暮らしている隣の子の仕草が気に入らないとか、小さなストレスは、子どもたちのモチベーションを徐々に「なんでこんな奴と一緒にいなきゃいけないんだ」「なんでこんなことしなきゃいけないんだ」マイナスへと引き込んでいきます。

しかし、それを誰かが解決してくれるわけではないし、誰かのせいにし続けても解決しません。「そんななんとかしなきゃ!」「でもどうにもならない」「ああどうしよう」というマイナスのピークを、周りのスタッフは冷静にキャッチし、「起承転結」の「転」プログラム提供のチャンスとして捉え、その解決のヒントを日々のプログラムの中に巧妙に仕込ませていきます。

例えば、この時期にあえて、全員が深く話し合わないとうまくいかないプログラム(山登り、カヌーでの川下りなど)を組み込みます。やってみたいというワクワクと「あいつと一緒だと嫌だな」みたいな面倒くささと「果たしてうまくいくのかな」という不安がごちゃ混ぜになりながらも十分に話し合い、準備をして、未知なる活動に挑戦します。

そして、スタッフの見守る中・・・子どもたちはその課題を達成し、大きな充実感と、高い山に登るだけではない「いろんな子と話し合って合意をした」「あいつのこと嫌だったけど、まあうまく付き合うことができた」という大きな経験を獲得します。それは、子どもたちの中には明確に言語化されるわけではありませんが、マイナスであったストレスを自分で解決したという自信につながります。

そして、そんな大きな心の揺れを経験して帰路に着く頃には、これまでのマイナスオーラはどこへやら、子どもたちはただ単に「おうちに帰れる」だけではない充実感の中にいます。

グラフにもあるように、グワングワンとプラスとマイナスに心を揺らした結果、出発初日の心情よりほんのちょっぴりプラスの心情で、お迎えに来た保護者の方と出会うこととなります。

ぼくたちは、このほんのちょっぴりが、とても重要であると考えています。

このほんのちょっとのプラスの心情こそがこれからの子どもたちにとってはかけがえのない「力」になると信じています。

そして、このほんのちょっぴりを得るためには、マイナスも含めてものすごく心が揺さぶられる経験が必要であり、これは長期キャンプという非日常だからこそ作り上げられるものだと考えています。裏を返せば長期キャンプででしか得られない「ちょっぴり」だと思っています。

しかし、このほんのちょっぴりを作り出すためには、とても周到な準備と技術、体制が必要であります。不用意な怪我や事故を起こしてしまってはどうにもなりません。

子どもたちが珠玉の「ほんのちょっぴり」を獲得できるように、ぼくたち自身も心を大きく揺らしながら準備を進め、みなさんとよい夏を過ごすことができるように準備をしています。今年はどんな夏、そしてどんなドラマが待っているんでしょうか?今からとても楽しみです。

Author:上田融
NPO法人いぶり自然学校・代表理事。昭和48年生まれ。平成8年より北海道の小学校で6年間勤務。平成14年より4年間、登別市教育委員会社会教育グループで社会教育主事として、ふぉれすと鉱山の運営に携わる。平成18年よりNPO法人ねおすの活動へ参画し、道内各地の自治体と協働し、第一次産業の取り組みを子どもたちに体験的に伝え、学ばせるプログラム開発および協議体の設立に関わる。平成20年より苫東・和みの森運営協議会副会長。平成27年より現職。プロジェクト・ワイルドファシリテーター、小学校教諭1種、幼稚園教諭1種等の資格を持つ。

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