Eduwell Journal

2016年07月号 vol.41

「自分から進んで勉強する子」に育つために必要な幼児期の学びとは?-学習態度を形成する要素の調査分析

2020年09月06日 11:33 by eduwell_journal

幼稚園や保育園から上がってきた小学1年生が、学校生活になじめず、授業中に騒いだり、動き回ったりする問題を「小1プロブレム」と言います。近年、メディアでも多く報じられ、実態も明らかになってきました。幼稚園や小学校の現場でも様々な対策の試行錯誤が行われています。

学級崩壊を招く「小1プロブレム」(小1問題)とは?-五校に一校の小学校が直面する「大きな段差」の実態

幼稚園や保育園から小学校へ移行する時期は、幼児期から児童期に入り、学習生活がはじまる重要な時期です。幼児から小学生になる時期、どうしたら子どもは自分で考え、解決していけるようになるのか?また、家庭で保護者はどのような関わりをしていけば良いのでしょうか?

国内で年少児(3 歳)から小学1年生までの4年間で行われた縦断調査の貴重なデータを基に考察します。

幼児期の学びで重要視するべき3つの点

本記事は、ベネッセ教育総合研究所が2015年3月に公表した「幼児期から小学1年生の家庭教育調査・縦断調査」を基に考えていきます。

この調査は、幼児期から小学校の学習生活に移行し適応するために必要とされる力、幼児期に育てたい生涯にわたって必要な力について検討し、幼児期に必要な学びとして下記の3つの軸を置いて行われました。 

「文字・数・思考」文字や数の読み書き、順序の理解など、小学校段階での学習につながる力

「学びに向かう力」自分の気持ちを言う、相手の意見を聞く、物事に挑戦するなど、好奇心・自己主張・協調性・自己抑制・がんばる力に関係する力

「生活習慣」トイレ、食事、あいさつ、片付けなど、生活していくために必要な習慣

3つの力(生活習慣、学びに向かう力、文字・数・思考)のつながり

3つの軸「生活習慣」「学びに向かう力」「文字・数・思考」は、それぞれ前の学年の力が次の学年の力の成長につながっています。

また、年少児期の「生活習慣」が年中児期の「学びに向かう力」の成長につながり、年中児期の「学びに向かう力」(「協調性」)が年長児期の「言葉」の力につながっています。

さらに、年長児期の「文字・数・思考」(「言葉」)は小1期の「学びに向かう力」の多くの項目につながっています。

それぞれの力は、年齢に応じて積み重なっていくものであり、身についていないことを飛び越して成長していくことはありません。「生活習慣」がしっかりと身についていることが土台となり、「学びに向かう力」へと結びついていきます。

とても興味深いのは、年中の時点で「協調性」を身につけていることが、年長になった時の「言葉」の力へとつながっている点です。言葉が先だっているわけではなく、人との関わりの中でコミュニケーションへの興味関心が高まりや、コミュニケーションを繰り返していくことで、言葉の力が備わっていくということです。

自分から進んで勉強している子とは?

年長児期に「生活習慣」全般、「学びに向かう力」の中の「がんばる力」、「文字・数・思考」の中の「言葉」が身についている子ほど、小学1年生で「大人に言われなくても自分から進んで勉強する」傾向が強いことがわかりました。

学習態度は、小学校に就学する前から形成されており、すでに開きがあることもわかります。特に年中から年長にかけて、直接的に学習態度に関係してくる力が育まれてくることは注目すべき点だと思います。

親のどのような働きかけが有効的なのか?

では、年長児の時期に親のどのような働きかけが子どもの学習態度の形成に有効的なのでしょうか?

調査によれば、「子どもの意欲を尊重する態度」が高い群ほど、「子どものがんばる力」は高い傾向がみられました。同様に、親が「子どもの意欲を尊重する態度」が高かったり、「子どもの思考を促す関わり」、「学びの環境を整える関わり」をしている群ほど、子どもの「言葉」の力は高い傾向がみられました。具体的に下記のような親の関わり方が重要となります。

親による意欲を尊重する態度(7項目):

「子どもがやりたいことを尊重し、支援している」

「どんなことでも、まず子どもの気持ちを受け止めるようにしている」

「何事にも子どもの意見や要望を優先させている」

「しかるよりもほめるようにしている」

「しかるとき、子どもの言い分を聞くようにしている」

「指図せずに、子どもに自由にさせている」

「子どもが自分でやろうとしているとき、手を出さずに最後までやらせるようにしている」

親による学びの環境を整える関わり(4項目):

「子どもと一緒に数を数えている」

「子どもと知育玩具を使って文字や数を学習するような遊びをしている」
「ワークブックを子どもにやらせている」

「子どもが文字や数に興味を示したとき、さらに学べるように環境を整えている」

親による子どもの思考を促す関わり(4項目):

「子どもの『どうして、なぜだろう』などの質問に答えている」

「子どもの質問に対して、自分で考えられるようにうながしている」

「ひとつの遊びには多様な遊び方があることを子どもに気づかせようとしている」

「子どもと一緒に出かけた後、互いに感じたことなどを話し合っている」

保育園や幼稚園での生活から小学校での生活へと子どもを取り巻く環境が変わる中で、その変化が子ども成長にとって有意義なものであって欲しいと思います。

保育園や幼稚園での「遊び」を中心とした教育から、小学校の「教科学習」を中心とした教育へと変わっていきます。それは、全く関係性のない別物の教育ではなく、子どもの成長にとってつながりの深い教育活動です。

子ども達が幼児教育の中で育まれた様々な興味関心を伸ばしていくことが、小学校での「教科学習」なのです。

本調査は、けして意外な結果ではなく、家庭や保育園・幼稚園の地道な教育活動が重要であることを改めて明らかにしたものだと思います。就学前の段階で学習態度に大きな差が生まれないように、このような調査研究を基にした教育方法の周知や改善が求められています。

Author:Eduwell Journal 編集部
本記事の執筆は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。「Eduwell」は、本メディアがテーマとしてきたEducation(教育)、welfare(福祉)、well-being(ウェルビーイング)の3つの言葉をつなぎ合わせて作られた造語です。本メディアは、子どもや若者を対象とした社会教育事業に取り組んでいる認定NPO法人「夢職人」が発行しています。

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