ひみつ基地

2013年07月号 vol.5

大学の授業はつまらないのが当然?-大学全入時代に変わりゆく大学の姿とは

2019年06月05日 16:43 by shoko_kawahara

大学とは何だったのか?当たり前のように遊んで卒業したけど、あの学費に見合うものは大学から(注:大学生活からではなく)得られたのか?みんなで議論していければと思います。

大学は研究機関だから、授業はつまらなくても良い?

大学の授業が面白かったか、つまらなかったか、これは大きく意見の割れるところかと思います。少なくとも、私はほとんどの授業が面白くありませんでした。しかし、つまらなかったと不満を口にすると、「そもそも大学は研究機関なのだから」とか、「大学教授は研究が目的だから、教えることを強いること自体が無理」といったことをよく言われます。

私も当時はそう思って割り切っていました。しかし、よくよく考えてみれば、その給料は(国からの補助金等もあるとは言え)学生の「学費」です。少なくとも学生は「自分が学ぶ」ためにお金を出しているのであって、「教授の研究を助成」するためにお金を出しているわけではありません。

確かに、大学の授業がつまらなくても成立していた時代はありました。上位20%程のエリートしか進学していなかった頃です。エリートたちは熱心に教授の話に耳を傾け、ノートをとり、喧々諤々の議論を重ねます。もしくは、エリートだったが故に遊んで過ごしてもその後の就職は順調だったのかもしれません。

しかし、進学率は50%にも上り、望めば誰もが大学に進学できる大学全入時代が訪れました。中には、高校までの授業でさえついていくことが困難だった学生、人前で意見を言うことが苦手な学生、新しい環境で友人関係を築くことが得意でない学生も多く含まれます。しかし、そのような大学生の変化を捉え、対応している大学や教職員は決して多くはありません。

大学は教育機関になるべきなのか? 

私は将来的には、研究機関としての大学と教育機関としての大学は分かれていくと思います。もしくは、明確に区別されなくても、自分たちはどうバラン スをとっていく、というスタンスを明らかにすることでしょう。ある大学の経営者には、自分たちは「こんな学生を育てたい」と思ってやっているので、「(研 究をする)大学」というより「職業訓練校」と呼ばれた方が良いくらいだ、と言われたこともあります。

いずれにしても、現在においてその定義はあいまいで、ほとんどの大学がスタンスを明確にしていません。

そのような状態でありながら、18歳人口の減少による学生獲得競争の激化により、大学は存続すら脅かされています。多くの大学はとにかくたくさんの学生を 集めよう、と短期的な募集戦略に力を入れます。楽しげなオープンキャンパス、分厚い大学案内パンフレットやWEBサイト、果ては綺麗なキャンパスが都心に 回帰し、学生が集まりそうな造語・カタカナ語の学部を新設して話題作りを行います。もちろん、もっと本質的な目的のもとに実施している大学もあると思いま すが、少なくない数の大学が募集のために上記のようなことを行っているのです。

ところが、自分たちが何をゴールにするのか明確でないということは、ターゲットも明確になりません。商品開発や広報戦略においてターゲットが明確で ない、というのは致命的だと思いますが、それでまかり通っているのが今の大学なのです。その結果、「何でも学べて誰にでも魅力的」な広く浅い大学ができあ がり、「何となく」入学して「何となく」卒業していきます。

一方で、社会的には高等教育の果たすべき役割は非常に重要です。報道によると、今後の仕事はコンピュータができないこと、つまり「創造的な仕事」 か、「肉体労働(サービス・接客業を含む)」のどちらかにはっきり分かれ、間にある「そこそこの仕事」はなくなる、と言われています。

ビジネスジャーナル:10年後、税理士や事務、営業などはなくなる? デジタル失業の時代が到来

さらに、体を使う仕事も次々と海外の安い労働力に取って代わられています。「創造的な仕事」をするためには、より高い知識や能力が求められます。高等教育を受けたハイスペックな人材が、資源のない日本を支えるしかないのです。

教えがいのある大学生がいない!?

ところで、教育に熱心な教授からは、「ちゃんと教えたいのに、うちの学生は意欲が低い」、「教えがいのある熱心な学生がいれば・・・」という嘆きも聞かれます。学生のせいにしても仕方ないのですが、受験生にも何か変化が起きているのでしょうか。

そもそも、高校生にとっても、「大学全入時代」、「18歳人口の減少」は大きな意味を持ちます。望めば大学には進学できるため「行きたい」大学から「行ける」大学へと進路選択の考え方が変わったのです。明確な目的や血のにじむような努力がなくても、(選ばなければ)大学へは進学できるようになりました。ま た、大学側が広報戦略に力を入れていることで、受験生にはどの大学も魅力的に見えます。資格が取れる、幅広く学べる、グローバル、就職に強い、どの大学も 同じような売り文句でアピールしているため、違いが分かりません。

さらに、受験生に大きな影響を与えるのは、高校の進路指導です。高校は大学より一足早く、少子化による学生獲得競争にさらされています。結果として、進学 実績で競うこととなり、とにかく国公立や偏差値の高い大学へ進学をさせることで、学生を集めようとしています。私は九州出身ですので、根強い国公立大学至上主義があり、3年次のホームルームでは、国公立の受験に必要な9科目を勉強し続けることがいかに崇高なことであり、私立大学を志望して受験科目を絞るこ とがいかに怠惰な人間であるか、ということが毎朝のように語られていました。私は夏休みから私立大学に絞っていたため、非常に居心地の悪い思いをしたこと を、今でも忘れません。また、専門学校を志望していた同級生に至っては、推薦入試に必要な書類を先生がなかなか用意してくれず、第一次の出願期限に間に合 わない、ということもありました。

本来であれば、「目の前の高校生自身にとって」良い進学先を見つけなければならないのに「保護者や世間から見て」良いと思われる進学先を勧めるよう になり、結果として、総合的・俯瞰的に見ることのできる偏差値やイメージ先行の大学選びとなります。この結果生まれるのは、大学への理解が浅く、目的意識 も不明確な新入生です。イメージで選んでいるので、入学後に「こんなはずじゃなかった」と思うのも当然です。

大学は教育の質を上げ、受験生はそれを評価する

これまで様々なことを述べてきましたが、上記のように高校生の進路選択が「イメージ先行」である以上、高校生を集める大学はその「イメージ」を良くするた めに力を割くしかありません。その結果、広報戦略に費用と労力が割かれ、学費も在籍している学生のためではなく、入学前の高校生のために費やされます。こ れは負の連鎖です。

この負の連鎖を断ち切るため、私たちの組織では2つのことに取り組んでいます。

一つは、学生をアクティブラーナーに変える「FD2.0」です。

FDとはファカルティ・ディベロップメントの略で、大学教員の能力開発のことです。「FD2.0」は、「入学時点の学生(スタート)」が「卒業時に 成長した学生(ゴール)」に到達するための道のりとしての『カリキュラム』と、そのカリキュラムを駆け上がる支えとなる『ティーチング』という二つの入り 口となる『学生理解』に重点を置いています。基本プランとしては、1年間で8日間の研修と前期後期2回の授業コンサルティングを行い、教育の質の向上をお 手伝いしてします。

二つめは、フダン着の大学に会いに行く「WEEKDAY CAMPUS VISIT」です。

 「WEEKDAY CAMPUS VISIT」は、高校生が普段の大学キャンパスで大学生と同じ授業に参加し、入学後の「普段の一日」を体験できるプログラムです。オープンキャンパスとは 異なり、実際に行われている「普段の授業」を通じて、その大学・学部の学びの内容や授業スタイル、大学生の様子などをリアルに知ることができます。認定 WCVコーディネーターによる問いかけや、振り返りのワークなどを通じ、高校生が「大学の見方」を習得しながら大学・学部への理解を深められるよう構成さ れています。

大学が教育の質を上げること、受験生が教育の中身をしっかり見て選ぶようになること、この2つが両輪で回るように働きかけていきたいと思います。そんな「大学選び」については、また次回に。

NPO法人NEWVERY 高等教育事業部 川原祥子

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