Eduwell Journal

2013年07月号 vol.5

自立できない子ども?自立させない大人?-なぜ、子ども・若者の現状がこれほど深刻なのか

2020年05月21日 23:24 by takayuki_kawashima



日本(人)と仕事をする意味が無い


私は、総合商社系の上場会社で社長をしている関係から、外国人と接する機会が多くありますが、「外国人の日本(人)への期待が年々低下している」と実感しています。そう、Japan As No.1と言われていた時代は遠く過去のものとなり、「日本(人)と仕事をする意味が無い」という耳の痛い言葉を、多く聞くようになりました。

なぜ、そうなっているのでしょうか?いくつもある要因の中で、最も大きいのが「日本人には、自立した人が少ない」からだと思います。私のビジネス相手となっている外国人の多くは、例え若くても役職が低くても、自らの意見を堂々と述べ、自ら結論を出すことができ、考えが違えば徹底的に議論をしてきます。また、自分の仕事に誇りやアイデンティティを持っている人も多くいます。

子ども教育に関するマガジンで、いきなりビジネスの話題を出して恐縮ですが、私は、PTA会長、少年野球コーチ、子ども関連NPOなども担っています。そして、今の子ども教育は、上述した「自立していない日本人」を更に増やしていくことになるのではと、強く危惧しています。

そこで、「ビジネスの経験」と、「子ども教育の経験」という2つの側面から記事を書きたいと思います。

日本の子ども・若者の現状は深刻

今回はその第一回目です。ではいきなりですが、3つ問題を出します。


Q1)「大卒の2人に1人、高卒の3人に2人が、***である。さて、***にはどんな文章が入りますでしょうか?」

Q2)「自分が価値ある存在だと思っている中・高校生は、どの程度いるか?ちなみに米国は57%です」

Q3)「仕事を理由にした若者の自殺者、この3年間で、何割くらい増えたでしょうか?」
 


答えは、これです。


A1)学校を中退、もしくは卒業したが不安定就労になってしまう割合です。もちろん、「これが俺のやりたいことだ」と夢を見つけ、中退する学生や転 職する若者もいるでしょう。でも、そういう前向きな転身はわずかで、上述の多くが「後ろ向き・消極的」な転身、というが現実です。

A2)たったの7%です。日本人は米国人よりも、謙虚で控えめということはありますが、それにしても大差です。

A3)なんと、倍増です。自殺に至らないまでも、就活の失敗や就職後のストレスで、仕事をせず、生きる望みや活力が無い日々を送っている若者は、数えきれないほどいることでしょう。
 


では、子ども・若者の現況が、なぜこれほどまでに悪化しているのでしょうか。ここでは「今の教育」の環境について、少しお話します。



子どもを自立させるための教育環境に大きな課題あり


そもそも、教育の目的は、子どもが「社会人として自立する」ことです。また自立とは、生活出来る経済力を持つという「経済的な自立」、社会の中で役割を持つという「社会的な自立」、仕事に生きがいを持つという「精神的な自立」からなっています。

そして子ども教育は、言うまでも無く家庭・学校・地域が各々役割を持っているわけですが、いずれも「自立させる」ための環境が決して良好ではありません。

<家庭>
子ども教育における父親の役割は大ですが、日本の父親が子育て・子ども教育に費やす時間は、欧米の半分以下と言われています。

また、夫は家に不在がちで、地域には知り合いが少なく相談できる人もあまりいないために、母親は孤立し、ストレスが増すばかりです。

更に、お受験や偏差値競争の激化、過干渉な親か放任な親の増加、親の代理戦争の対象になっている子ども、というのもよく耳にします。

<学校>
学校の状況も厳しいです。それは、教師が忙しすぎて過労死やうつ病も増えており、いわゆる本来の仕事である「生徒と接する時間」がなかなか取れないからです。

その理由は2つあります。1つは公的な教育費があまりにも低く、必要な教師数や教育機会が割り当てされていないということです。ちなみにGDPに占める公的教育費の比率は、日本が3.3%で、先進国の中で最低です。(先進国の多くは5%以上、北欧は6%超も)。

もう1つは、役所や教育委員会からの「無数の調査や報告書」、モンスターペアレント対応、イジメや体罰の対策などに追われ、以前よりも教師のやる仕事が増えていることです。

<地域>
そこで、残された地域はどうでしょうか。子どもにとっての実社会とは、まさに地域社会。その中で、近所のオッチャン・オバチャンなどの「斜めの関係」と接し、掃除や手伝いなど実社会で役立つという「本番体験」をすることが、子どもにとって自立に必要なことです。

ところが、コミュニティーが希薄化し、異世代間交流が減り、本番体験の機会も無くなってきているというのが現実です。

このように、家庭・学校・地域が各々、子どもを自立させるための教育環境に大きな課題があるということです。結果、子ども達はどうなってしまうのか?次回、もう少し詳しくお話しましょう。

Author:川島高之
1964年生まれ、1987年:慶応大学卒、三井物産に入社、2012年:系列上場会社の社長就任、「イクボス式経営」で利益8割増、時価総額2倍、残業1/4を達成。2016年:社長退任、フリーランサーとして独立。一方、小中学校のPTA会長(元)、少年野球コーチ、イクメンNPO「ファザーリング・ジャパン」理事、子ども教育NPO「コヂカラ・ニッポン」代表でもある。
子育てや家事(ライフ)、商社勤務や会社社長(ビジネス)、PTA会長やNPO代表(ソーシャル)という3つの経験を融合させた講演が年間300回以上。
NHK「クローズアップ現代」では「元祖イクボス」として特集され、AERA「日本を突破する100人」に選出、日経、朝日、読売、フジTVなど多数メディアに。
著書:いつまでも会社があると思うなよ!

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