誰にでも放課後と聞くと思いだす風景があるでしょう。小学生、中学生時代なのか、はたまた高校生だった頃なのか。
それぞれが持つ放課後という記憶と時間。その放課後も、時代と共にあり方が変化するのは、当然です。今、日本の子ども達は、どのような放課後を過ごしているのでしょうか?世界の放課後とどのような違いがあるのでしょうか?他国の「放課後」から見えてくる、日本の「放課後」を考えます。
(カナダの放課後では、アイスホッケーが盛んに行われています)
放課後の意味と日本の放課後
放課後とは、「課」(学校の授業)から解き「放」たれた「後」という意味があります。元来の意味から読み取ると、学校の授業から解き放たれた子ども達は、「学校が終わった後の自由な時間を謳歌出来る」という印象があります。
日本では昔から「良く遊び、よく学べ」と言われていました。これは「文武両道(ぶんぶりょうどう)」という言葉と同義語にあたるとも言われています。第一産業に従事する家庭が多かった頃、多くの保護者は「勉強より体を丈夫にすることが大切」と考えていました。勉強することも大事、しかし同時に遊ぶことは、仕事に欠かせない体作りには不可欠で、健康な体には健全は精神が宿ると信じ、丈夫な体を持つ子になるように育児を行いました。
さて、現代ではどうでしょうか?「遊ぶ暇があったら勉強しなさい!」「宿題やったの?塾に遅れるよ!」という言葉を皆さんも口にしたこと、もしくは、耳にしたことがあるのではないでしょうか?子育ては忙しい。お父さんもお母さんは子育てと同時進行でやらなければならないことも沢山あります。そのために意識することなく、この言葉が口をつくこともあるでしょう。
先ほどの言葉の中には、「遊ぶこと=無駄なこと」という公式が見え隠れしているようにも感じます。子ども達は、放課後に勉強もしなければならない、宿題も毎日ある、塾や習い事にもいかなきゃならない。中学生になれば部活動だって忙しい。週末でも宿題が学校から出るために、休み返上になる。「宿題をしなければ先生に叱られる」「成績に響く」こんな言葉が最近の子ども達の口からポンポン出てきます。
子ども達はもうやるしかないのです。週末は体と心を休める時間になるはずなのに。子ども達の忙しさに付き合う大人も忙しい。忙しさから子どもにも急かすような言葉が日々出てしまう。子どもも大人ももう疲労困憊です。
アメリカとカナダの放課後とは?
ここで海外の放課後について見てみましょう。もちろん、個々の家庭、地域、学校によっても違いがあるので、一般的な家庭(共働き)、貧困地域ではない、ある程度人口を持つ町であること、これを今回の目安としました。
(アメリカではバスケット、フットボール、野球が人気スポーツ)
▼個を優先するアメリカの放課後
カリフォルニア州フレズノ:子ども達は、「Campus Club」(キャンパスクラブ)という学校が提供するプログラムに参加することが出来ます。ここで子ども達は、のんびり過ごしたり、場合によっては宿題を終わらせる時間にあてます。日本の学童に近いでしょうか?
4年生以降は、学校でのスポーツやプライベートで音楽を習う子が多くなります。幾つかの家族が交代でそれぞれの子どもを家で預かるという方法も取られています。
この方法の利点は、保護者(特に母親)が家に縛り付けられることなく、自由な時間を持ちやすいことがあげられます。子ども達は、毎日宿題が出る訳ではないので、放課後を自由に使うことが出来ているようです。
放課後のスポーツや習い事も、本人が行きたいから行く、やりたいからやる、ということが基本にあります。本人の意思で決めることがベースとなっていると言えるでしょう。ここにもアメリカの個人主義が根付いているようです。
(アメリカ・放課後のアート教室も子どもたちから人気)
オンタリオ州トロント:カナダでも習い事が盛んで、特にスポーツや音楽、クモン(日本の公文です)、チューター(家庭教師)などに行っているようです。アメリカと同じように、送り迎えが必要なので共働きの親やシングルは大変です。学童的なアフタースクールクラブに行くお子さんも多いとのこと。
(アメリカもカナダも野外活動が身近にあるのが特徴)
その他には、放課後に市教育委員会の方針で、学校で希望者に様々な言語を無料で教えています。これは、言語の継承のためでもあるそうです。その地域に住む人種が多い、アラビア語、中国語、韓国語などがあります。それと希望者に科学教室などがありますが、これは有料です。
カナダのクロスカントリーなどのチームの指導は、体育の先生や希望する先生が行っているようです。あとカナダでは、出歩くには保護者の付き添いが必要なので、子どもの居場所(子ども食堂的な)は、ほとんど話題になりませんが、10代の居場所事業が話題になります。
コミュニティセンターや、アフタースクールクラブで、10代向けの夕方以降のプログラムをしたり、バスケやスケボーをしたり、軽食を出したりするところがあります。オンラインで提出する宿題もあるので、図書館には10代の子ども達専用のパソコンもあります。
どうやら放課後のヒントは「宿題」にあるような気がしてきました。次回は、世界一の学力を誇るフィンランドの放課後を紹介しましょう。最後にこの原稿を書くにあたり、多忙の中快く協力してくれたDavid Kawakami(アメリカ), Izumi Niki(カナダ)世界中で頑張る仲間たちに感謝します。
多文化共生子どもサポート団体「感環自然村」代表/通訳・翻訳家
南イリノイ大学農学部森林学部野外教育科卒。J.A.ローガンカレッジ救急救命士過程卒。イリノイ大学消防大学卒。
幼少期から野外活動に親しみ、22歳で渡米。米国イリノイ州立南イリノイ大学で野外教育を学ぶ傍ら、J.Aローガンカレッジにて救急救命法を習得し、同国にて救急救命士国家資格を取得。大学卒業後、米国消防署にて救急救命士/消防士として勤務。帰国後子どもキャンプ企画運営に携わり、2010年地域の子ども達が言語、国籍、障がいの有無に関係なく集える場として感環自然村設立。
主な通訳歴:ニューヨークヤンキース、ボストンレッドソックス、シアトルマリナーズ、日米野球ディスカバリーチャンネル、BBC、トラベルチャンネル、ブラジルバブーンフィルムズ、国際スキー連盟、イリノイ州政府森林局、FIPS国際会議、他
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【感環自然村では、学生・社会人のキャンプスタッフを募集しています!】
感環自然村は「五感を使い人と人、人と自然の環(わ)を創る」「違うがいい、違うが楽しい」「Think outside the box - 型にはまらない自由な発想をしよう」この三つをモットーに国籍や言語の違い、障がいの有無に関係なく誰でも集える場所を創るという想いのもと、2010年5月に長野県飯田市で設立された多文化共生子どもサポート団体です。
多文化と触れ合うことで心に壁を持たない大人を育てること、異年齢での活動の中で他者と支え合い協力することを学ぶ事、これらを通しての次世代育成と真の国際人育成を目的として活動しています。現在、日本人、外国人合わせて約60名の子ども達が15名の国籍が異なるスタッフたちと活動しています。
▼感環自然村では、学生、社会人のキャンプスタッフを募集しています。特にバイリンガルである必要はありません。楽しもうという気持ち一つあればスタッフとしてご参加頂けます。現在、スタッフの中には東京から参加しているスタッフも数名おります。
▼四季を通した野外教育キャンプ、キッズキャンプ、イングリッシュキャンプの企画運営も行っております。
▼企業研修や企業、学校機関での講演も行っております。
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