Eduwell Journal

2017年2月号 vol.48

元幼稚園教諭が教える!子どもが主役の幼稚園の選び方のポイント②-多すぎる行事が子どもと教師を圧迫する

2020年05月25日 22:28 by eduwell_journal

子どもにどんな幼稚園でどんな幼児教育を受けさせたいですか?前回の記事(幼児教育で重要な「自由遊び」の時間)では、子どもが主役の幼稚園選びのポイントとして「好きな遊び」の時間があるかどうか、子どもが遊び込めるくらい、一定の時間は保証されているかどうか、「一斉活動」は、ねらいや意図をもって行われているかどうか、という点について述べていきました。今回は、幼稚園では大きなウェイトを占める「行事」の位置づけについて述べていきます。

チェックポイント2:「行事の数」が多すぎないか?

幼稚園の特色を表しているとも言える「行事」ですが、結論から申し上げると行事の数があまり多くない園の方が良いと思います。「行事」の数は園によって異なり、一年でどのくらいの行事を実施しているか調べておきましょう。親からすると「いろいろな行事が多くて楽しそう」と感じるかもしれません。しかし、行事が多いことによって大きく2つのデメリットが生じると思います。一つは「行事を行うことが目的化する」ということ、もう一つは「日常の保育準備に支障が出る」ということです。 

本来、行事は「目的」でなく教育の「手段・方法」である

幼稚園における行事とは、行事をやることが「目的」ではなく、行事の準備や練習、本番を通じた一連の過程の中で、子どもの情操を育んでいくために行う「手段・方法」です。つまり、行事そのものが大事なのではなく、行事に向かう過程が一番大事なのです。行事前に、行事ありきで練習や準備を進めるのではなく、日常の保育や遊びの中で自然な形で活動を取り入れていき、楽しさを十分に味わい、結果として「行事をやりましょう!」という進め方が理想的だと考えます。
 
例えば「運動会」であれば、「来月に運動会があります。おうちの方が見に来るので、ダンスの練習をしましょうね!」と投げかけるのではなく、思わず体を動かしてしまうような曲をたくさん用意しておき、好きな遊びの中で十分楽しんだ後、幼児自身が「楽しいから、おうちの人にも見てもらいたい!」という気持ちになることが大事です。また、教師が投げかけたことを単にやるのではなく、子どもの意見を取り入れたり、一緒に考えていったりする部分がとても重要です。
 
過程を重要視しながら進めることは、とても難しいことです。行事ありきで「練習しましょう!」と投げかける方が楽です。しかし、それでは、子ども達の主体的な学びにはならず、大人の都合でやらされている状況になっていきます。過程を重視した指導を行うには、一定の時間の余裕が必要ですので、次から次へと怒涛のように行事が行われる園では、それは難しいと考えます。
 
行事が終わった後の余韻も大事にしてほしい

「行事の後」にも、一定の時間の余裕が必要です。例えば「おもちつき」という行事があったとします。子どもとしてはおもちをつく動きが面白く、「好きな遊びの時間におもちつきごっこをやりたい!」という気持ちになったとします。行事の後、十分な時間があればおもちつきごっこなどの遊びを通して、その余韻を楽しむことができます。

しかし、次の行事の準備が始まってしまうと、その遊びができずに終わってしまう場合があります。本当はその遊びの中で、おもちをつく道具を自分なりに作ったり、友達と一緒におもちをつく動きを楽しんだり、誰かに食べてもらえて嬉しいという気持ちを味わったり、といろいろな経験ができるのに、行事が連続して続くと、単に「おもちつきをした」という経験だけで終わってしまうのです。

子どもはそれでも、「おもちつき楽しかった」と言うでしょう。しかし、「ただ行事に参加したことが子どもの何を育んでいるのか?」疑問を感じます。一つ一つの行事を、幼児の成長にとって意味のあるものにしていくには、その前後に一定の時間が必要です。「一年の行事」の中で、一ヶ月の間に主要な行事が3つも4つもあるのは、多すぎます。行事は、一ヶ月の間に1つあれば十分だと思います。

日常の保育準備に支障が出る

もう一つのデメリットは、「日常の保育準備に支障が出る」ということです。行事が多いと、子どもの準備もそうですが、それ以上に教師の準備が物凄く必要になります。未就学児ですから、全ての準備を子どもと一緒に行うのは無理なので、事前の下準備や、後で手を加える必要がどうしても出てきます。また、行事は園をあげて行うことなので、学級の事よりも園全体に関わる仕事に、先に取り組まなければならない暗黙の空気があります。
 
行事の準備に時間がかかってしまうと、削られるのは日々の保育の振り返りや、準備の時間です。本当は、一人一人の子どもの様子や、それに対しての自分の関わりはどうだったのかを振り返り、記録に起こし、「明日はどのような保育にしようか」と考え、遊びに必要な物や環境を整備することに時間を使いたいのですが、行事が多いとそこに時間を費やせなくなるのが現状です。終わらなかった分の仕事は、家に持ち帰ったり、週末にまとめてやったりしていましたが、段々と無理が出てきます。子ども一人ひとりのことを丁寧に見たくても、行事に手いっぱいになってしまうのです。

子どもを主役にして進めていくためには「余裕」が必要

もちろん、行事が多くてもそれを言い訳にせず、日々の振り返りや保育の準備も欠かさずにこなし、というスーパー先生もいるのかもしれませんが、そんな先生は少数です。子どものことを丁寧に見て、一人ひとりに応じた関わりをしていくためには、教師にも一定の余裕は必要だと考えます。「子どもを丁寧に見てもらいたい」と思うなら、あまりに行事が多すぎる園は避けるべきです。
 
幼稚園の行事は、あくまで子どもが主役になるべきです。子どもを主役にして進めていくためには、子どもにとっても、教師にとっても、一定の時間の余裕が必要だと考えます。次回の記事でも、チェックポイントをご紹介していきます。

>>1.「自由に遊ぶ時間」を保証しているかどうか?
>>3.幼稚園によって異なる一学級の子どもの人数
>>4.園へ見学に行く際に確認するべきこと

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Author:Eduwell Journal 編集部
本記事の執筆は、山田友紀子が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。「Eduwell」は、本メディアがテーマとしてきたEducation(教育)、welfare(福祉)、well-being(ウェルビーイング)の3つの言葉をつなぎ合わせて作られた造語です。本メディアは、子どもや若者を対象とした社会教育事業に取り組んでいる認定NPO法人「夢職人」が発行しています。

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