ひみつ基地

2013年08月号 vol.6

子どもが「自立する」に必要な3つのこと-「過干渉」な親や先生の下で育った子どもの危険

2019年09月13日 18:05 by takayuki_kawashima



口を空けてエサを待つペンギン

ある小学校での話。

運動会の徒競走で、2等賞になった児童の父親が、「今のはミスジャッジで、我が子が1等賞のはずだ」と、教師にイチャモンを。

ある中学校での話。

暴力やイジメなどではないよくある生徒同士のケンカに、双方の親が介入し、最後は裁判沙汰になった。

ある高校での話。

普通に生活し、普通に友達もいる生徒の修学旅行に、母親が同伴しようとしたものの、教師からどうしても許可を得られなかったので、息子の修学旅行を断念させた。

ある大学での話。

学期末試験の後、職員室は憂鬱な顔の教師で一杯になる。理由を尋ねると、単位を落とした学生の親から、「なんで落としたんだ」と文句の電話がくるのが、珍しくないから。

ある大手企業の人事部の話。

新卒者の採用で、最近、非常に気を使うようになったのが、「不採用通知をもらった学生の親から、クレームが来ないようにすること」らしい。

これらは全て、私の知り合いから聞いた事実です。

前号(※)では、「教育の目的は『子どもを自立した社会人』に成長させることで、そのために家庭、学校、地域の役割は欠かせない。ところが、教育に良好な状況ではない家庭、学校、地域が増えてきているために、自立の道からほど遠い子ども・若者も比例的に増えている。」と言う話をしました。

※2013年07月号 vol.5 自立できない子ども?自立させない大人?-なぜ、子ども・若者の現状がこれほど深刻なのか

上述の事例ほどではないにしても、「過干渉」な親の下で育った子どもは、「口を空けてエサを待っているペンギン」や「ひな鳥を怖がるライオン」になってしまいます。

あるいは、習い事や塾をこれでもかというくらいにやらせ、お受験や偏差値が全てみたいな生活を送らされ、サラリーマンよりも過密なスケジュールをこなしている子どもも、自立の術を身に付ける前に疲れ果ててピークアウトしてしまうでしょう。

ネグレクト、虐待、教育格差なども、子どもの自立には悪影響となるでしょうが、紙面の都合上、ここでは割愛します。



自立する先の「就活・仕事」環境

一方、子どもが「自立する」先の一つとなる「仕事・会社」の環境はどうでしょうか。

日本の国際競争力が、1990年の1位から2012年は27位に下がっている。アベノミクスに期待はしているものの、日本企業の海外移転は加速する 一方。地方の商店や企業などは、もっと悲惨。楽天やパナソニックのように、大手企業は「外国人」の採用を大幅増。これらから、子どもが就活に一生懸命に なっても、「勤める先」が年々減ってきているというのが現状です。 

就活で50社に断られ、大学4年生の冬になっても就職先が決まらない、なんていうのは珍しくなくなりました。就職できたとしてもワーキングプアの割 合は増えるばかりで、前号でも述べた通り、仕事や就職を理由に自殺する若者が倍増、三倍増しています。また、あるカウンセラーから、「お前は人間力が欠け ている!」と人格否定され、ノイローゼになる新入社員が驚くほど増えていると聞きました。

例えば、こんな感じだそうです。

栄えて、就職に成功。しかしいざ入社したら、「お前は何がやりたいんだ」という問いを、上司から投げかけられる。子ども時代に、親や先生から受けて いた「言われた通りにやっていればいいんだよ」という指導が、入社したら一転して会社から「自分で決めろ」に変わる。更に、「何がやりたいか言えず、自分 で決めることができない」でとまどっていたら、「お前には"人間力”が欠けている」と非難を浴びせられる。こんな非難を浴びせられるのは本人が悪いんだ、 ということになりますが、そうさせてしまったのは、彼や彼女が子ども時代の大人達であることは、言うまでもありません。



子どもが「自立する」には何が必要か?

繰り返しますが、教育の目的は「子どもが自立した社会人」になることです。言い換えると、就職の環境が厳しくなっても、仕事がグローバル化しても、子どもが経済的・精神的・社会的に「自立」できるように成長することが、子ども教育の目的です。 

では、子どもが「自立する」には何が必要でしょうか?

私は、自己肯定感、達成意欲、自己効力感の3つだと思います。

自己肯定感は、「あなたが産まれてよかった」と度々、親から聞くことに始まり、「~~はダメでしょ」ではなく「~~したほうがいいよ」という指導を受け、勉強やスポーツ以外の分野でも「いいところ」を認めてあげることから、養われるものです。 

自己効力感とは、「やればできるんだ!」、「自分は価値ある存在なんだ!」と子ども自身が思うことから生まれてくるわけですから、「やり遂げる」経験、「認められる」経験などが必要となります。

さてもう一つ残った「達成意欲」ですが、実はこれが一番重要だと思います。

達成意欲が無いと、いくら自己肯定感をもっていても成長しません。また、自己効力感を生むような経験をすることも、ほとんど無いでしょう。ところが、今の教育環境だけでは、子どもの達成意欲を高めることは難しいのではと、危惧しています。

では、子どもに達成意欲を身に付けさせるには、どのような教育機会を子どもに与えればいいでしょうか?一言で言うと、「好きなこと」を続けさせ、「得意なこと」を優先させ、「役に立つ」経験をさせるの3つです。 

各々についての詳しいことと、この3つを同時に得られる機会は何か、については次号でお話します。

NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表理事 川島高之

本記事を書いた記者の記事一覧


関連記事

子どもの対話や主体的な学びを阻害する4つの「症候群」とは?-教育現場での振り返りや対話を深める!ファシリテーションのヒント

2019年11月号 vol.81

中学生・高校生のためのボランティアの探し方・選び方-ボランティアでミスマッチしないためのポイント

2019年10月号 vol.80

子どもの成功体験をデザインする!エラーレスラーニングのすすめ-「誤りや失敗をさせない」学習方法とは?

2019年3月号 vol.73

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)

2019年11月号 vol.81

今月も子どもや若者の支援に関する幅広い情報をご紹介します。各分野の実践家が...

2019年10月号 vol.80

今月も子どもや若者の支援に関する幅広い情報をご紹介します。各分野の実践家が...

2019年9月号 vol.79

今月も子どもや若者の支援に関する幅広い情報をご紹介します。各分野の実践家が...