ひみつ基地

2017年03月号 vol.49

子どもたちにエビデンスに基づいた特別支援教育を!①-全国をリードする「とくしま支援モデル」とは?

2017年09月06日 22:31 by hitomi_kuma_73
知事が公約する40本の事例研究、県として日本初のスクールワイドPBSの導入、ITを駆使した教材や研修システムなど全国のモデルになりうる先端的な特別支援教育のモデルを作り上げようとしている県をご存知でしょうか?ヒントは、お遍路さん、鳴門の渦潮、阿波踊り、そう、徳島県です。その名も
 
徳島発!発達障がい等「とくしま支援モデル」
 
事業概要に「全国をリードする徳島モデルをパッケージ化」という文言がある通り、全国の参考になるべき素晴らしい成果をあげつつあります。私(NPO法人ADDS・熊仁美)も、とくしま支援モデルに微力ながら関わらせて頂く中で、徹底的にエビデンス(科学的根拠)を重視した仕組みや成果を全国に発信したいと感じています。今回は、事業の中核を担う徳島県立総合教育センター特別支援・相談課班長の田中清章先生にインタビューをさせて頂きました。
 



1.キーワードはエビデンス!とくしま支援モデルの挑戦

熊:まず、徳島発!発達障がい等「とくしま支援モデル」の全体像を教えていただけますか?

田中:徳島では、「障がいのある人もない人も暮らしやすい徳島づくり条例」を制定するなど、共生社会の実現に向けた法的整備が進んできました。徳島ならではの特別支援教育の充実や、企業、教育、労働が連携した就労支援体制の構築なども急務です。事業の3本柱は、(1)発達障がいのある児童生徒への支援を通じた社会性や学力の向上、(2)全国をリードする「とくしま支援モデル」の蓄積と全国発信、(3)連携による効果的な就労支援モデル構築の3点です。
 
熊:どれも先進的で素晴らしいですね。今回は、特に(1)と(2)について深められたらと思っているのですが、具体的にはどんなことをされているのですか?
 
田中:発達障がいのある児童生徒への支援に関しては、児童生徒が自分で学習を進めることができる自律型教材の開発や、インクルーシブ教育推進のための実践研究、教員用e-ラーニングの開発等を実施しています。とくしま支援モデルのパッケージ化については、全国から集まって下さっている「発達障がい教育・自立促進アドバイザーチーム」の専門家に現場に入っていただき、協働研究という形でエビデンスを出しています。アドバイザーを活用した「学校コンサルテーション徳島スタイル」を推進していくこと、実践研究を現場で蓄積し、ホームページで県内や全国発信していくことなども行っています。
 
2.「学校コンサルテーション徳島スタイル」は、なぜ効果が上がるのか?

熊:私が現場に入ってまず素晴らしいと感じたのは、「学校コンサルテーション徳島スタイル」です。特徴は何でしょうか?

田中:「学校コンサルテーション徳島スタイル」は、事例研究とセットになっているという点、コンサルテーションが単発でなく連続的である点が特徴だと思います。

熊:先生方はただでさえお忙しいですし、単発のコンサルテーションだと、お互いに話しっぱなし、聞きっぱなしで終わってしまうことが多いですよね。具体的にはどんな流れなのですか?
 
田中:担当になった先生は、お子さんについて困っている点や支援したい点をまとめて、初回のコンサルテーションに備えます。専門家の方は、来校日に先生が行っている現状の支援を見て、色々とアドバイスをします。専門家が直接お子さんと関わる様子も見せて下さり、発達にあった課題の設定、指示の出し方、手助けの入れ方、ほめ方、環境のつくり方など実践的なアドバイスを下さるので、それを元に支援目標や方法、記録の取り方などを決定します。
 
熊:通常だと、ここで終わりのタイプのコンサルテーションが多いですよね。
 
田中:そうですね。徳島では専門家の方に「結果」にコミットしてもらうために、2、3ヶ月後にもう一度来校していただき、実践や成果にフィードバックを頂いています。重要なのは、2ヶ月の間に現場の先生がとった記録です。報告もフィードバックも、必ずデータを元に行っていただいています。あと、コンサルテーションの最後には学校の他の先生方にも集まって頂き、報告会を開くようにしています。そうすると学びが学校全体で共有できます。
熊:忙しい中でも、先生方がしっかりデータを取ることを徹底して下さっていますよね。良くも悪くも成果に向き合わないといけないので、専門家として入る側にも緊張感があります。
 
田中:私たちとしては、「絶対に成果をあげなければいけない」とは思っていないんです。それは現場の先生方にも慎重にお伝えしているのですが、1回で必ず成果を上げなければいけないわけではない。しっかりと記録を取ることで、自分の指導やお子さんの行動に客観的に向き合うことができるようになるだけでも、大きな成果だと思います。
 
熊:事例研究を担当した現場の先生とお話したら、「最初は大変だったけど、今では記録をとらないと逆に気持ちが悪いんです」とおっしゃっていました。事例研究が成功体験になっているからこそ、これだけ根付くわけで、すごい仕掛けですよね。
 

(専門家を招いて現場の先生たちが定期的に行っている事例研究報告会)

3.知事も公約!40本の事例研究にみる子供たちの変化 

熊:この事業に関連して、飯泉県知事の公約を見ると、「40本の事例研究を!」という文言が入っていますよね。公約に事例研究の数が入るって新しくて、とても良いことだと思いました。同時に、現場の責任やプレッシャーは大きいような気がします(笑)

田中:はい、知事は発達障害の支援にとても熱心な方なので、この事業が目にとまって、公約に入れていただけたことは、幸運だったと思っています。相当なプレッシャーであることには代わりないですが(笑)「事例研究は、平成30年までに40件まで増やす」というのが公約に入っています。現場としては「とにかくやるしかない」という感じです。現在、特別支援学校は11校あるのですが、ほとんどの学校が事例をあげてくれるようになってきました。事例研究のうち、保護者の同意を得られた事例は、必ず成果報告会で発表し、どなたが見ても分かりやすいように少し物語風にしてホームページにも公開しています。現在、すでに15の事例研究がアップされています。全国どなたでも見られるので、ぜひ、ご覧になってください!

熊:私も拝見しました。事例研究としてのレベルも高いですし、子どもたちの一人一人の様子が目に浮かびますよね。先生から見て、子どもたちの変化はどうですか?
 
田中:ぜひ、事例1つ1つ見ていただきたいんですが、言葉でコミュニケーションをとれるようになって、すごく笑顔が増えていたりするのを見ると、やはり嬉しいですね。コンサルテーションでは、「そもそも子どもに必要な課題を提示出来ているか?」ということも見直していただくので、お子さんが興味をもてて、かつ意義がある課題に変えるだけでも、「こんなに活き活きと取り組んでくれるようになるんだ」とか、そういう驚きがたくさんあります。自分も含めて、「教員にできることはまだまだ沢山あるな」と思います。
 
熊:私もいくつかの事例研究にアドバイザーとして入らせていただきましたが、お子さんや先生の変化が目に見えて起こるので、毎回感動です。壁を蹴って怒っていたお子さんが、2ヶ月後には笑顔で「教えてください」と先生に伝えられている。絵を見ても名前を言えなかった子さんが、2ヶ月後には30語自発的に名前を言えるようになっている。子どもに真剣に向き合う現場の先生方のパワーには本当に頭が下がります。
 
田中:忙しい中で事例研究に手を挙げて下さる先生には、本当に感謝しています。先生方の変化もとても大きいです。ほめ方が上手になったり、分かりやすい指示の出し方になったり、さりげなく手助けヒントを入れられるようになります、先生にとっては、お子さんの変化が1番のモチベーションになるので、結果的には先生の笑顔も増えるような気がしますね。

次回は、すごい専門家を巻き込んで離さない「とくしま力」についてや、全国に先駆けたスクールワイドPBSの成果、気になる予算のお話をまとめていきたいと思います。

②いじめや学級崩壊を防ぐ「スクールワイドPBS」を日本初導入
③方法や手段ではなく、データと成果でつながるチーム作り
④全てのはじまりは、教員10人の小さな研究会だった

NPO法人ADDS 共同代表 熊仁美

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