ひみつ基地

2017年06月号 vol.52

子どもや生徒が「芸能人や作家・漫画家になりたい」と言い出したらどうする?-反対するよりチャレンジさせた方が良い3つの理由

2017年09月06日 12:49 by shoko_kawahara

歌手、バンド、役者、声優、お笑い芸人、ダンサー、漫画家、小説家、さらには、ユーチューバーなど、プロのクリエイターやエンターテイナーの仕事は、世の中に様々あり、その仕事を目指したいと言う子どもや若者は少なくありません。一方で、自分の子どもや生徒が目指したいと言い始めたとき、応援してあげるべきなのか、反対すべきなのか、迷いのある方も多いでしょう。

私の所属するNPO法人NEWVERYは、若者支援の団体として漫画家志望者の支援事業を10年以上に渡って行っています。その事業で蓄積されたノウハウを踏まえ、ひとつ提案をさせていただければと思います。

目指したいのであれば、すぐにチャレンジさせる

私がお勧めするのは、「すぐにチャレンジをさせる」ということです。音楽や創作であればすぐに自分の作品作りに取り組むことが可能ですし、役者や声優なら演劇部に入ったり、お笑いだったらネタを撮影して動画サイトにアップしたり、専門のスクールに通ったりしなくてもできることはたくさんあります。さらに一歩先には、オーディションや新人賞といった形で、門戸が開かれています。「高校を卒業したら」とか、「大学を卒業したら」なんて待つ必要はありません。すぐにチャレンジさせることをお勧めする理由は3つあります。

1.将来に後悔を残さない
「そんなのダメだ!無理に決まっている!」などと反対すると、「どうして無理なんて決めつけるんだ!」と対立は深まる一方です。その場では諦めたように見えて、諦められない気持ちを抱えたまま、どこかでまた「やっぱり目指したい!」と言い始めるかもしれません。親や先生の言うことを聞いて別の道に進み、うまく行かなかったときに、そのことを全てその親や先生のせいにしてしまうかもしれません。全面的に賛成してあげる必要はありませんが(それはそれで、本人が調子に乗ります)、頭ごなしに反対することで、後々に禍根を残すこともあるのです。
 
2.プロになるには、時間がかかる
 
クリエイターを目指す人によくあるのが、「自分はすぐに才能を見出され、あっという間にデビューできるだろう」という勘違いです。スポーツ選手を思い浮かべてもらえると分かりやすいのですが、多くのプロは才能の上に、幼少期から努力を重ねてきた人たちです。クリエイターも同じで、例え才能があったとしても、そこからさらに時間をかけて努力をしなければ、プロとして食べていくことはできません。
 
例えば漫画家の場合、新人賞で大きな賞を受賞しても、実際に連載が始まるまでは何年もかかります。あのワンピースの尾田栄一郎先生ですら、3年くらい何も載っていない時期があったといいます。事務所に所属するとか、担当の編集者がつくといったことは、プロとして食べていくためのスタート地点に立ったに過ぎず、プロへの道はその先の方がずっと長いのです。
 
3.次のキャリアの選択肢が残されている
もう一つ大事な視点が、「うまく行かなかったときに別の道を選びやすい」ということです。例えば、高校1年生の15歳から5年間チャレンジし続けたとします。それでモノにならなかったとしても、まだ20歳。大学に行っていれば一般企業に新卒で就職することもできます。逆に30歳からチャレンジすると5年後には35歳。30歳までに何をしていたのかにもよりますが、一度キャリアをリセットしてしまった上で35歳となると、どうしても他の選択肢が狭まってしまいます。

もちろん、本人次第のところはあるので、「年齢が上だと不利」とは言い切れません。しかし、クリエイターを抱える芸能事務所や出版社にとっても少なからず影響します。同じくらいの才能を感じている2人がいて、1人が15歳で、1人が30歳だとすると、今後の伸びしろという意味でも、うまく行かなかったときの責任の重さという意味でも、どうしても年齢が高い方は躊躇してしまうのです。

学校や仕事は絶対に辞めさせない
 
先ほど、「すぐにチャレンジさせた方がいい」と書きました。これとセットで大事なのが、「学校や仕事を辞めさせてはいけない」ということです。
 
これもいくつか理由があるのですが、前提として、学校や仕事と両立できない程度であれば、プロとして食べていけません。一日は24時間ありますので、日中の学校や仕事で8時間、睡眠で8時間とったとしても、残りは8時間。一日の3分の1の時間が使えます。この時間で成果が出せなければ、プロになったとき仕事がまわりませんし、例え学校や仕事を辞めて時間が倍になったところで、倍の努力ができるわけではありません。
 
また、学んだことや経験したことは、そのままプロとしての糧になります。国語力がなければ歌詞や物語を書いたり、台本を読み解いたりすることはできませんし、歴史や社会の知識がなければ、国や宗教や文化などの様々な背景に配慮して創作をすることができません。理数的な知識や考え方が身についていなければ、論理的に物事を考えることも難しいでしょうし、創作したものを売るという観点でも重要となる数字を理解することができません。多様な知識や考え方を知っていることで、様々な世代とコミュニケーションを取り、また自分の生み出したものを届けることができます。
 
そして、最後に大事なことは、やはり諦めた時に「次のキャリアの選択肢が広い」ということです。「全てを辞めて背水の陣を引きます」なんていうのは、現実逃避でしかありません。
 
 
どこも、才能の上に人一倍努力ができないと、生き残れない世界
 
正直なところ、目の前で「クリエイターを目指したい」と言っている子どもや生徒に才能があるのかどうか、素人の私たちには分かりません。オーディションや新人賞で審査員をしている人たちでさえ、当り外れがあります。一方で、その活動に対して「夢中で努力できる才能」があるかどうかだけは、私たちにも、そして本人にも明確に分かります。
 
私自身、声優になりたいと主張していた時期があり、親と大ゲンカをしました。契機となったのは、高校1年生のときの担任の先生に進路面談で「じゃあ、まずは演劇部だな」と言われたことです。演劇部には入りましたが、部の中には他にずっと上手い人がいましたし、県の合同合宿みたいなところに行けば、さらに上がいました。それなりには頑張りましたが、プロを目指すには覚悟も意欲も足りませんでした。それを自覚できたというのは、本当に大きかったです。結果的に、演劇をやっていたことで、今の仕事に活きている要素もありますし、お芝居も趣味でできていますので、挑戦したことも諦めたことも全て今につながっていると感じています。
 
最後に、チャレンジするとしても、「3年でここまで達することができなければ諦める」「5年だけやりきってダメなら他の道を選ぶ」など期限を決めることが非常に重要です。ダラダラ引きずってしまうと「目標に向かって頑張っている自分」に満足してしまい、先へ進むことも、立ち止まって別の道を選ぶこともできなくなってしまいます。ただ反対するよりも、行動を促し、期限を決め、本人がやり切る補助をしてあげてもらえればと思います。

NPO法人NEWVERY 川原祥子

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