ひみつ基地

2013年08月号 vol.6

子どもの個性を見分け、個性を伸ばす方法とは?-「違い」と「間違い」を混同しない向き合い方

2019年09月13日 18:05 by sari_yamamura

子どもに対して、思い通りに行動してくれなくてイライラした経験はありませんか?「もっと積極的に行動してほしいのに・・・。」「友達と協調性をもって仲良く遊んでほしいのに・・・。」大人は、子どもが思い通りにならない、自分と価値基準の違う行動をとると、「この子は『間違っている』」と思いがちです。では、本当に子どもは「間違っている」のでしょうか?

「違い」と「間違い」は、どのように異なるのか?

もし、自分と価値基準の違う行動をとることが「間違い」ではないとしたら、それはただの「違い」の可能性があります。「違い」と「間違い」、「間」がつくかつかないかの差。そもそも、どんな意味を持っているのか『広辞苑 第五版』で調べてみました。


「違い」 ・・・ ちがうこと。同じでないこと。

「間違い」 ・・・ まちがうこと。あやまり。


「違い」は、ただ、「同じではない」だけのことですが、「間違い」は、「あやまり」とある通り、正しくないことであり、他に正解があるという意味です。もし、子どもが法律に触れることや、人を傷つけるようなことをしたら、それは明らかに「間違い」です。しかし、積極性があるかないか、協調性があるかないかは、子どもの個性であって、「間違い」ではなく、ただの「違い」なだけではないでしょうか?大人にも個性があるように、子どもにも生まれながらに持つ、また、少ないながらも数年間生きてきた中で形成された個性があります。それを「間違い」とせず、「違い(=個性)」を尊重した上で、社会に出た時に困らない教育をするのが本当に大人の役目なのではないでしょうか。

古代中国の論語にこんな話があります。(『世界の名著3 孔子 孟子』より)


子路問う、聞くままにこれ行わんか。子曰わく、父兄在す有り、如何ぞ、それ聞くままにこれ行わんや。冉有問う、聞くままにこれを行わんか。子曰わく、聞くままにこれ行なえ。公西華曰わく、由が聞くままにこれ行わんかと問えるとき、子は父兄在り有りと曰えり。求が聞くままにこれ行なわんかと問えるとき、子は聞くままにこれ行なえと曰う。赤や惑う。敢えて問う。子曰わく、求や退く、故にこれを進む。由や人を兼ねんとす、故にこれを退く。

<訳>
子路がおたずねした。「聞いたらすぐにそのとおり実行しましょうか」先生がこたえられた。「父兄がまだ世の中で現存されている。どうしてそのまま実行しよう。父兄に告げて賛成を得てからにせねばなるまい」冉求がおたずねした。「聞いたらすぐにそのとおり実行しましょうか」先生がこたえられた。「聞いたらすぐにそのとおり実行するのがよい」公西華がおたずねした。「子路が、『聞いたらすぐにそのとおり実行しましょうか』とおたずねしたとき、先生は、『父兄がまだ現存されているではないか』とおこたえになりました。今度、冉求が、『聞いたらすぐにそのとおり実行しましょうか』とおたずねしたとき、先生は、『聞いたらすぐそのとおり実行しろ』とこたえられました。わたくしはわからなくなりました。どちらがほんとうなのかぜひお聞かせください」先生はこたえられた。「冉求は消極的である。だからこれを励ました。子路は他人の仕事にまで手を出そうとする。だからこれを控えさせたのだ」


上記は、孔子が門弟たちの個性と長所を的確に把握しており、弟子から同じ内容の質問を受けても弟子の個性に合った的確な回答をしたという有名なエピソードです。孔子(=先生)は、消極的な冉求に対しては、すぐにやるようにアドバイスをし、行動しすぎてしまう子路に対しては、周りの人に意見を聞き、よく検討してから行動するようにアドバイスをしています。

私達は、つい、子どもに対して、世にたくさん出回っている、画一的なノウハウ本をそのまま鵜呑みにし、そのまま行なってしまいがちです。「子どもは ○○のような対応をしたらやる気が上がる」「子どもの自主性を育てるには○○をするべきだ」など、そのまま信じ、試し、本通りの結果が出ないと「この子は 間違っている」という思考に陥りがちです。

もちろん、ノウハウ本を参考にすることが悪いことではありません。先人たちの教訓が詰まっており、学ぶべきことはたくさんあります。しかし、ただ、 画一的に全て信じ込んで行なうのではなく、「子どもは」ではなく、目の前にいる「その子は」どういう子で、どんなことに喜びを感じ、どんなことにやりがい を感じ、どんなことを大切にしてるのか、どんな「違い(=個性)」を持っているのかを踏まえ、対応していく必要があります。

子どもの個性をどのように見分け、対応するのが良いか? 

では、どう個性を客観的に見分け、対応していくのがよいのでしょうか。今回は、参考として「ソーシャル・スタイル」という考え方をご紹介します。 ソーシャル・スタイルとは、他者から観察できるような、人が習慣的にとる行動の傾向のことを言います。自己主張度と感情表現度を縦横の軸とし、4つのソー シャル・スタイルに分けたものです。(下図)

この図を踏まえて、もし、子どもが夏休みの自由課題を行なうのをサポートするという場合という場合を考えてみましょう。

ドライビングの傾向を持つ子どもは、自分でどんどん行動していき、成果物に対して達成感を感じる性質を持つので、その子が何をしたいのかをしっかり 踏まえ、アドバイスするにしてもいくつか選択肢を用意したうえで、その子に選んでもらうことが、その子のやる気につながります。

エクスプレッシプの傾向を持つ子どもは、面白いことを好み、物事に熱中し、周囲から認められたがる性質を持つので、その子がわくわくするようなユニークな方法を提示したり、出来たことに対して最大限の賞賛を与えたりすることでやる気につながります。

エミアブルの傾向を持つ子どもは、人と協力して行なうことを大切にし、安定した環境を好む性質を持つので、一緒に協力するというスタンスで、その子 のペースに合わせながら、ゆっくり丁寧に進めていき、人の役に立つようなことをしたら積極的に褒めることで、やる気につながります。

アナリティカルな傾向を持つ子どもは、時間をかけて物事に取り組み、こだわりが強い性質を持つので、その子の細部にわたるこだわりを尊重し、ゆっくりと考える時間を与えながら進めていき、出来たことは具体的に褒めることでやる気につながります。

ついつい私たちは、他人も同じ価値観・傾向を持っていると思いがちです。しかし、その子がどういう子なのか、どんな「違い」を持っているのかを踏ま えて、対応していくことが大切です。間違っても、ドライビングの傾向を持つ大人が、エミアブルの傾向を持つ子どもに対して、表面的な部分だけを見て、消極 的で自分の意見がない「間違った」子だとレッテルを張るなど絶対にあってはなりません。もしかしたら、その子にとっては、縁の下の力持ちとして人の役に立 つことを、積極的に行っているかもしれません。

子どもに関わる大人として、何を「違い」とし、何を「間違い」とするのかの基準はしっかり持ち、子どもの「違い(=個性)」を尊重し、伸ばしていくことが、その子が社会に出た時に「本物の生きる力」を持った大人になることにつながるでしょう。

コーチングオフィス「みらいと」代表 山村沙莉

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