ひみつ基地

2018年5月号 vol.63

南アフリカのキャンプに参加する唯一の日本人女性(前編)~子どもが生きるために必要な知識や力を身につける場

2018年07月10日 16:14 by shoko_kawahara

南アフリカで行われているキャンプにはじめて日本人として参加し、その後、アメリカやカナダなど各地のキャンプを巡り、子どもたちのために働く女性がいます。彼女の名前は、小松令奈(こまつはるな)さん。子どもの頃から大好きだったキャンプに魅せられ、社会人として企業で働きながらも遠く離れたアフリカの地へ。そして、アメリカやカナダへと飽くなき挑戦を続けています。

今回、全3回に渡って、キャンプを通じて子どもたちの教育活動に取り組む小松さんのチャレンジについてインタビューしました。前編では、南アフリカのキャンプについてお伺いしました。インタビューを依頼したところ、今はカナダのトロントにいるとのこと。日本時間22時、現地時間は朝9時、skypeでのインタビューが始まりました。

南アフリカの子どもキャンプとは?

小松さん
Camp Sizananiは、南アフリカのソウェト地区に住む子どもを中心に行われているキャンプ活動です。年に3回、1週間のキャンプが行われ、10歳~18歳の子どもが毎回140人くらい参加します。ソウェトは南アフリカで反アパルトヘイト活動が行われたことで有名な街です。そのソウェトからバスで2時間くらいの宿泊施設に移動し、1週間を過ごします。

川原(記者)
それだけの人数で1週間という規模のキャンプは、日本ではなかなかありません。キャンプの中では、具体的にどんな活動をするのでしょうか。

小松さん
日中は学校のように時間割があって、1コマ1時間で1日7コマのアクティビティを行います。年齢・性別ごとにクラスのように分かれて、アクティビティを回る形です。アクティビティは、「水泳」、「工作」、「栄養(調理実習)」、「シアター(演劇やダンス)」、「ライフスキル1・2」です。ライフスキル1は虐待や中毒(ドラッグ・アルコール)、LGBT、ティーンエイジャーのセックスについて子どもたち意見を聞いていきます。

ライフスキル1では、どんな意見も間違っていると正すことなく、親やコミュニティ、友達が何と言おうとも、子ども一人ひとりが正しい情報を集めて自分で意思決定をする権利があることを伝えていきます。ライフスキル2ではエイズの正しい知識を子どもたちと確認し、感染したらどんな生活になるのかを一緒に考えていきます。夕食後は、キャンプファイヤーやタレントショー、クイズ大会など、夜のアクティビティが用意されています。

川原(記者)
HIV/AIDS予防というのは、アフリカならではという感じがしますね。

小松さん
このキャンプの最も大きな目的が、正しいHIV/AIDSの知識を身に着けてもらうことなんです。南アフリカは人口の19%がHIVに感染している、世界で1番HIV感染率が高い国です。南アフリカでもHIV/AIDS予防の教育は広がっていますが、必ずしも正しい情報というわけではありません。また学校や家庭では大人たちは性教育について口にしたがりません。正しい知識を伝え、最終的には南アフリカからHIV/AIDSをなくすのが目標です。


(キャンプの始まりの様子)


(夕食の様子。静かに座っている時間はわずかで、歌って踊るのが大好き)

キャンプという形の教育機会

川原(記者)
子どもたちに必要な知識や力を身につけてもらう。日本ではキャンプと言うと遊びの延長線上として捉えられがちですが、教育の機会としてきちんと練られた社会的意義の高い活動であることが感じられます。どのアクティビティも、普段の生活ではやらないことが多いのでしょうか?

小松さん
水泳は初めてやるという子が多いですね。前回、私が担当した班は、半分以上の子どもが水泳は初めてという子でした。1日目はとても怖かったと言っていた子どもたちも、2日目、3日目と進むにつれて自分の力で浮けたり、前に進めるようになったり、飛び込めるようになったり。どんどん恐怖感を乗り越え、水泳を楽しめるようになっていたのが印象的でした。


(キャンプでの水泳の様子)

川原(記者)
Camp Sizananiが始まった経緯についても教えてもらえますか?

小松さん
Camp SizananiはアメリカのNGO Global Camps Africaによって運営されており、今年で15年目を迎えます。アメリカ人のフィルという人が立ち上げました。フィルは、もう70代くらいの方なのですが、若いころに青年海外協力隊のような形でエチオピアに2年ほど行っていたそうで。その後はアメリカで働いていたものの、ずっとそのときの経験が心に残っていて、15年前にこの活動を始めたそうです。

子どもたちのポジティブな変化を生み出す

子どもの「初めて」に立ち会うことができる、というのはキャンプリーダーの醍醐味の一つですが、国が違ってもその点は共通しているようです。他にも子どもの変化として、こんなエピソードを話してくれました。

小松さん
Camp Sizananiでは、最終日に発表会があります。 シアターの時間に子どもたちは、自分たちで考えた歌やダンス、劇を練習し、最終日にみんなの前で発表するんです。私の班に、いつも控えめで口数の少ない女の子がいました。 みんなが楽しそうに歌っている時も、横でそれを眺めている姿をよく見かけていました。その子が、最終日の発表会の歌の発表でコーラスに続いてメインメロディーを歌い出したんです。キャンプに参加していると、子どもたちがポジティブに変化していく様子や、意外な一面をみることができるので、それが楽しいです。

川原(記者)
参加する子どもたちは、みんな初めてキャンプに来る子たちなのでしょうか。

小松さん
基本的にキャンプでは、初めての子しか受け入れていません。キャンプの他に、月に2度、キッズクラブというデイプログラムをやっているので、2回目以降の子はそっちに参加することになります。そちらの活動には参加したことがないのですが、HIV/AIDS予防について継続的に学んでもらったり、レクリエーションをやったり、という内容だと聞いています。


(初日と最終日に行われるキャンプファイヤー。これからの目標やキャンプの思い出、スタッフたちから「ここにいる大人はみんなあなたのことを大切に思っているよ」と伝えます)

川原(記者)
キャンプという機会を多くの子どもたちに提供しながら、一度来た子のフォローの仕組みも別に持っているとは、素晴らしいですね。参加費は全て無料ですか?

小松さん
そうです。全て寄付によって運営されています。創設者がアメリカ人ということもあって、多くがアメリカからの寄付ですね。パートナーの数は600-700と聞いています。参加する子どもたちには繰り返し「アメリカを含めた様々な国の人からの寄付によって、あなたはこのキャンプに参加することができているんだよ」ということを伝えます。

川原(記者)
キャンプに無料で参加できるだけでなく、自分たちを応援し、支えてくれる大人がいるということを感じるのは、とても大事なことです。寄付をしてくれた方へのメッセージ動画の撮影など、寄付者への報告もしっかり行われているそうです。

>>中編:世界のキャンプを見るために国分寺から飛び立つ
>>後編:色んな子がリーダーになれる!キャンプが育む子どもたちの自尊心

教育・研修プランナー 川原祥子

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