ひみつ基地

2018年4月号 vol.62

【支える人】仕事熱心な彼女が教育ボランティアに力を注ぐ理由~「後悔しないように生きたい」という考えが常に自分の中にあった

2018年04月10日 12:40 by editorial_desk

首都圏を中心に、子どもや若者の成長を社会全体で支える仕組み作りに力を入れている「NPO法人夢職人」。100名を超える学生や社会人のボランティアスタッフが登録し、活動している非営利団体だ。そんな夢職人で、精力的に活動している一人の若手社会人の女性がいる。

彼女の名前は後藤里奈さん。社会人4年目で、笑顔がとても素敵な彼女は、本業がありながら、余暇の時間をボランティアに充てている。社会人として忙しい日々を過ごしながらも、なぜ、ボランティアという形で子どもたちの教育活動に取り組んでいるのか?

インタビューを通して、後藤さんのモチベーションの源泉を探っていった。

ラクロス部に打ち込んだ大学時代から金融業界へ

後藤さんは神奈川県横浜市の出身。生まれてからずっと同じ場所で育った。

大学時代はラクロス部に打ち込み、週5日間の練習をほぼ休まずに継続した。

4年生になり、1年生の育成の係を担当することに。まだ部活に慣れない1年生のメンタルのケアに励んだ。部活での後輩育成の経験が、今後の後藤さんの人生の中で大きな出来事だったと言う。

" 私たちの学年の目標は「ついていきたいと思える4年生になる」ということ。後輩に背中を見せることを大事にしていましたね。結果を出すことはもちろんなのですが、その取り組む過程も大事にしたいと思っていました。メンバーがどのような気持ちで取り組んでいるのか、困っていることや悩んでいることはないのか、いつも気にかけていましたね。気がついたら、自然と周りにいる人の様子の変化に目が行くようになっていました。 "

そう話す物腰柔らかな雰囲気から、他の人のサポートやフォローが上手な様子が想像できる。

3年生の終わりごろからは、部活や学業と同時並行で就職活動に取り組んだ。様々な説明会に行く中で、「金融」の業界に興味がわき、生命保険会社に就職する。

“ 金融の知識は、人生のどこかで知っておいたほうがいいと思ったんですよね。知らないよりも知っておいたほうがいい。仕事をしながら、人生に役立つ知識も得られるかなと思って。金融業界の中でも現在の会社を選んだ決め手は「出張の多さ」ですね。生まれも育ちもずっと同じ場所だったので、「そこを抜け出したい」という気持ちが強かったです。実際の出張はとても楽しくて!限られた時間の中で、初めて会う人と協力しながら仕事をすることに、毎回ワクワクしていました。 ”

出張が多いことをプラスに捉える人は、なかなかいないだろう。チャレンジ精神、好奇心旺盛な後藤さんの一面が垣間見えた。

一方、仕事が充実している日々を過ごしているのなら、なぜ、余暇の時間を使ってNPOでボランティアをしようと思ったのか?

“ 入社して1年が経った頃、少しずつ「このままでいいのか?」という思いを抱くようになったんですよね。やりたかった仕事に就き、出張もあるし楽しい。やりがいも大きいんですが、休日にも、自分が好きなことで打ち込めることが何かあるんじゃないかなって。「後悔しないように生きたい」という考えが常に自分の中にあったので、「何か行動しよう!」と思ったんです。 ”

信頼できる大人の一人になれたら

大学時代に、小学生向けの塾でアルバイトをしていたこともあり、「子ども」というキーワードがふと頭に浮かんだと言う。学校教員の道には進まなかったが、子どもと関わることそのものはとても好きだった。また、大学時代の後輩育成の経験を通じて、「人のために何かをする」ことのやりがいの大きさも感じていたこともあり、「ボランティア」が思い浮かんだと言う。

自分も楽しく、かつ子どもたちにとっても楽しい「何か」を見つけたい。そこで偶然見つけたのが「夢職人」だったと言う。

“ 体験で参加してみた活動が、とにかくとても楽しくて。自分も子どもになって、無心で一緒に遊びました。子どもと関わると言うと「先生」が思い浮かぶけど、自分は「先生」と呼ばれることにはイメージがわかなかったんです。なので、先生ではないポジションで、子どもたちと関われることにとても魅力を感じました。「身近なお兄さん、お姉さん」として、子どもの成長に関わっていけたら素敵だなって。また、一度きりの出会いではなく、継続性を重視していることも大きな魅力の一つでした。子どもたちにとって、信頼できる大人の一人になれたら嬉しいなって。 ”

ニコニコと笑顔で話す後藤さん。子どもが好きな気持が伝わってくる。

スタッフとして登録した後、初回の活動はやはり緊張したそうだが、子どもたちがにこやかに話しかけてきてくれて、緊張がほぐれたと言う。

“ 何回か活動に参加したある日、子どもがふいに「りな、楽しいね!」と言ってきたんですよ。何をするでもなく、本当に何気ないタイミングの時に。びっくりしたけど、なんだかとっても気持ちがほっこりして。子どもたちが楽しそうにしている姿を見ていると自分も嬉しいし、楽しい。 ”

子どもたちと過ごす一瞬一瞬や何気ない一言がボランティアに取り組む上での大きな下地となっているようだ。「一人ひとりの子どもたちと丁寧に関わりたい」と思っている後藤さんだからこそ、現在、悩んでいることがあるらしい。

“ ある活動の時に、隣の班の子どもから「いつもりなの班になれないんだよね」と言われたことがあって。自分の班になりたい、と思ってくれていることはとても嬉しかったのですが、その子が誰なのか、よくわからなかったんですよ。それが自分としてはとてもショックで。全ての子どもたちのことを把握することは難しいかもしれないですが、もう少し子どもたちのことを知っていきたい、知っていかなきゃ、と思った瞬間でしたね。 ”

親や先生ではない、本業もある。あくまで一人のボランティアという立場ではあるが、後藤さんは責任を持って目の前の子どもたちに向き合い、真摯に関わっている。

「ボランティアをしている」という言葉でまとめてしまうのはもったいないほど、色々な思いを持ちながら活動に参加していることがわかる。

“ 夢職人のことを友人に話すと、「すごいね」と言われるんですが、自分ではあまりすごいとは思わないですね。自分が楽しくてやっていることが、誰かにとってプラスになればいいな、と思っているだけです。私と関わった子どもたちやスタッフに、「りなと一緒にやって楽しかったな」と思ってもらいたいなって。 ”


(プログラムで子どもたちと一緒に活動する後藤里奈さん)

「子どもたちのため」という軸

現場の活動に参加するのみならず、企画運営にも携わっている後藤さん。本業の仕事が終わった後にミーティングを行ない、子どもたち向けの活動について、真剣に議論をする。企画運営の期間は、2~3ヶ月らしい。そこまで彼女を突き動かす原動力には、何があるのだろうか。

“ 「子どもたちのため」という軸のもとに、学生や社会人という枠を越えて、みんなで真剣に議論することがとても楽しいです。昔はこうだった、とか、前例がないから、ではなく、「今、どうするか?」を考えられる。何か問題が起きれば、問題を起こしてしまった人を責めるのではなく、改善に向けて知恵を出し合うことができる。明確な正解がないからこそ、突き詰めて考えていくことの充実感が大きいです。 ”

一つの目的を達成するために、全員で力を合わせる。

シンプルで一見簡単なことのようだが、それをぶらさずに取り組むことができる環境は、案外少ないのかもしれない。

ここまで話を聞いてきて、「人のため」に取り組んでいることが、結果的には「自分のため」にもなっていることが感じられた。忙しい時間の合間をぬって活動に参加している分、自分にとって得られる価値も大きい。

“ 今後の仕事のキャリアとしては、金融業界の専門性を高めていきたいです。そのために勉強も続けていきたい。仕事以外のキャリアとしては、夢職人をできるだけ長く続けていきたいなって思っています。ここでは、教員免許を持っていなくても、子どもの成長に関わることができる。それは本当にありがたいことだなって感じてます。周りのメンバーも常に真剣、全力で、そんな環境の中で自分も全力を出して取り組めることが楽しいので。今後は、新しく参加するスタッフのサポートやフォローにも少しずつ関われたらなと思っています。 ”

仕事のキャリア。仕事以外のキャリア。どのような人生を歩んでいくのかは自分次第。

物腰が柔らかな中にも、「後悔しないように生きたい」と、力強く話す後藤さんの言葉が印象に残った今回のインタビュー。

経営の神様と言われているP・Fドラッカーは、著書の中で「パラレルキャリア」の重要性を提唱している。本業を持ちつつ、別の仕事や非営利活動に参加し、第二、第三のキャリアを築くことは、個人だけでなく勤める企業や社会全体の成長にもつながる。

働き方改革が推進される中、新しいキャリアの在り方が模索されている。後藤さんのようなキャリアを積み重ねる社会人が少しずつ増えていったら、いつか社会に大きな変化を生み出すのかもしれない。

ウェブマガジン「ひみつ基地」編集部

参加者募集:子どもの遊びと学びを支える教育ボランティア

NPO法人夢職人は、首都圏を中心に、子どもを対象とした自然体験・野外活動、スポーツ・レクリエーション活動、文化・芸術活動などの多彩な体験活動プログラムを企画・運営しています。大学生・若手社会人(29歳まで)の教育ボランティアを募集しています。多くの大学生や若手社会人が週末や長期休みに教育活動に取り組んでいます。

子どもの遊びと学びを支える教育ボランティアの詳細

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