ひみつ基地

2018年7月号 vol.65

スウェーデンのNPOが教える「いじめ」を撲滅する方法とは?(後編)~生徒や保護者、学校の教員、それぞれの立場からできること

2018年07月13日 20:17 by tppay

いじめは日本だけの問題でなく、しばし「幸せな国」として名高いここ北欧の国、スウェーデンでも起きています。いじめ防止に取り組むスウェーデンの非営利団体「Friends」の統計によると、スウェーデンでは毎年6万人もの子ども・若者がいじめの被害にあっているということです。スウェーデンでは、国が定めた法律の中で、子どもたちが受ける差別的な行為や嫌がらせに対して、どのように対処していくかを各学校で計画を立てることが義務付けられています。Friendsは、その計画作りのサポートをしているNPOです。

今回は、2回に渡って、スウェーデンの非営利団体「Friends」の取り組みを紹介し、いじめの問題の解決策を考えます。

後編では、「Friends」のいじめを無くす具体的な方法を紹介します。Friendsのホームページに掲載されている「いじめ撲滅のためにあなたができること」を翻訳したので、この場を借りてその方法を紹介します。生徒、保護者、学校の教員、それぞれの立場からできることを簡潔にまとめています。それではどうぞ。

<以下、Friends Programのホームページの意訳>

あなたが生徒なら

子どもには、いじめを解決する責任はありません。それはいつも大人にあります。しかし若いあなたは、大人よりもクラスや遊び場で起きていることに気づくことが多いはずです。大人は誰かが、傷ついていないのかを知るのに助けが必要なのです。いうならば、独りぼっちの子がいたら、最初に気づくのは同じ年齢のあなただということです。

「まずは心配してあげてください」

いじめの犠牲になっているであろう、その子をまっすぐ見つめてください。そして声を「こんにちは」と挨拶をして、微笑み、隣に座ってあげてください。一緒にお昼ご 飯を食べ、休み時間に何をして遊ぶかを聞いて、今日の宿題は何か一緒に確認してみてください。何か話したいことがあるか、耳を傾けてみてください。ほんの些細なことが大きな意味を持ち、それだけで人は嬉しくなるのです。

「いい空気をつくろう」

いじめを起こさないために大事なのは、グループでいるときの雰囲気です。教室、放課後の活動をしにいくのは楽しみですか?他のことも同じように楽しみですか?悪口、 わるふざけ、いじりが頻繁に起きるグループですか?もしそうなら、何か手を打つ必要があります。大人にどういう状況なのかを話し、風通しのいいグループにするようにしましょう。

「ダメと言う」

ダメなことだと伝える方法はいろいろあります。誰かが意地悪な態度をしたら、「ダメだよ」と言うことで、自分はいじめに加担しないということを表明することができます。もしいじめに賛成しないことを示すことができたら、あなたは他の人のロールモデルであり、いい友達なのです。そのためには大人に相談をするといいです。それは「チクり(告げ口)」などではありません。いじめは法律違反だからです。その子がいじめられている状況を作っているのも、いじめをするグループに賛成しているのも、あなたなのです。

「最も大事なことは、あなたが何か行動を起こすこと」

声を上げるかどうかは、誰と一緒にいるかや、何が起きているかなどの状況により異なります。もし誰かが悪口をいっているだけなら、あなた一人でも勇気をもって止めることはできるかもしれません。しかし、もし誰かが殴られたり蹴られたりしていたら、大人を呼ぶほうがいいでしょう。最も大事なことは、何か行動を起こすことです。いじめが外部からの仲介なしに自然になくなることはほぼありえません。もし何かをすれば、あなたはその人の人生を変えることになります。

いじめを見過ごしてみて見ぬふりをするといい気持ちがしない、ということを忘れないでください。今すぐ大人に話してください。

保護者ができること

学校、保育園、保護者は、子どもと若者が最良な環境において学び、成長するために、共同の責任を負います。すべての生徒は、大人やその他の生徒と安全に過ごす権利があります。いじめや、その他の暴力的なふるまいは毎年平均でクラスに少なくとも一人が被害をうけています。

大人は、いじめや、いやがらせの撲滅には絶対的な責任を持ちます。それゆえに 保護者と職員は、互いに信頼し合って日頃からコミュニケーションをしないといけません。そうすることで問題を解消し、子どもが傷つくリスクを削減することにつながります。保護者が、保育園、学校、そして家庭との良好な関係を築くためにできることは多くあります。以下はその中のいくつかの具体例です。

「良いロールモデルとなる」

「良いロールモデルになる」ことなど当たり前のように聞こえますが、私たち大人は、自分自自身を客観的に見ることをつい忘れてしまいます。学校や保育園について 「どのように」話しているか忘れがちです。もし私たち大人が、互いに尊重し合ってふるまえば、子どもたちの良いロールモデルになることができるでしょう。 自分が、子どもの学校、クラス、保育園との建設的な関係性を築くためにできることを考えてみてください。

「学校、保育園について子どもと話してみる」

子どもと学校、保育園、友達関係などついて、良かったことや嫌なことの両方について話し合ってみてください。しかし、建設的であるようにしてください。具体例からはじめ、学校や教員、その他の保護者を軽蔑する発言を控えてください。大人が、子どもの学校生活に興味を示したら、子どもは身近で起きたことについて今まで以上に話してくれるようになるでしょう。学校や保育園で起きていることを日頃から気にかけていれば、あなたも今以上に子どもの小さな変化に気づくようになるでしょう。

「学校、保育園と家庭との連携を良くする」

子どもと若者ができるだけ住んでいる地域で心地よく感じることができるようにするために、大人がどのように連携すればいいか考えてみてください。具体的には何ができそうですか?学校との建設的な対話の場はどのようにあるべきですか?学校が保護者に期待することは何であるか認識していますか?学校と共有している価値観は何で、どうしたらそれを子どもたちに伝えることができますか?学校と家庭が一緒になれば、それぞれの強みを発揮して良好な環境を築くことができます。忘れないでほしいのは、すべては子どもの安全のためです。

「学校でいじめ対策、平等な価値観の啓発がどのようにおこなわれているかを知る」

学校、クラス、子どものグループがどのようにして安全で良好な環境を作り出しているか知っていますか?保護者としていじめ対策に関わっていますか?子どもが危険な目にあったときに、誰に連絡をとればいいか知っていますか?

学校の教員ができること

各学校には、それぞれの学校のニーズと、それに対してできることに限界があります。どこにも通じる普遍的な方法などはないので、最初の一歩は、アンケート調査などを通じて正確に学校で起きている状況を把握することにあります。

「まずは学校の現実の把握から」

まずはマッピングによる問題の可視化をします。マッピングは、職員と生徒の実際の体験から始めます。職員と生徒へのアンケート調査、会話、観察、そして文書の分析などの様々な方法でマッピングをすることができます。そして職員、教員のキャパシティも把握しておくことも重要です。いじめの状況を正確に把握することなしに、手段を打つことは不可能だからです。

「すべての人をまきこむ」

大前提として学校に関わるすべての大人は学校内外にかかわらず、平等、差別禁止、民主主義など学校の基本的な価値観を共有しておくことが求められます。これらの価値をなんとなく意識するのではなく、常日頃から意識できている状態でないといけません。これを「システム化」することによって、常に意識できるようにしなければなりません。

「専門家なのは生徒自身」

学校を安全に保つこれらの活動に、生徒自身に関わってもらうことが必須要件です。生徒は、学校の対策の計画段階、実施、評価のすべての過程において参加していることが不可欠です。そうすることで、その取り組みは地に足のついたものとなり、結果的に効率よく、効果的にできるようになります。なぜなら、いじめは子どもたちの日常生活で起きているからです。学校では子ども・若者自身が専門家ということです。

「合意形成をする」

すべての職員は、暴力へとつながる臨界点がどこにあり、もしそれが起きた時に何をすべきなのかを知っていないといけません。また、保護者も同様です。生徒も職員も、学校が大事にしている価値が破られた時がどういう時か、そしてどのように反応すればいいのかという合意形成をしておくことが重要です。保護者に関わってもらう方法の一つに、保護者会で、侮辱的な言動などについて議論し、学校や家庭でこのような問題について話し合うためのガイドラインを作成するという方法も一つの手です。

「明確な制度設計」

いじめは、長期的な視点で透明性の高い体制を整備して対処する必要があります。誰が何に責任をもって対応し、誰が何のスキルを持っているかということを明らかにして、打つべき手立てを明確にしておく必要があります。

<以上、Friends Programのホームページの意訳>

いじめが起きる構造を知ることが重要

小学生の頃に私もいじめに、ある時は加担し、ある時はいじめられたことがありました。その時は、本当にどうして良いかわからず、自然になくなると思っていました。

「あなた自身の社会」(スウェーデンの中学校の教科書)にも書いてありますが、「権威的なグループ」があると、規則を守らない人はグループから外されて、仲間はずれの対象となり「制裁」を受けることになります。そして、それを恐れてますますそのグループ内で「プレッシャー」が高まり、「手下」はいじめを恐れてますますルールに従うようになるということです。誰もが、次の矛先が自分に向くことを恐れるからです。そりゃ、誰だって嫌です。だからこそ、外部の仲介が必要ということです。

私は、最初はいじめられていた方で、小さな3人のグループにいましたが、そのうち大きな「権威的なグループ」から「ボス」の扱いが嫌で、一人また一人ぼくらのグループに入ってくる人が出てきたのです。そして、最終的には、そのボスを中心とするグループが少数派となってしまったのです。それでいじめの仕返しなどはしませんでしたが、こういうことが何度もある中で、対象になりたくないという恐怖から、黙って見過ごさざるをえないようなこともありました。そして、これは多くの人が経験してきたことではないでしょうか?

今思えば、このようないじめが起きる自然な構造というのを、その時に知りたかったように思います。そうすれ僕も、僕だけではなく多くの人を救うために勇気を出すことができたのかもしれません。

いじめ根絶を願って。

>>前編:当事者がいじめ対策の計画を作り、PDCAサイクルをまわす!

元の記事:スウェーデンの「いじめをなくす方法」をもっと早く知りたかった。

両角達平(スウェーデンの若者政策専門家)

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