ひみつ基地

2018年8月号 vol.66

自閉症の子どもを保護者と共に療育で支える(後編)~一人ひとりの子どもに合った療育をオーダーメイドで実践

2018年12月13日 18:14 by editorial_desk

自閉症の子どもへの療育支援を行っている「NPO法人ADDS」。“保護者を一番の専門家に”というモットーのもと、家庭で療育を行うためのサポートをするプログラムを中心に、事業を運営している。

そんなADDSに勤務している、一人の男性がいる。彼の名前は加藤孝央さん。荻窪事業所の責任者を務めている。“NPO”という非営利の組織で、かつ女性が多い業界で加藤さんが働く理由とは-。前編(発達障害の子どもの支援に関する専門性を高めたい)に引き続き、インタビューを通して、そのルーツを探っていった。


支援の限界?それでも、できることをやり続ける

ADDSに入社してから4年と2か月が経過した。加藤さんの仕事は、多岐に渡る。入社当初から行っている療育支援に加えて、保護者さんや学生を対象とした研修の企画や運営、広報担当としての日常的な情報発信、施設管理責任者としての施設管理の業務など。

研修業務の中で、ADDSに通っている保護者さんが月に1回任意で参加する「集合研修」というプログラムがある。講義形式で療育の知識の補足をしたり、保護者さんが家庭で実践している療育を、実際にやって見せてもらい、互いにフィードバックし合う。

その中で、“先輩ママ”と呼ばれる、療育プログラムを終えた保護者さんに来てもらい、自身の体験を踏まえて話をしてもらう時間がある。診断を受けてからの出来事、子どもの変化、家庭での支援の分担など、当事者のリアルな話を聞くことが目的だ。

ある先輩ママに、来てもらったときの出来事。体験談を話してもらい、最後に一言を伝える場面で、その先輩ママは涙を見せたという。その方は、通所している間はとても前向きに気丈にふるまっていた。子どもも、通所し始めてから1年間で目覚ましい成長を遂げていた。それでもこんなに苦しさを抱えていたなんて-。

加藤さんはその姿を見て、とても考えさせられたという。「子どもが変化している」という事実があっても、その保護者さんにしかわからない、悩みや苦しみがある。気丈にふるまうその裏側で、泣きたい気持ちを抱えているのかもしれない。

“支援の限界”

そんな言葉が頭に浮かんだが、それでも今できることをやり続けるしかない。

ADDSで大事にしていることは、家庭での支援を継続してもらうこと。通所している1年間の間で、保護者さんに子どもの好きなこと、嫌いなこと、得意なこと、苦手なことを理解してもらい、その子に合った療育の方法を見つけること。正に“子どもの専門家”となり、プログラム終了後も、家庭で療育を実践し、必要があれば専門機関につながっていけるように。

他の子とつい比べてしまう気持ちも受け止めつつも、保護者さんには「その子として」できるようになっていることに目を向けられるようになってほしい。そう加藤さんは話していた。

一つの“チーム”として子どもの成長を支える

様々な業務を担当し、多忙な毎日を送っている加藤さんだが、その表情はとても明るい。

「人を楽しませてなんぼだと思うんですよね」

子どもの良いところ、出来るようになったことをほめていく。ADDSの療育は、いかに子どもたちを「楽しい」という気持ちにさせるかどうかがキーだ。そのためには、大人も楽しみながら子どもたちと関わる必要がある。ADDSの職場では、「スタッフも楽しく働こう!」という雰囲気を大切にしている。

加藤さん自身は、入社したばかりの頃、子どもたちのことを上手くほめられなかった。療育に使うおもちゃを取り出す時に、手が震えることもあったという。それでも継続して現場を担当する中で、子どもたちの楽しい時間を作ることができるようになってきた。

「保護者さんと共に、子どもを支援していくことによって得られるチーム感」

それが今の仕事のやりがい。療育機関の先生だけが頑張るのではない、保護者だけが頑張るのも違う。両者が協力・連携して、一つの“チーム”として子どもの成長を支えていくこと。

ある一定期間の間に、子どもも保護者もポジティブに変化していく姿を見ることができる。“笑顔”が少しずつ増えていく。それが何とも嬉しく、明るい気持ちになる。

ADDSでは、お子さんによって療育の課題を変えている。つまりはオーダーメイドで、その子に一番合った療育の方法を実践している。「ターゲットとなる行動を教えるルートは無数にある、今後の目標として、
どんな子どもに対しても最善の方法を選べるようなスキルを身に着けていきたい」と加藤さんは話していた。


(子どもに合わせた療育ができるように、多種多様なおもちゃが用意されている)

“NPO”で働くということ

ADDS全体としては、現在実施している療育のプログラムを、外部の機関にも提供していくことを検討している。公的な教育センターや民間の事業所などにプログラムを広め、より多くの子どもや保護者に、適切な療育を届けていくことを目指す。そのための調査研究にも力を入れている。

組織を大きくすることを目指すのではなく、価値あるものを広げていくこと、課題を解決していくこと。まさに“NPO”の使命達成に向けて突き進んでいると感じられた。

「NPOで生きるって何だろう?」

そんなことをよく考えた。株式会社であれば、このまま勤続していけば「係長」「部長」という役職に就く選択肢もあるかもしれないが、ここでは役職に関する明確なビジョンは見えない。整えられていない部分、これから整えていく必要がある部分も多い。しかし、非営利の現場で働く中で、少しずつ“社会を変えたい”という気持ちが芽生えてきたという。

日々のルーティーンワークも重要。しかしそれだけではなく、「社会に働きかける“何か”は生み出し続けるというスタンスで働いていきたい」と加藤さんは話していた。

“チーム”で子どもの成長を支えていく。

ADDSでの加藤さんの挑戦は、これからも続いていく。

>>前編:発達障害の子どもの支援に関する専門性を高めたい

職種 ABA(応用行動分析学)セラピスト・指導員
雇用形態 正職員・雇用期間の定めなし
※非常勤での採用も行っています。
※事務員(非常勤)、看護師(常勤・非常勤)の採用も行っています。
給与 月給200,000円~
スキルや資格(臨床心理士、保育士等)に応じて相談
前年度賞与支払い実績あり
福利厚生 ・健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険
・通勤交通費支給
・技術研修・実務研修制度あり
業務内容 1.児童発達支援事業所にて、自閉症スペクトラムのお子さんに対してABAに基づく支援を行う
2.指導員育成研修の講師や補佐、マネジメント、事務を行う
3.シンポジウム、セミナー補佐を行う
4.組織運営に必要な各種事務作業を行う
指導員としての業務を基本としつつも、多岐に渡る業務を担ってもらう予定です。

入社後1ヶ月のイメージ:スーパーバイザーのもとで個別支援の指導員として勤務してもらいます。

自閉症のお子さんの早期療育の高度な専門知識やスキルを獲得することが出来ます。まだ成長期の企業なので、新規事業の立ち上げなど、希望があれば様々な業務にチャレンジできます。
期待する成果 事業の安定的かつ効率的な運営の確立をスタートとし、再現可能なモデルの形成と展開を担っていただく事を期待しています。
勤務地 東京都新宿区、杉並区等
※詳細は面談等で相談させてください。
勤務時間 09:30~18:30
休日休暇 完全週休2日制 
※祝日、年末年始(12月29日~1月3日)はお休みです。年間休日120日前後。
応募資格 特にありませんが、短大や大学で心理学や福祉、保育等を学んだ方を歓迎します。経験の有無は問いません。初心者、経験者ともにはじめに研修を受けていただきます。
求める人材像 ・素直で誠実な方
・社会と組織の成長を一緒に喜べる方
・社内外とのコミュニケーションを取れる方
・子供たちの成長を一緒に喜べる方
・スーパーバイザーや親御さんとチームの一員としてコミュニケーションをとりながら仕事ができる人
・これまでの経験を活かしつつも、新しい仕事に前向きに取り組むことができる方
・ただ受け身で学ぶのではなく、様々な場から学びを得られる、または得ようとする方
採用予定数 数名(即時もしくはH31年4月入職希望の方)
選考プロセス 1.書類選考
2.面接(代表者)
3.必要に応じて実技試験を実施します


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