Eduwell Journal

2018年9月号 vol.67

もっと話そう、ちゃんと学ぼう「これからの性教育プロジェクト」(後編)-子どもや若者を被害者にも加害者にもしないための性教育

2020年05月28日 11:41 by eduwell_journal

7月12日に日本財団ビルで、「これからの性教育プロジェクト」の第一回目となるイベントが開催されました。「これからの性教育プロジェクト」は、日本の子ども・若者たちに「性の健康と権利」としての包括的性教育を豊かに保障することを目指すプロジェクトです。今回のイベントには、子育て世・保護者、国会議員、地方議員、教育・福祉・医療関係者など、約150名が集まりました。先駆的な取り組みを行っている4名の有識者が活動を報告し、日本の性教育の抱える課題について述べました。

前編(体の仕組みを学ぶだけではない、ライフスキルとしての性教育)に引き続き、後編では、NPO法人「ピルコン」の染矢明日香氏、「#なんでないのプロジェクト」の福田和子氏の報告をお伝えします。

中高生の性を取り巻く環境、親はどう向き合えばいい?(NPO法人「ピルコン」の染矢明日香氏)

NPO法人ピルコンは、若者を中心とする性と健康を学ぶ場づくりを行う非営利組織です。2007年に学生団体からスタートしました。主に、中高生を対象に、性とライフプランニングとの知識を大学生・若手社会人が身近な立場から伝える出張講演の事業を行っています。これまでにのべ100回以上実施し、約1万5千人が参加しました。

日本の若者は、自分を守る情報として、性に関する知識が足りていません。以前よりも学校で教えてもらえる割合も増えてきてはいますが、性に関する情報は、インターネット・友人が主な情報源となっています。私たちの団体の調査では、93%の回答者が中学生以下の年齢(15歳未満)で「性交」「セックス」という言葉を知っていました。さらに、若者の回答者に限定すると、96%が中学生以下で知り、そのうち65%は12歳未満となっていて、ネガティブな印象も多くなっています。同じく私たちの団体の調査では、高校生への避妊や性感染症などの性知識の正答率は平均で約3割となっており、性や避妊に関する正しい知識をしらないまま、性行為をしている人が多い状況です。大人として、社会として、このまま放置していて良いのでしょうか?

まず大人が性に関する正しい知識を学び、家庭や学校で性を語り、表現する言葉が使えることが重要です。家庭で性について話しやすい雰囲気や信頼関係はありますか?抑圧的な言い方や、価値観の押し付けではなく、一緒に考える双方向的な会話のやりとりが重要です。子どもは、家庭に「居場所がある」「自分らしさや考えが尊重されている」と感じられているのでしょうか?自尊心の低さや家族の不和が性的リスクや依存・支配的関係につながりやすいということもわかっています。

2007年の内閣府の調査によれば、家庭で性教育を行っている割合は23%でした。すべての子どもに性の学習機会が保障されるためには学校の役割が極めて重要と性教育の国際指針でも示されています。学校と家庭が連携して地域単位で性の学習機会を作っていくことが大切です。子どもたちの「学ぶ力」「考える力」を信じましょう。

ピルコンの調査結果の詳細

若者が考える、いま私たちに必要なチカラと性教育(「#なんでないのプロジェクト」の福田和子氏)

スウェーデンに留学した際に、みんなが当たり前のように性に関する最低限の知識を持っている状況を目の当たりにし、あまりに性の健康を守るための環境が整っていない日本の現状に気がつきました。性の健康を若者も当たり前に守れる社会を目指して、「#なんでないのプロジェクト」をスタートさせ、主にアドボカシー活動に取り組んでいます。

若者の性交経験率は年々下がってきていますが、性感染症(クラミジア)の割合は高い状況です。中には発症しない割合も高く、発症しなくても菌は持ち続けて、知らずに移してしまうこともあります。また、強姦、強制わいせつの被害も、10代でさえ他人事にはできない状況です。性的な画像、写真をもとめられて、それがその後どう使われ得るかもよく分からないまま送ってしまうこともあります。いたずらから大きなトラブルに発展することもあります。モデルの仕事という勧誘から、性的なサービスにつながっていくこともあります。

若者が自分を守るための環境は、どれだけ整っているのでしょうか?重大なことが起こってから初めて性について考える現状はおかしいのではないでしょうか?日本では、性に関して頼れる知識を得られるYouth friendly(若者向け)な場所が少なく、避妊をはじめ、性の健康について主体的に考える機会が非常に限られています。インターネットのすべての情報が怖い、間違っていると言われがちですが、若者にとっては、それでも情報を得られる重要な手段でもあります。Youth friendlyな形で正しい知識や情報が得られるサイトは、海外の方が充実しています。

ユネスコの国際セクシャリティ教育ガイダンスによれば、リスクやトラブルの回避・対処を可能にするために、

・自分が嫌と思うこと、良いと思うことに気がつき、人に伝えるチカラ
・ジェンダーの不平等やチカラの差とその影響力に気づくチカラ
・他者の思いも尊重するチカラ
・罪悪感や恥の意識を抱くことなく頼れる大人・施設は誰かを知る、アクセスの仕方を知る、困りごとを伝えるチカラ

が身につけるべきチカラが具体的に明記されています。

性に関わることも助けを求めていい、困ったら誰かに相談していい、その権利があると知ることがとても大切です。性に関わることでも、健康・幸せ・権利の話以外のなにものでもなく、実現を考えること、声をあげることはとっても普通のことです。「自分を大切にしなさい」と言うだけではなく、自分を大切にするには、そのための情報や、頼れる施設、頼れる大人につながれるようにすることが重要です。これらのチカラは、個別に教えられるべきものではなく、全ての人が生涯を通じて、自身の性と上手に向き合い・付き合い、被害者にも加害者にもならないために必要だと思います。

>>前編:体の仕組みを学ぶだけではない、ライフスキルとしての性教育

● 「性教育」に関連する記事一覧

Author:Eduwell Journal 編集部
本記事の執筆は、山田友紀子が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。「Eduwell」は、本メディアがテーマとしてきたEducation(教育)、welfare(福祉)、well-being(ウェルビーイング)の3つの言葉をつなぎ合わせて作られた造語です。本メディアは、子どもや若者を対象とした社会教育事業に取り組んでいる認定NPO法人「夢職人」が発行しています。

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