ひみつ基地

2019年1月号 vol.71

幼稚園から高校までプログラミング教育を行うカナダ(中編)-1,000社以上の企業が協力して次世代のSTEM教育に貢献

2019年09月12日 13:13 by miwa_csuka

21世紀に向けて、AI(人口知能)、IT、ビックデータ、ロボテイックス、サイエンスといった最先端技術の研究開発は目覚ましい発展を遂げています。そういった技術の進化に伴い、21世紀を生きる人達は最先端技術の時代を勝ち抜いていかなくてはなりません。国際的にも、どのようにそういった人材を育成していくのがいいのか様々な取り組みが始まりました。

カナダでは、2016年より義務教育での取り組みが始まり、最先端技術を開発、研究、分析できるトップ人材の育成、並びにそういった技術を指導したり、チームをまとめたりできるリーダーシップ力の強化、並びにチームで連携しながらプロジェクトをやり抜く協調性や勤勉性といった人間的な資質の強化も大切と考えています。

カナダでは、サイエンス、テクノロジー、エンジニア、そして、数学の分野における実践的な教育をSTEM教育と呼んでいます。昨今、教育者、技術者、文科省、企業が連携しながら大変参考になる実践的な取り組みを行っています。今回はカナダの中学、高校でのSTEM教育のカリキュラムについての具体的に説明したいと思います。


(Abbotsford district)

多数の企業や専門家がSTEM教育を後押し

カナダでは基本的に教育方針は国家が出しますが、具体的な取り組みを管理するのは各州政府にある文科省の役割となります。ほとんどの中学、高校でSTEM教育が盛んに行われています。カナダの高校は日本の大学のように、必須科目と選択科目があり、より一人一人のニーズや才能に合わせた教育を実戦していくという理念のもと、大変多くのコースが開講されています。

私が住んでいるBC州では、Digi BC (The Digital Media Association of BC) と呼ばれるバンクーバーをベースに、1,150社以上の企業が協力して次世代のSTEM教育に貢献しています。企業の中には、マイクロソフトやソニーイメージも含まれ、16,500人以上の専門家が協力しています。コースの数は膨大なのですが、具体的な義務教育のカリキュラムについていくつかご紹介します。

Computer Programming

コンピュータープログラミングの授業も実践演習を豊富に取り入れ、ゲームデザインや、JAVA、 C++、 BASIC、Pythonといったプログラミング言語を学びます。簡単なゲームを実際に制作したり、データ構築、ロジカルシンキング、グラフィックの活用など実際に企業で使うスキルを高校生で学びます。

Information and Communication Technology

現代社会では、インターネットで情報を発信、人々のコミュニケーションのツールとしてもITは欠かせない役割を担っています。生徒はこのクラスで効果的な画像や映像の使い方、マルチメデイアを使った情報発信、動画の制作方法など学びます。上級レベルになってくると実際にウエブサイトを構築したり、3Dのモデルをデザインしたり、アニメショーン、写真や映像の加工技術を習得していきます。

Information Technology Management

コンピューターのハードウエア、ソフトウエアーについて最初は基礎的な知識を学びながら、最終的にはCisco Systemsの最先端の技術についても学びます。コンピューターの中身や、コンピューターを分解、再構築したり、OSを入れたり、問題が起こった時にどのような解析ツールを用いて解決していくのが効果的か学びます。さらに、ラップトップ、デスクトップ、Wifi、セキュリテイや安全性について、そして環境保全や、コミュニケーション・スキルの大切さも学びます。

The Cisco CCNA Discovery(コクイットラム教育委員会)

高校1年生から3年生までが受講でき、家でのコンピューターのセットアップから実際に企業に勤めた時にどうやってネットワークを構築するのかを学ぶことができます。実際のコンピュータースキルはもちろんですが、問題が起こった時にどうやって解決するか、そして高校3年生になると実際にネットワークの修理、実際のプロジェクトをやりながら企業に入社した後に必要となるチームワークスキルや、中小企業から、大企業のネットワークの構築の仕方など本番を想定して学びます。

Math(数学)

カナダの数学教育は、基礎学習から上は理系大学に進む生徒のための微分、積分、代数幾何といった内容のコースが開講されています。国際バカロレアのプログラムもほとんどの教育委員会で義務教育の一部として就学出来ますし、大学の単位になるAPと呼ばれる単位も取得することができます。数学が必要でない文系にいくような学生さんには実際の生活で役立つような家計簿のつけ方といった内容の数学のクラスもあります。それぞれの進路に合わせて決まります。

Electronics(電気工学)

電気の配線や、DC、AC, Analogについて実戦を通じて学習します。工具の扱いや配線図の書き方や読み方、実際の工事現場での仕事の仕方も合わせて学ぶことができます。高校を卒業する頃には電気工事士の資格にも挑戦することが出来ます。


(Abbotsford district)

Robotics

大会に参加できるようなロボットをデザイン、構築、プログラミングする方法を学びます。センサーを上手く配置し、障害を自動的に回避し、左右上下に自由に動くようなロボットを作ります。またその過程でチームワークや、コミュニケーションスキルも習得します。上級レベルになるとコーデイング自体も最先端のRobot-C言語を学びます。


(Abbotsford district)

Drafting&Animation

2Dと3Dの設計やデザインを学びます。設計ではソフトはAutoCad, Inventor, SketchUpなど実際の建築設計や機械工学でも使われるスキルを学びます。


(Abbotsford district)

Engineering

将来、エンジニアを目指している学生は受講をおすすめします。原材料、動力の伝達、構造の特性、コーデイング、コンピューター制御、センサーなど、実際の航空力学、自動車の開発などの実例を参考にしながら学びます。3Dプリンターも取り入れながら実際に自分が設計して、3Dのモデルを作ったりする工程自体、実際に将来エンジニアになった時に使うスキルを身につけることができます。


(Abbotsford district)

Science (生物、化学、物理、宇宙科学)

中学では基礎を学び、高校から本格的に深く学んでいきます。教科書だけの勉強だけでなく、理科の実験室も新しく建てられた多くの校舎では最新の実験機材が揃えられてあり、血液検査や解剖、物理や化学も大学でやるような最先端の実験や研究がすべてできるような環境が整えられています。また地球の温暖化や恐竜の歴史についても“なぜ”という問いを多くクラスで用い、学生が社会問題と科学の進歩についての知識を自分で考えながら深められるような内容になっています。

次回は、どうやったら生きた実りあるSTEM教育になるのか、カナダの人間味溢れる高校の先生の取り組みを紹介しながらお話したいと思います。

>>前編:国全体でSTEM教育を推進し、新しいカリキュラムを導入
>>後編:社会とのつながりの中で活きたSTEM教育を行う

美和チュッカWestcoast International Education Consulting 代表)

● 本記事を書いた記者の記事一覧



本物のカナダの教育を実際に見に行きませんか?


(写真提供:カナダBC州サレー市教育委員会)

ウエストコーストは、「国際教育を通じて、将来的に国際的な視野を持ち、日本の地域社会の発展に貢献できる温かい心を持った日本人の育成」をミッションとして、日本とカナダの教育の架け橋になれるよう、カナダ留学に興味をお持ちの方のサポートとともに、日本の教育機関や教育者とカナダの教育機関・教育者との交流を推進しています。

◆カナダ教育機関との提携に興味をお持ちの教育関係者様へ
カナダの州立教育機関(大学や高校など)は、世界全体とカナダ自身の国際教育の発展に貢献するという観点から、他の国の教育者、教育機関との交流を積極的に行っており、日本の教育機関や教育者との連携にも強い関心を持っています。高校間や大学間の交換留学プログラム作りや日本の高校とカナダの州立カレッジの進学面の連携などにご興味をお持ちの学校関係者様がいらっしゃいましたら、カナダ州立教育機関とお繋ぎすることができますので、ぜひ、お問い合わせください。

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