ひみつ基地

2019年2月号 vol.72

子どもの好奇心に寄り添う「プレーリーダー」という仕事(後編)-「子ども」と「やりたいこと」をつなげるハブになる

2019年09月12日 13:03 by editorial_desk

子どもの遊びゴコロに火をつけ、のびのびと遊ぶために必要なサポートを担う「プレーリーダー」として、「NPO法人あそびっこネットワーク」(以下あそびっこ)で勤務している、寺元章恵さん。

兵庫県の出身で、前職は学童保育指導員。子どもたちからは「あきちゃ」と呼ばれている。

前編(子どもが自分で答えを見つけるための「余白」)では、寺元さんがプレーリーダーという仕事を始めるまでの経緯や、子どもと関わる時に大事にしている姿勢や想いについて触れた。

後編では、寺元さんが思うプレーリーダーのスタンス、そして今後目指していきたいと思っていることについて、お話を伺っていった。

学童の先生ではなく、「プレーリーダー」として

「学童ではない現場を見たい」

そんな想いで転職をしたはずだった。しかし、週に数日関わる「あそび~む」は学童保育。一見すると、前職と同じだ。しかし、中身は全く違うという。

場所は学童であることは変わりないのだが、学童の先生ではなく、プレーリーダーとして、“プレーワーク”を実践している。子どもたちが「やりたいと思うことをやれること」を大事にしている。70人をまとめて見ていた前の学童とは、頭の使い方も関わり方も違ってくる。

学童は遊びに加えて、生活をする場所でもある。手を洗ったり、うがいをしたり、掃除をしたり、おやつを食べたり…それらの生活の流れも「~時になったからやりましょう」とは言わず、子どもが自ら考えて動き出せるように、働きかけている。

「子どもの『やりたい』という気持ちを大事にしながら関わり、過ごすことは『あそび~む』でしかできないわけではないと思うんです。学童は室内だからとか、遊びだけじゃなくて生活の流れもあるから、とかではなく、どんな現場でも大人の関わり次第で子どもの姿は変わってくる。こういった関わりを広げていけたらいいなあ…」

日々を積み重ねることで見えてくる、子どもの変化

学童に来ている、ある小学1年生の女の子がいた。その子は見通しが持てないことや、やったことがないことに対して不安を感じやすい子だった。失敗することが怖い、と感じているようだった。

そう思っているその子の心情を察し、遊びに入らずじっと見ている時も「一緒にやろう」とは誘わなかった。ただひたすら、待つことを続けてみた。その子自身の中で腹落ちするまではたぶん動かないだろう、ということがわかっていたから。

腹落ちしてやってみた結果、嫌なこと、怖いことが起こることもある。その時も、「嫌だったね、怖かったね」とその子の気持ちに寄り添い、認め続けた。

友達とケンカをして、泣いてしまった時は、その子がどうしたいのかな?を感じ取るようにした。その時は、悔しくて、悲しくて、涙が出る、だから、泣きを吐き出す場所がほしい、と思っているように感じた。解決を望んでいるわけではなく、ただ泣いて発散がしたいと。

それを感じ取ったから、何も言わず、何も聞かず、ただ一緒に座って寄り添った。「泣いて発散したい」と、その子が決めたこと以上の関わりは余計だと感じたから。一定時間ワーッと泣いた後は、何かを消化したような表情になっていた。

今のその子にとってベストだと思う関わり方。それを大事にしながら接することで、最近は気持ちの変化が生まれてきているように感じる。「失敗したらどうしよう」というこだわりが少し和らぎ、見通したことと違うことが起きても「まあいっか」と思えるようになってきている。


(プレーパークで子どもたちと関わる寺元さん)

自分で決めて行動することが、子どもの力を伸ばす

プレーパークには、子どもが「やりたい!」と思うことを実際に「やってみよう!」という雰囲気がある。やってみたいという子どもの気持ちを、一番に考えながら、日々関わっている。

ある日の遊びの場面。子どもたちは、水遊びにものすごく熱中していた。12時になり、昼食の時間になったが、子どもたちが遊びをやめる気配はない。声をかけて遊びを切り上げるかどうか迷った。しかし、何も言わずに遊びを見守り続けた。

しばらくすると、子どもたちは「お腹すいた~!そろそろごはん食べたいね」と、遊び道具を片付け、テーブルの上をきれいにし、椅子を準備し、他の友達を呼び、「いただきます!」と食べ始めた。その動きの素早さと連携プレーのスムーズさは、目を見張るほど。

きっと「遊びきった!」と感じたタイミングだったのだろう。子どもの顔はとてもすっきりして、満足そうだった。

約束やルールに縛られず、自分で考えて、自分の行動を決めていく。その姿を、プレーリーダーは見守る。一つひとつは小さな出来事かもしれないが、「これでいいんだ」と自分を肯定する気持ちが積み重なり、子どもたちの自信は育まれていくということがわかってきた。

(誰でも無料であそべる地域のあそび場「光が丘プレーパーク」の様子)

プレーリーダーとは“ハブ”になること

「『子ども』と『やりたいこと』をつなげることが、自分の役割だと思っています。」

目の前にいる子どもが、何かやりたい、実現したい、乗り越えたいと思っている時に、そこに向かえるようにつないでいくことが、寺元さんのプレーリーダーとしてのスタンスである。

一見「橋渡し」のように思えるが、少し違う。その子、その場所、その時次第で、「橋」をかけるのか、蜃気楼くらいに留めるのか、変わってくる。

「嫌なことがあって泣いている子がいたとしたら、私はその子が次に向かうまでの中間地点のようなイメージですね。そこで休憩して、次に向けて走り出せる水飲み場、オアシスのような。それが何か所あった方がいいのかは、子どもによっても状況によっても違います」

働きかける対象は、子どもとは限らない。例えば、「泥まみれになって遊びたい!」と思っている子どもがいた時に、何らかの理由でそれが実現できていないとしたら、実現に向かえるように手助けをする。

着替えがなくて泥遊びができないのであれば、着替えを準備してもらえるように保護者へお願いする。

保護者が洗濯を億劫に感じている、または手足が汚れることに抵抗感がある時は、子どもの気持ちを代弁し、どれだけその遊びをやりたがっているのか、子どもの成長における遊びの必要性を理解してもらえるように働きかける。

とにかく子どもが「やりたい」と思うことが実現できるようにするために、誰に、何を、どのように働きかけたらよいかを、日々考え続ける。そして、動く。

やりたいことを、やる。それは「やってもいいんだ」という感覚につながり、子どもがいろいろな物事に向かうための自信や力になる。そう信じて、現場に立ち続けている。

(誰でも無料であそべる地域のあそび場「光が丘プレーパーク」の様子)

プレーリーダーとしてのこれから

寺元さんが今後目指していることは、子どもが「やりたい!」ことをやれるように、子どもに関わる大人を増やしていくことだ。

プレーパークの中で、自分一人がプレーリーダーとして関われる子どもたちの範囲は、とても小さい。でも自分の関わり方を見て、「その関わり方いいね!」と感じて、同じように子どもと関わり始める大人が増えていけば、その半径はどんどん大きくなっていく。

お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、地域の方々やたまたま通りすがった人。そんな人たちに、プレーパーク流の子どもとの関わり方を知ってもらい、日々の暮らしに戻った時に広げてもらえたら…そんな「根っこ」になることができたらおもしろいと感じている。

そのためには、自身のプレーリーダーとしての専門性をもっと高めていくことが必要だ。その時の子どもの気持ち、願い、個性、状況を見極めて、ベストな関わりを見つけて動けるように。

最後に、プレーリーダーに向いている人はどんな人か、尋ねてみた。

「何かしらの信念や想いがある人がいいな、とは思います。子どもと同じく、大人もやりたいこと、したいことがある方が、一緒に働いていて楽しいのかなあと。あとは、子どもたちへの興味があるかどうかかな。『どうしてだろう?こうなのかな?』という、思いやりのような興味関心。それがあれば、子どもと過ごす時間はもっと楽しくなると思うので」

子どもの想いや心の動きをキャッチし、それを止めない、否定しない、実現できるように手助けをする。そのように関わってもらった子どもたちが将来大人になった時、今度はその次の世代の子どもたちに、同じような関わり方をしてくれる、かもしれない。

そんな希望を抱きながら、寺元さんは今日も明日もずっと、子どもたちと共にいる。

>>前編:子どもが自分で答えを見つけるための「余白」



【スタッフ募集:NPO法人あそびっこネットワーク・プレーリーダー】

NPO法人あそびっこネットワークでは、2019年4月から一緒に働くプレーリーダーを募集しています。プレーリーダーとは、「プレイワーク(子どもが主体性を発揮できる環境づくりに必要な知識を、体系的にまとめた専門分野)」に基づいて子どもと関わる専門スタッフです。

小学校、学童保育、保育園の先生の経験がある方をはじめ、興味関心のある方は、下記のお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。担当者より折り返し説明会などのご連絡をいたします。

職種 プレーリーダー(子どもの遊びに関わる専門職)
雇用形態 常勤スタッフ(週5日勤務)
※初年度は1年契約ですが、その後正規職員になれる方が希望です。
※週2〜4日勤務の非常勤スタッフも募集しています。
給与 【常勤】
初任給 :月収190,000円以上
マネージャー:月収300,000円以上
※ 給与額は、年齢・経験を考慮して決定します。

【非常勤】
日給:8,000円〜20,000円
※ 土日を含む、週1〜3日勤務
※ 給与額は、経験と能力を考慮して決定します。
※ 大学生・大学院生のアルバイト、他のお仕事とのダブルワークも可能
福利厚生 ・健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険
・通勤手当、資格手当、職能手当、役職手当、住宅手当、家族手当あり
・集合研修、OJT研修制度あり
業務内容 あそび場(=プレーパーク)の運営全般を担います。
・幼児~小学生までの子どもにとって魅力的な遊び環境づくり
・子どもが遊ぶために必要なサポート
・イベント実施(企画、準備、実施、必要書類の作成など)
・保育園、幼稚園、学童保育などの遠足受け入れ対応
・安全管理、緊急時対応
・保護者対応、近隣住民対応
・広報媒体への記事執筆(ブログ、FB記事、定期発行通信など)
・学校やその他地域施設との連携 など
期待する成果 ・子どもが夢中になって遊べる、安心できる場をつくること
・1人ひとりの子どもと信頼関係を築くこと 
・保護者や地域の方と一緒に、楽しいプレーパークをつくること
・現場で感じた“もっとこうしたら!”を提案し、事業に活かすこと
勤務地 プレーパーク開催時の勤務は『都立光が丘公園』内、及び練馬区内の公園で、出勤はあそびっこネットワークの事務所になります。
東京都練馬区旭町1-16-1
最寄駅:都営大江戸線光が丘駅より徒歩12分
勤務時間 週40時間
【常勤】週5日
【非常勤】週1〜3日
※『光が丘プレーパーク』は、土曜日・日曜日勤務です。
※勤務時間は、拠点により異なります。
休日休暇 【常勤】
・週休2日
・年末年始(12 月29日〜1月3日)・夏期特別休暇(5日間)あり
応募資格 <必要なこと>
・小学生の頃にたくさん外で遊んだ方
・心身ともに健康な方
・簡単なパソコン操作ができる方
・普通自動車免許

<あればより良いこと>
・Word/Excellレベルのパソコンスキル
・保育士、教員、放課後児童支援員、心理士等資格
求める人材像 ・子どもにとって遊びは大切だと思っている方
・子どもの自由な発想・意欲があふれる環境を作りたい方
・乳幼児、小学生、中学生と、幅広い年齢の子どもと関わっていきたい方
・1人ひとりの子ども・保護者に寄り添う関わりをしたい方
・スキルアップの努力を惜しまない方
・地域のコミュニティに興味がある方、好きな方
・既存のルールや制度のとらわれず、改善提案ができる方
採用予定数 2~3名(即時または31年4月入職希望の方)
選考プロセス 1.書類選考
2.現場面接
3.個別面接&適性検査
4.最終面接


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