ひみつ基地

2019年6月号 vol.76

子どもの自己肯定感を高める子育ての方法とは?(前編)~子どもが「やりたくない」とチャレンジしない理由

2019年07月18日 16:41 by editorial_desk

子育てをしている親であれば、「将来、子どもには幸せに暮らして欲しい」と願うのは当然です。では、子どもが成人する20年後には、どんな社会になり、どんな知識やスキルを身につけておけば良いのでしょうか?

学校でも語学やプログラミングなど、早くから学ばせようと新たな試みもはじまっています。挙げればキリがない話ですが、大前提として子ども自身に意欲がなければ何もなりません。近年、子どもが様々なチャレンジをしていく原動力として、注目を集めているのが「自己肯定感」です。

今回は、2019年3月に「『自己肯定感』育成入門」を出版された平岩国泰さんに、子どもの自己肯定感について伺いました。前編では、平岩さんが自己肯定感に着目したきっかけや、その重要性についてお話を頂きました。


平岩 国泰(ひらいわ くにやす)
特定非営利活動法人放課後NPOアフタースクール代表理事。1974年東京都生まれ。1996年慶應義塾大学経済学部卒業。30歳のとき、長女の誕生をきっかけに“放課後NPOアフタースクール"の活動を開始。
2011年会社を退職し、日本の子どもたちの「社会を巻き込んだ教育改革」に挑む。“アフタースクール"は活動開始以降、5万人以上の子どもが参加。グッドデザイン賞を過去に4度受賞、他各賞を受賞。2013年より文部科学省中央教育審議会専門委員。2017年より渋谷区教育委員、学校法人新渡戸文化学園理事を務める。


「やったことがないからやりたくない」の衝撃

私は、放課後の小学校施設を活用し、地域社会とともに子どもを育てる「アフタースクール」(放課後NPOアフタースクール)という、放課後の子どもたちの創造的な空間づくりを目指すNPO法人を運営しています。

子どもが、毎日の放課後を安心して自由に過ごせる場所を提供しながら、地域の方々に「市民先生」(自分の得意分野や職業にまつわる知識・技術を子どもたちに教えてくれる“放課後の先生”)になってもらい、遊びや音楽、料理、スポーツなど、500以上の多彩なプログラムで、子どもの「好き」なことや「得意」なことを伸ばしていく。そうした活動をしています。

そして、今年、子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す!「自己肯定感」育成入門という本を上梓しました。なぜ、「自己肯定感」なのか。そのきっかけになった経験があって、今回、本を書かせていただきました。

私はこのNPOの代表理事として、15年間で累計5万人以上の子どもたちと向き合ってきました。そんな私が、深い衝撃を受けた出来事がありました。それは、アフタースクールの活動を始めて、まだ間もない頃のこと。新しいプログラムを「みんなでやろう」と呼びかけたとき、ある男の子がこんな一言を口にしたのです。

「やったことがないから、やりたくない」。

子どもは、何にでも好奇心を示し「やりたい!やりたい!」とすぐ飛びつくもの。そう思い込んでいた私は、彼の言葉に驚きを覚えました。「なぜ、そんなことを言うんだろう?」という疑問が、そのあともずっと心の奥底に残りました。

しかし、活動を通して出会った親御さんたちに話を聞くうちに(子どもが)「チャレンジしない」といった悩みをお持ちのご家庭が少なくない、ということがわかってきました。

親はもちろん、子どもと接する仕事をしている私たち大人は、「子どものうちに、いろんな新しいことにチャレンジしてほしい」と、無意識のうちに願っています。でも、当の子どもたちは「やりたくない」と思っている。その後もたびたび、親と子どもの間にある大きなギャップに気づかされることになりました。

(放課後NPOアフタースクール:どんな遊びをしようか相談中)

「やりたいことがない」「わからない」「どうでもいい」

こんなこともありました。

以前、全国の小学生約1,000人に「放課後や夏休みにやってみたいことはなんですか?」というアンケート調査をしたところ、上位5位は、次のようなランキングとなりました。

いかがでしょうか?どこかに違和感を覚えませんか?

そうなんです。

「なし」という答えが5位に入っていたのです。

その回答欄には「やりたいことがない」「わからない」「どうでもいい」などと書いてありました。

親や大人は「子どもだからこそ、新しいことにチャレンジしてほしい」と願っている。しかし、当の子どもは、チャレンジしようとしない。そもそも、自分のやりたいことがわからない、考えたことがない。

今の子どもたちにはそうした傾向があるとすると、それはなぜなのか?

私は、多くの子どもと保護者たちを見てきた経験から、こうした傾向の根っこには子どもたちの「自己肯定感の低さ」がある、という仮説にたどり着きました。

自己肯定感とはわかりやすく言えば、「自分はここにいていい」という感覚です。

「自分はここにいていい」という感覚を持っている子は、ほうっておいても新しいことに取り組もうとします。また、失敗してもくじけずに、繰り返しチャレンジしようとします。

一方、「自分はここにいていい」という感覚を十分に持てない子は、新しいことにチャレンジしようとしません。やる前から「失敗するのではないか」という不安が先立って、やろうとしないのです。


(放課後NPOアフタースクール:遊びの中でも慣れていない新しいことに一歩を踏み出す)

自己肯定感は長い人生の原動力になる

ここで「20年後」に目を向けてみましょう。子育てや教育の目標とは何かというと、つきつめれば「自立」です。

どんな親や教師も、目の前の子どもが20年後、自分で考え、行動できるようになることを願っているはずです。それは、20年後その子がビジネスマンになるとしても、スポーツ選手になるとしても、同じです。

やったことのない仕事にチャレンジする。失敗してもくじけずに、何度でも立ち上がる。人が自立し、そんなふうに成長し続けるためには、高い自己肯定感が欠かせません。それは、親元を離れた後の長い長い人生を支える、大きな力となってくれるものだと思います。

過去の国際的な調査(※)によると、日本の子どもの「自己肯定感」は世界の中で極めて低い、という残念な結果が出ています。この「自己肯定感の低さ」が、日本人がチャレンジをしなくなり、国際社会の中で成長への大きな「壁」になっていると私は考えています。

次回は、親はどのような姿勢で向き合うべきかについて、具体例を上げてお話したいと思います。

※日本を含めた7カ国の満13~29歳の若者を対象とした意識調査(平成25年度・我が国と諸外国の若者の意識に関する調査)によると「自分に満足している」「自分に長所がある」「うまくいくかわからないことにも意欲的に取り組む」の項目において「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた人が7カ国中最も低かった。

>>後編:「子どもに大人の弱みを見せる」ことの重要性




「自己肯定感」育成入門~子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す! 

難関大学に合格しても、一流企業に就職しても、幸せになれるとは限らないこの時代。20年後の「子どもの幸せ」に対して、親ができるのは究極的には、ひとつだけ、「自己肯定感」を育てること。5万人の子どもと向き合ってきたNPO代表・平岩 国泰が提唱する、新しい子育ての基本!

・「ほめる親」より「気づく親」になる
・「気が利く親」ではなく、「ものわかりが悪い親」になる
・親子で立てる目標は、非常識なくらい「低く」設定する
・子どもを「ちょっと前の子ども」と比べる
・親の「しくじりエピソード」を、子どもにどんどん話す
・子どもが幼かった頃の話は、何度も繰り返し語る
・子どもと「一対一」で向き合うスペシャルデーを作る
・ホワイトボードを使ってコミュニケーションを「見える化」する

ほか、子どもの自己肯定感を育てるための具体的なメソッド33を紹介!

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