ひみつ基地

2019年7月号 vol.77

子どもの新しい放課後の居場所「しゅくだいカフェ」とは?(前編)-まちの大人が支え、夜の宿題タイムが家族だんらんに

2019年09月12日 12:27 by midori_takeda

2016年9月に大阪でスタートし、現在、福島県会津若松市、徳島県徳島市でもはじまり、少しずつ全国に広がりを見せている「こどもの居場所」の形態があります。「しゅくだいカフェ」。

「しゅくだいカフェ」は、宿題だけ終わらせたら、あとは自由に遊んでいいというフリースペース型のこどもの居場所。小学生なら誰でも来ることができます。

そもそも「しゅくだいカフェ」とは?

「しゅくだいカフェ」は、「放課後のこどもの居場所」の1つのスタイル。

学校の宿題だけ終わらせ、自由に過ごせるフリースペースを無料で提供しています。一人で宿題に取り組むのはむずかしいという子も、スタッフやボランティアがサポート。見守りのある安心・安全な場で、楽しく放課後を過ごすことができます。
 
「しゅくだいカフェ」は、平日は毎日15時にオープン。曜日などにもよりますが、だいたい16時ぐらいまでには子どもたちが徐々に集まってきます。(夏休みなど学校がお休みの期間の対応は、拠点によってそれぞれ。大阪は日常と変わらず平日はオープンします。※お盆休みは除く)

「おかえり~!」(スタッフ)、「いや、おかえりって、家ちゃうし!」(こども)というようなやりとりをしつつ、記録用のボードに名前と学年を書いたら、それぞれ宿題にとりかかります。もちろん中には、宿題を出そうとしない子もいるので、「みんなと一緒にやろうや」「終わったら何して遊ぶ?」「わからんところは教えるよ、友達も手伝ってくれるって!」などと、徐々に気持ちが宿題に向かえるように声をかけたりもします。

その日の宿題が全部終わったら、スタッフのところに子どもたちが宿題を持ってきます。

全部終わっているかをチェック。間違いがあれば、「ここが違うよ」と伝え、子どもたち自身が直します。宿題チェックが終わったら、ポイントカードにスタンプがもらえるのですが、このスタンプは貯まると駄菓子と交換できたり、特別な遊びができたりするという仕組みです。
 
あとはとにかく自由に遊ぶ。拠点によって遊び道具はいろいろですが、カードゲームやボードゲーム、テレビゲーム、ダンボール工作、ままごとなど、思い思いです。19時まで過ごすことができます。

「宿題を見るのがほんと大変…」という保護者の経験から

「しゅくだいカフェ」がスタートしたのは大阪市・東淀川区。地域で仕事をし、まちづくりに関わっている3人が「何か地域のためになることをしたいね」と相談したところから始まりました。

新聞販売店を生業としながら、地域の高齢者の方向けに30分500円という低価格で「なんでもお手伝いしますよ」というサービスを展開していた本川誠さん。もう一人は、内装工事などを中心にしながら、ママの仕事場をつくり、「ひがよど祭り」実行委員会の立ち上げなど地域活動を積極的に展開する中井まひるさん。そして地元出身で教育関係者の学び場づくりや子どもの人権にまつわる活動をしている私・武田緑です。


(左側から私・武田緑、本川誠さん、中井まひるさん)

本川さんと中井さんは、いずれも3人以上の子育てをしてきたパパ・ママです。私も学校や教育に関わる活動をしています。そんな3人なので、おのずと「子どもたちがイキイキできるまちにしたいね」「そのためにできることはない?」という話になっていきました。
 
そんな中で出てきたのが、「宿題を毎日見るのがとにかく大変」「宿題やりなさい!」のやりとりで、家族だんらんの時間が、ギスギスしてしまうのが辛いよねという話。もちろん、「子ども食堂」が全国的に増え、子どもの居場所の必要性が叫ばれている昨今なので、居場所づくりは一案として出ていました。そこに、「宿題が終わってたら夜もっとゆとりのあるコミュニケーションが家族でできるんじゃない?」という保護者視点が加わり、「しゅくだいカフェ」のアイデアが生まれました。

「しゅくだいカフェ」が担いたい3つの役割

「しゅくだいカフェ」の役割はこの3つです。

1.子育て世帯の「家族だんらん(夜の2時間)」を確保
2.放課後、子どもたちが安全に安心して学べる、遊べる居場所づくり
3.課題やハンデを持つ子どもを、自然なコミュニケーションの中でサポートする

1.子育て世帯の「家族だんらん(夜の2時間)」を確保

シングルマザーやシングルファーザーで子育てしている家庭はもちろん、子育て世代の夫婦も他の年代に比べて共働きが多く、一番子どもとコミュニケーションを取りたい時代になかなかその時間がとれないというジレンマがあります。

家族で一緒に過ごせる貴重な夜の時間が、「宿題やったの?」という会話に支配されないように、家に帰るまでに「しゅくだいカフェ」で確実に宿題を終わらせ、夜はしっかりと家族のコミュニケーションをとれるようにサポートしたいと考えています。

実際、子どもたちの宿題を手伝いはじめてみると、

・そもそも「宿題に向かう」「机に宿題を出して開く」ところまでが難しい子がいること
・やろうとしても、学校の授業進度についていけていなくて「わからない」「解けない」子が多いこと
・答えがあってるかのチェックまでしようと思うとかなり時間がかかること(答えがないことが多いので、大人も解かないといけない)
・高学年になってくると、教えるのもかなりむずかしいこと など

「これは大変だ、働いてる親が毎日宿題をみるって相当しんどいぞ」ということを実感します。
 
2.放課後、子どもたちが安全に安心して学べる、遊べる居場所づくり

都会では、また地方でさえも、ひと昔前と比べると、地域コミュニティが疎遠になり、子どもたちが安心してのびのび遊べる場所が減ってきています。小学生がコンビニの前で携帯ゲームで遊んでいたり、細い路地で家に当たらないように気を付けながらキャッチボールをしている姿を見ることもあります。特に雨が降ると行き場がなくなり、子どもたちは自宅で1人夜まで過ごすことが多いとも聞きます。そんな地元の子どもたちに、安全で安心できる学び場・遊び場を提供したいと考えています。

3.課題やハンデを持つ子どもを、自然なコミュニケーションの中でサポートする

最近は、声高に「子どもの貧困」や「発達障害・学習障害」などの子どもを取り巻く問題が、各種メディアで取り上げられるようになりました。「しゅくだいカフェ」は、「専門家のいる場所」ではありませんが、こどもたちの”しんどさ”を自然なコミュニケーションの中で汲み取り、必要なサポートにつなげていきたいと考えています。

また、「しゅくだいカフェ」では違う学校、異年齢の多くの友達と同じ空間で混ざりあって遊ぶことで、「10年後に社会とつながる」ために支えになるコミュニケーションや多様な体験が積める場でありたいと考えています。

「まちの大人」が子どもの放課後を楽しくする!
  
だから「しゅくだいカフェ」は、勉強はするけれど学力アップを目指すところではありません。あくまで「宿題」を片付け、そのあとは「ただ、いていいところ」「遊び場」であるということがポイントだと考えています。

「しゅくだいカフェ」は、まちの自営業者が集まって立ち上げたということが特色でもあります。また、高校生から社会人まで様々なボランティアさんが関わってくれています。専門家ではない「まちの大人」が、こどもたちと関われるチャンネルを拓いていくことは、こどもたちの暮らしと学びのインフラを整備していくことでもあります。つまり、「まちの子どもたち」「社会の子どもたち」を支えることに参加する大人の裾野を広げていくことです。これは「子ども食堂」とも共通する意義だと思います。

後編では、福島県と徳島県への「しゅくだいカフェ」の広がりをご紹介します。

>>後編:地域密着の中小企業が拠点となり、全国に広がりはじめる!

武田緑(教育コーディネーター・人権教育/シティズンシップ教育ファシリテーター)

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アナタのまちにも「しゅくだいカフェ」をつくりませんか?


「しゅくだいカフェ」の取り組みを全国に広げるべく、「一般社団法人宿題カフェ運営サポート協会(SCUSK)」が立ち上がりました。地域でしゅくだいカフェを始めたい!という企業や団体の方に向けて、オープンまでと、その後の運営継続のサポートをしています。ご興味がある方は、下記からお問い合わせください。

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