Eduwell Journal

2013年10月号 vol.8

学歴だけで子どもは「自立」できない-「実社会」というジャングルで、疑似ではなく「本物」の体験をする

2020年05月21日 23:29 by takayuki_kawashima

「お前、使えない奴だな!」

一流大学を卒業し、超有名企業に入社。社内のペーパーテストの成績も優秀で、配属先は頭脳集団の「経営企画部」。入社4年目には、MBA(経営学)を取るためにアメリカの超有名大学に派遣。

そんな誰が見ても超優秀なH君。ところが、アメリカから戻った先の営業部で、同僚や取引先から、「お前、使えない奴だな!」と言われ続けてしまっている。時には、「MBAって、マヌケ(M)、バカ(B)、アホ(A)の略語か!?」とまで皮肉られることもあるそうだ。

このような、優秀(なはず)だが、人格否定のような罵声を浴びせられる若者たちを、多く目にしてきました。かわいそうですが、仕方がない一面もあるかなと、私も経営者の一人として感じることがあります。(もちろん、そんな罵声は浴びせませんが)

傾向として、「学歴は高いが、頭でっかちで、行動が伴わない人」は、「使えない奴」と言われがちかなと思います。

子ども・学生時代に、偏差値も高く、有名大学に入り、失敗歴も乏しく、どこにいてもトップクラスにいて、そして晴れて志望企業に入社。ところが、これらの「キャリア」は大半が、ペーパーテストだけで勝ち得たもので、実体験が伴っていない。だから、変化球とか、解のない問題とか、無理難題とか、場合によっては理不尽なことに、対応するチカラを持っていないのですね。

当然、社会に出て仕事をするからには、それらへの対応力が求められるわけですが、どうしても出来ない。出来ないなら自省し、出来るように努力すればいいのですが、「優秀で、否定されたこともなく、理論先行型」の20年間が邪魔をしてしまい、結局は「使えない奴だな!」と罵声を浴びせられるのです。

学歴は否定しません。それどころか、やはり社会に出て活躍するには、「知識」の量や、「問いを解く」能力があったほうがいいです。また、ネットでのエントリーが当たり前となった昨今、大量の入社志望学生をさばくために、「学歴」という一目瞭然の物差しで書類選考している大企業が多いというのも事実です。それでも、やはり学歴なんて、「アクセサリー」の一つじゃないかなと、思います。



必要なのは、ペーパーテストだけではなく、「実体験」

「今まで授業で手を挙げたことの無い生徒が、少しずつ手を挙げるようになってきました」(担任の先生談)

「体験授業をやると、必ず何割かの生徒が参加できずにいた。だが、今回の取組みは、一人残らず生徒全員が参加し、かつ目の色が違っていた」(校長先生談)

「我が子が、あれほど輝いている姿を見たのは、初めてだ。運動会でも見たことが無い」(保護者談)

これは、NPO法人コヂカラ・ニッポンが行った、「社会で実際に役立つ」プロジェクトを、子ども達が体験した後に出てきた、関係者からのコメントの一部です。詳細は、下記の画像をクリックしてご覧ください。



概要は、12才の小学生たちが、「食料自給率を高めよう」と、2年間、研究開発してきた「米粉のシューアイス」。それを、シューアイスの全国ブランド 「HIROTA」との連携で、7月に全国で販売。パッケージデザイン、キャッチフレーズ、レシピなどは全て、子ども達が考案したもので、爆発的な売上げを 記録中。というものです。

同じような事例はいくつもあります。閑散としている商店街を活性化させようと、小学生が「経営者」となって店舗を開店。すると、商店街には活気が戻ってきた。

幼児が見つけた「地域のお薦めスポット」と、児童が考えた「地域のプチ観光ツアー」が、その地域のタウンマップには欠かせないコンテンツとなった。

高校生が、調理からサービス、経営に至るまで担っているレストランは、全国規模で有名になった。

いずれの事例にも共通しているのが、前述したHIROTAでの大人達からのコメントの通り、以下のような効果が、子ども達にあったということです。

・やれば出来る、自信、認められ感などの「自己肯定感」の向上。

・もっと貢献したい、更に売りたい、他にやるべきことの探究などの「達成意欲」の向上。

・役になっている、自分には存在価値があるんだなどの「自己効力感」の向上。

更に、夢や希望、自分で考え行動する力、考える力、伝える力、聞く力、協調性、多様性、論理力、学習意欲などの向上にもつながっています。

社会に役立つことで、子どもは伸び、自立に向かう

子どもが「自立した」社会人になるためには、自己肯定感、達成意欲、自己効力感の3つが必要。そして、達成意欲を高めるには、好きな事、得意な事、役に立つ事の3つが効果大。という話は、何度かしてきました。これまでの記事は下記のリンクをご覧ください。

第一回目(2013年07月号 vol.5):自立できない子ども?自立させない大人?-なぜ、子ども・若者の現状がこれほど深刻なのか

第二回目(2013年08月号 vol.6):子どもが「自立する」に必要な3つのこと-「過干渉」な親や先生の下で育った子どもの危険

第三回目(2013年09月号 vol.7):どうやって子どもの心に火をつけるのか?-子どもの成長の原動力を生み出す3つの経験

自己肯定感を高めるには、パパママからだけでなく、斜めの関係の地域の人々や、全く知らない第三者から褒められることも、大切です。

達成意欲は、与えられたプログラムをこなすことではなく、何が起こるかわからない分野の方が、高まり易いです。

テストの成績がいい、運動部でレギュラーだ、というのは実は、自己効力感には直接的につながりません。

これら3つを満たすには?



それは、「実社会」というジャングルで、疑似ではなく「本物」の体験をすること。平たく言えば、「社会で役に立つ」という経験をすることが何よりです。我 が子を、児童・生徒を、地域の子ども達を、「実社会」というジャングルで、是非、アドベンチャー(adventure)体験させてあげてください。

裏庭に「秘密基地」を造り、お菓子やジュースを持ち込み、近所のちびっ子や弟妹を招いた経験。

近所の爺さん・婆さんの家に行き、肩たたきや掃除をしてあげ、そのお礼に手作りのオハギをもらった経験。

中高校生にもなると、実際に田畑に出たり、酒屋を手伝ったり、お祭りの裏方をやった経験。

いずれも、我々が「自立した」大人になるための基礎となったはずです。でも、今の子ども達には、「秘密基地づくり」などの機会があまりありません。だからこそ、我々大人が意図的に、プログラム化されていない実体験を、子ども達に提供してあげたいものですね。

NPO法人コヂカラ・ニッポンでは、そんな機会を提供することで、子どもが伸び自立に向かうことを手助けしているのと同時に、前述の事例のように、子ども達を受け入れた企業や地域も発展するという、一挙両得のプロジェクトを推進しています。是非、一度ご来訪下さい。

Author:川島高之
1964年生まれ、1987年:慶応大学卒、三井物産に入社、2012年:系列上場会社の社長就任、「イクボス式経営」で利益8割増、時価総額2倍、残業1/4を達成。2016年:社長退任、フリーランサーとして独立。一方、小中学校のPTA会長(元)、少年野球コーチ、イクメンNPO「ファザーリング・ジャパン」理事、子ども教育NPO「コヂカラ・ニッポン」代表でもある。
子育てや家事(ライフ)、商社勤務や会社社長(ビジネス)、PTA会長やNPO代表(ソーシャル)という3つの経験を融合させた講演が年間300回以上。
NHK「クローズアップ現代」では「元祖イクボス」として特集され、AERA「日本を突破する100人」に選出、日経、朝日、読売、フジTVなど多数メディアに。
著書:いつまでも会社があると思うなよ!

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