ひみつ基地

2013年10月号 vol.8

子どもとアサーションな会話が出来ていますか?-相手も自分も大切にするコミュニケーション術

2019年09月13日 17:58 by sari_yamamura

先日、大学時代にお世話になった先輩から、現在「うつ病」で会社を休職していると連絡がありました。幸いにも治療の経過は良好とのことで、ホッと胸をなでおろしています。

「うつ病」は誰もがなりえる病気で、その発症要因は様々であり、専門家(医師やカウンセラー)ではない私が不用意なことは言えません。ただ、うつ病まではいかないものの、「言いたいことが言えない」など上手く自己表現が出来ずストレスを抱えているという方に、アドバイスさせて頂くことはあります。

自己表現が上手く出来ないという問題は大人だけの問題ではなく、友達関係から不登校が発生している子どもにも同様に起きています。今回は、私がアドバイスする時に使用している考え方の1つ【アサーション】という考え方を紹介し、子どものロールモデルである大人のみなさんの自己表現の参考にして頂けたらと思います。 



そもそも「アサーション」とは?

アサーションという考え方は、もともとアメリカの女性解放運動から生まれた考え方です。今まで弱い立場だった女性が自己主張できるためのトレーニングとして開発されました。それを日本に持ち込んだ、心理カウンセラーの平木典子さんは、アサーションの意味を「さわやかな自己表現」と訳しています。また、「自他尊重のコミュニケーション」とも表現しており、自分の欲求、考え、気持ちなどを、率直に、正直に、相手のことも尊重しながら、その場の状況にあった適切な方法で表現することをアサーションと定義しています。

アサーションについてさらにイメージしやすいように、平木さんが作成したアサーション度をチェックするための質問リストを一部ご紹介します。


あなたは、自分の長所や、なしとげたことを人に言うことができますか。(はい・いいえ)

あなたは、会話の場から立ち去ったり、別れを言ったりすることができますか。(はい・いいえ)

あなたは、自分が知らないことや分からないことがあったとき、そのことについて説明を求めることができますか。(はい・いいえ)

あなたが人と異なった意見や感じをもっているとき、それを表現することができますか。(はい・いいえ)

あなたが注文した通りのもの(料理とか洋服など)がこなかったとき、そのことを言って交渉できますか。(はい・いいえ)

平木典子『アサーション・トレーニング』参照


相手に対して、否定的な感情や攻撃的、無視する意図が潜んでいない上での「はい」がついた項目がアサーティブ(アサーションの形容詞)な自己表現が出来ている項目といえます。

自己表現にはどんな種類があるのか?

アサーティブな自己表現を含めて、日常生活での自己表現の種類には大きく分けて3つの表現方法があると言われています。

①不十分な自己表現(非主張的な自己表現):「言いたいのに言えない」「黙ってしまう」「断りたいのに断れない」

②過剰な自己表現(攻撃的な自己表現):自分本位で他者否定、操作的、支配的、一方的

③適切な自己表現(アサーティブな自己表現):自分も相手も大切にする表現方法

それぞれ具体的な事例を考えてみましょう。もし、あなたが子どもたちの前で、これからの動きについて話をしている時、何人かの子どもたちが話を聞かず騒ぎ出したとします。

①の表現をするあなただったら、渋い顔や苦笑いをしつつその場をやり過ごすだけでしょう。

②の表現をするあなただったら、「うるさい!ちゃんと人の話を聞かないか!!」と大きな声で怒鳴り、恐怖で子どもたちを動かすことになるでしょう。

③の表現をするあなただったら、「キミたちが大きな声を出すと、私の話が全員に聞こえなくなってしまいます。みんなに話を聞いてもらえないと私は悲 しい気持ちになるし、これからみんながスムーズに動けず困ってしまします。楽しみな気持ちは分かるけど、まずは私の話をしっかり聞いてもらえるかな。その 方がもっとこれからを楽しめるよ!」と冷静にはっきり伝えることができるでしょう。子どもたちはその後しっかり話を聞き、あなたも含めて気持ち良くその後 の行動がとることが出来るはずです。

③の表現にある「私は悲しい気持ちなる」という表現は、「Iメッセージ」という表現方法です。「断定」や「相手への非難」を表しやすい「Youメッ セージ」のとは逆に、相手が受け取りやすくなる言い方です。さらに、アサーションには『DESC法』を使うことで、より自分の気持ちや考えを明確にしてか ら話すことが出来る話法があります。

DESCのそれぞれの頭文字の意味は、


D=describe::描写する
これから対応しようとする現在の状況や相手の行動を客観的に描写する。

E=express、explain、empathize:表現する、説明する、共感する
描写したことに対しての、自分自身の主観的な気持ちを表現・説明し、相手の気持ちにも共感する。ポイントはあまり感情的にならないこと。

S=specify:特定の提案をする
状況を変えるための具体的・現実的な解決策、妥協案を提案する。

C=choose:選択する
相手に要望を受け入れてもらえた場合、受け入れてもらえなかった場合それぞれに対する自分の次に取る行動をあらかじめ考えておき、そして選択する。


上の事例を分解してみると、

D=「みんなが大きな声を出すと、私の話がみんなに聞こえなくなってしまいます。」

E=「みんなに話を聞いてもらえないと私は悲しい気持ちになるし、これからみんながスムーズに動けず困ってしまします。楽しみな気持ちは分かるけど、」

S=「まずは私の話をしっかり聞いてもらえるかな。」

C=「その方がもっとこれからを楽しめるよ!」

この話法を使うことで、今までより、自分の気持ち・考え・欲求を伝えやすくなり、「言いたいのに言えない」と自分の中にため込んでしまうストレスは軽減で きるでしょう。みなさんが、アサーションというスキルだけでなく、「自他尊重」であるアサーティブなものの見方・考え方で子ども達と接することで、子ども 達も適切な自己表現が出来るようになることを願っています。

コーチングオフィス「みらいと」代表 山村沙莉

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