ひみつ基地

2019年8月号 vol.78

スタディクーポンで子どもの教育格差を解消する(後編)~「子どもの貧困」を生み出す社会構造にアプローチする

2019年08月13日 15:55 by editorial_desk

 ”子どもの貧困”という見えにくい課題。

この課題解決に取り組み続けている、一つの団体がある。

公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン(以下CFC)。CFCは、経済的な困難を抱える子どもたちに、塾や習い事、体験活動等で利用できるスタディクーポンを提供する事業を展開しながら、家庭の経済格差による子どもの教育格差を解消し、貧困の世代間連鎖を断ち切ることを目指している。

CFCの東京事務局に勤務している山本雅(やまもとみやび)さん。現在、彼女は広報担当として、様々な関係者に「伝える」ということに、日々尽力している。

前編(課題を社会に発信し、共感と支援の輪を広げる)は、山本さんがCFCで働くことになった経緯など「過去」を中心に、後編では仕事のやりがいや、今後の目標など、より「未来」の部分に触れていく。

子どもや支援者の声が何よりの励み

CFCの事業は、個人や法人から寄付を募り、それをクーポンのお金に充てるというモデルとなっている。集まった寄付額によってクーポンを支給できる人数が変わってくるため、一人でも多くの子どもに届けるために、継続的に寄付を集め続ける必要がある。

当然、寄付を集められなければ、クーポンを支給できる人数が減る。受益者への影響が目に見えてわかり、非常にシビアな面もある。

CFCの仕事のやりがいとは、一体何だろうか?

「一番は、子どもや保護者さんの声を聴いたときですね。広報の仕事として、お子さんに実際に話を聞いて、寄付者さんに届けたりもするのですが、クーポンを使って頑張っている、という話をお子さんから聞くと、すごく嬉しくなります。この間も保護者さんからお手紙をもらって、不覚にも泣いてしまって」

長らく学校に行けていなかったあるお子さん。そのお子さんはクーポンを使って、パソコン教室に通い始めたそうだ。できることが増えて少しずつ前向きになり、少しずつ学校との接点もできてきた。クーポンをいただいたおかげで、とても感謝している、とその手紙には書いてあった。

クーポン利用者だけではなく、寄付者の声を聞くことも、またやりがいにつながっている。お子さんの声を寄付者に届けて、「寄付してよかった」「これからも応援したい」と言ってもらえると、素直に嬉しい。

山本さんの仕事は、クーポン利用者と寄付者の架け橋だ。寄付者の「応援しているよ」の声とともにクーポンを利用者に届け、利用者の「ありがとう」の声を、寄付者に届ける。地道で、丁寧な発信が、両者をつなぎあわせることができる。

問題を構造的に解決する

「教育に携わりたい」と思うと、どうしても学校や学童の先生など、直接子どもに関わる職業が思い浮かぶ人も多いだろうが、CFCの広報の仕事は、直接的な対人支援ではない。

家庭環境によらず、より多くの子どもが学校外教育の機会を得られるように、下支えをしていくこと。決して目立つ仕事ではないし、子どもの反応を毎日肌で感じられるわけでもない。

だからこそのおもしろさ、やりがいもあると、山本さんは話す。

「CFCは、子どもの貧困問題を、構造的に解決しようとしているんです。どのような社会構造から、これらの問題が生み出されているのか。どうしたらいち早く解決できるのか。自分たちの力だけでは難しいので、行政に提言をして、自治体の政策として実施してもらえるよう、働きかけたりもしています。自治体という大きな機関が動いているのを間近で見るのは、大きなやりがいですね」

子どもたちの直接的な支援は現場の方々に任せ、自分たちは別の角度から問題にアプローチする。それぞれの強みを活かし、役割分担をしながら取り組むことで、より早いスピードで課題を解決していくことができる。

そう信じて、日々の仕事に取り組んでいる。

いろんな人の力を借りながら、一つのことをやりとげる

CFCの職員は、東京、仙台、関西の事務局を合わせて全部で10名。事業規模からすると決して多くはない人数で、課題解決に取り組んでいくためには、社外の人の存在はとても大きい。

「職員がたくさんいるわけでもないから、社内だけではできないことを、社外の方にお願いしたりすることは多いですね。デザインやWEBサイトの構築とか。年に1回の年次報告書は、特に多くの方の協力が必要で。社外の人とコミュニケーションをとりながら一つのことをやりとげる、ということが、少しはできるようになってきた気がします」

NPOは資金も人手も豊富にあるわけではないからこそ、自分たちだけで何とかしようとせず、関係者の力をいかにうまく借りられるかがキーである。

協力してもらう際に大事なことは、「相手の気持ちに立って考える」ことと「感謝を忘れない」こと。基本的なことだが、ついつい忘れがちなことでもある。

書面などで何かを伝える時は、「相手がこれで理解できるだろうか?」と何度もチェックする。やってもらってあたりまえではなく、感謝の気持ちを忘れずに伝える。それがないと、人に動いてもらえない。

「『巻き込む』という言葉は個人的には嫌いなんですよね。どちらかと言うと『協力してもらっている』でしょ?と思ってます」

(社内ミーティングでの議論も活発。役職に関係なく意見を交わしている。)

混沌としている中でも、やるべきことを見つけていける

応募してもらっている全ての子どもにクーポンを届けること―。

それがCFC全体としての目下の目標である。団体発足から、少しずつ支援の範囲を広げられるようになってきたが、まだまだニーズに追い付いていない面もある。

支援の範囲を広げていくために、今後は広報担当としての発信力がより求められる。それには、広報の知識だけではなく、教育全般への理解を深めることも必要だ。通信制大学に通っているのは、そのためでもある。

最後に、CFCで働くことに向いているのはどんな人か、尋ねてみた。

「地道に活動することができる人でしょうか。CFCの活動に対する共感があって、自分なりにやりがいを見つけていけるのは大事かなあと。今一緒に働いている人は、静かな熱がある人が多いかもしれないです。混沌としている中でも、自分で仕事を見つけたり、作り出したりしていくことも必要ですね」

より多くの子どもにクーポンが届き、多様な教育機会が得られるようになるために。

家庭による経済格差が、教育格差に結び付かない社会になるために。

山本さん、CFCの取り組みは、これからも続いていく。

>>前編:課題を社会に発信し、共感と支援の輪を広げる





スタッフ募集:チャンス・フォー・チルドレン

チャンス・フォー・チルドレンでは、ファンドレイザー、マーケティング・広報担当のスタッフを募集しています。現在のスタッフは、異業種・未経験からのスタートしています。興味関心のある方は、下記のお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。詳細について担当者より折り返しご連絡をいたします。

団体名 公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン
職種 ファンドレイザー、マーケティング・広報
雇用形態 契約社員
給与 月給23万円~(年齢、経験等を考慮し、社内規程に基づく)
※昇格・昇級あり

【モデル年収】
例1)28歳(役職無し・入社1年目)
月給 24.5万円
年収イメージ 385万円(賞与含む/別途、時間外勤務手当・交通費実費支給)

例2)35歳(マネージャー職・入社5年目)
月給 32.3万円
年収イメージ 508万円(賞与含む/別途、時間外勤務手当・交通費実費支給)
福利厚生 ・賞与年2回(6月、12月)
・時間外勤務手当
・扶養手当
・社会保険完備(健康保険・厚生年金・雇用保険)
・交通費支給(上限あり)
業務内容 下記のような仕事をチームメンバーの一員として取り組んでいただきます。
・ファンドレイジング施策の立案(マーケティング)
・講演イベントの企画運営
・寄付者とのコミュニケーション(法人・個人)
・WEBサイトやSNSの管理、情報発信
・広報媒体の制作(年次報告書、寄付募集チラシ等)
・その他、法人の管理業務、事務局業務全般
期待する成果 下記のような仕事をチームメンバーの一員として取り組んでいただきます。
・ファンドレイジング施策の立案(マーケティング)
・講演イベントの企画運営
・寄付者とのコミュニケーション(法人・個人)
・WEBサイトやSNSの管理、情報発信
・広報媒体の制作(年次報告書、寄付募集チラシ等)
・その他、法人の管理業務、事務局業務全般
勤務地 東京都江東区亀戸6-56-17 稲畠ビル3F
最寄駅:JR総武線亀戸駅から徒歩2分
勤務時間 10:00~19:00(休憩1時間)
※ただし、勤務時間は希望に応じて調整可能です。
休日休暇 週休2日制(土・日)、祝日休み
※土曜・日曜に出勤の必要がある場合は別の曜日に振替
※有給休暇、夏季休暇、年末年始休暇有
応募資格 20代、30代の方を優先します。
※ただし、スキル・経験等により、上記に該当しない場合も応募できる可能性があります。
求める人材像 ・子どもの教育格差解消というミッションに共感する方
・社内外の方と円滑にコミュニケーションをとれる方(営業経験者歓迎)
・企画書や提案書を作成する基礎的なスキルを持っている方(基礎的なPCスキルは必須)
・自ら業務を組み立て、遂行できる方
・こつこつと地道な仕事ができる方
・チームで仕事をするのが好きな方

【こんな人は向いていない】
・混沌としたところや決まっていない中で物事を動かすのが嫌な方
・地道な仕事を継続することが苦手な方
採用予定数 1名
選考プロセス ・書類選考(履歴書、エントリーシート)
・面接選考(採用担当者、代表者等)
※面接選考は3回程度行います。


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