Eduwell Journal

2013年10月号 vol.8

早期療育で自閉症の症状は改善する!-謂れなき偏見や誤解が本人やその家族を悩ませる!

2020年09月19日 23:26 by hitomi_kuma_73

自閉症は生まれつきの障がいです

自ら閉じると書いて、自閉症。皆さんは、何をイメージしますか?「引きこもり」、「不登校」、「欝」、、、そんなキーワードが浮かぶ方も多いのではないかと思います。

自閉症は先天的な脳の機能障害で、先述のような後天的な状態や病気とは全く違います。

自閉症は、様々な遺伝的要因が絡み合っておこると考えられていますが、明確な原因は不明です。

米疾病対策センターが2012年に発表したデータでは、88人に1人が自閉症であるとされ、その数は増加傾向にあります。小学校でいうと、大体2クラスに1人くらいの割合ですから、決して他人事ではないのです。

しかし、自閉症の字からくるイメージは、「しつけが出来ていない」「甘えがある」といった偏見や誤解となって、未だ本人やそのご家族を悩ませています。

自閉症の症状

自閉症の主な症状は、以下の3つのポイントにあらわれます。


(1)言葉を介さないコミュニケーション:
ジェスチャーや表情、遊びに関連します。例えば指さしや表情の意味を理解したり、それを使って自らの要求や感情を表現したりすること、遊びを想像的に発展することが苦手な場合があります。

(2)言葉を介したコミュニケーション:言葉が話せない、もしくは著しく遅れている場合や、話せるけれども、使い方が一般的でない場合があります。例えば、「どうぞ-ありがとう」といったやりとりに混乱が生じ、全部の言葉を自分で言ってしまったり、話し方の抑揚が平坦だったり、エコラリア(言葉や文章を機械的に繰返す)が多かったりします。

(3)活動や興味の幅の狭さ:車を走らせずに回るタイヤを見ているなど玩具の遊び方が一般的でなかったり、手をひらひらするなど同じ動きを反復する常同行動があったり、特定の道順や物の並びにこだわったりする場合があります。




この記事では、自閉症とまとめて記述していますが、実際には、上記の症状にどの程度当てはまるかという軸と、言語・知的発達の軸をかけあわせて、自閉症、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障がいといった個別の診断名がつけられてきました。

しかし、障害の状態像が多様であるため、専門のお医者さんの間でさえ見解や診断名がわかれることがあり、診断しぶりや支援の遅れといった問題にもつながっています。2013年に、診断基準の改訂が行われたことにより、今後は「自閉症スペクトラム障害」という名称に統一されていく予定です。

電車で子どもが泣いていたらどう感じますか?

自閉症は見た目の特徴がないため、分かりにくく、その多様性から支援も難しい障がいです。そこで、皆さんにお願いしたいこと。それは想像力を持って、お子さん達を見守って下さいということです。

例えば、電車の中で、ひっくり返って泣き叫んでいるお子さんと、叱らずにただ見守っているお母さんがいたら、皆さんはどう感じますか?

中には、「こんなに騒いでいるのに、叱らないなんて信じられない。これだから今時の母親は!」などと感じてしまう人もいるのではないでしょうか。

反射的にそう感じてしまった時、いったん想像力を働かせてみて下さい。

もしかしたら、そのお子さんは、自閉症なのかもしれません。たまたま、特別な用事があり、いつも降りる駅で降りられなかったことで、パニックになってしまったのかもしれません。

パニックになった時、叱ったり、過度に関わったりすると、余計にパニックが激しくなったり、長引くことがあります。そのため、落ち着くまでそっとしておくしかない場合があるのです。

お母さんは、「子どもが辛そう、早く落ち着かせてあげたい。」、「周囲の目が気になるから、静かにさせたい。」という気持ちで、とにかく辛抱強く待っている最中かもしれません。

こういった場合に辛いのは、お子さんがおこしている問題そのものだけでなく、周囲のそう言った視線を感じることだとおっしゃる親御さんがとても多いです。

周囲の人々が、「よく分からないけど、もしかしたら何か事情があるのかな。大変だな。」という思考のクッションを挟んで、温かい目で見守ってくれるだけでも、親御さん達の負担はだいぶ減っていくと思います。



早期の支援で、自閉症の症状は改善する

さて、ここまでご紹介してきた自閉症ですが、実は早期に適切な療育を行うことで、症状が大きく改善することが分かっています。

現在、最も成果があがっている方法は、応用行動分析(Applied Behavior Analysis; ABA)という心理学に基づいた療育です(Lovaas,1987; Sallows &Graupner, 2005)。

NY州保健省推奨の早期療育ガイドライン(NY State Dept. of Health Early Intervention Program, 2000)では、ABAに基づく早期集中療育を、最もエビデンスレベルが高い自閉症療育モデルとし、実施を推奨していますが、日本では、専門家が少ないこと、時間やお金がかかるといった課題があり、あまり支援が普及していません。

ほめて伸ばす!ABAに基づいた指導

ABAに基づいた指導の特徴は、


(1)行動を、行動の前後の出来事とセットの枠組みで捉える

(2)行動の直後に良いことが起こると、直前の行動が増加する学習のメカニズムに着目し、「褒める」ことのノウハウや効果を科学的に体系化していること


この特徴を最大限に生かすことで、お子さんに新しい行動を教えたり、お子さんの困った行動を改善したりすることができます。では、ABAに基づいた具体的な指導例をご紹介していきましょう。基本的な教え方は3ステップから成り立ちます。


1.弁別刺激:
簡潔な指示や分かりやすい教材を使って働きかける。

2.反応:お子さんが自ら反応するのが難しい場合は、プロンプト(お助けヒント)を出し、お子さんの反応の手助けをする。

3.強化子:お子さんが反応できたら、直後にお子さんの好む物や活動、褒め言葉を提示しながら褒める。直前の反応を増やす働きをするもの。


例えば、お子さんに「パズルをはめる」行動を教える例です。図を見てみましょう。



大人は、「パズルはめて」という簡潔な指示とともに、パズルをお子さんに手渡します。

でも、いきなりパズルをはめるよう指示されて、できれば苦労はありません。

ABAでは、必ず「プロンプト」というお助けヒントを使って、お子さんが出来るよう導きます。この場合は、お子さんの手を取って、パズルをはめるお手伝いをするわけです。プロンプトのおかげで、無事にパズルをはめる事ができたら、出来るだけ早く、確実に褒める必要があります。

行動の直後に、ただ言葉だけで褒めるのではなく、お子さんをくすぐったり、玩具を手渡したりして、確実にお子さんを喜ばせてあげましょう。この流れを何度か繰り返す中で、徐々にプロンプトを減らしていくと、少しずつ自発的にパズルをはめる行動ができるようになっていきます。

次に、言葉の真似はできるけれども、人とのやりとりはまだ難しいお子さんに、年齢を答えることを指導する例です。図を見てみましょう。

大人は、「○ちゃん、何才?」という簡潔な質問をし、間髪を入れずに「5才です」とお手本を示し、プロンプトします。お子さんが、プロンプトを真似して「5才です」と答えられたら、大げさに抱きしめたり、玩具を手渡したりして、褒めてあげましょう。徐々にお手本を示す部分を減らしていくことで、自発的に「5才です」と答える行動ができるようになっていきます。

こういった指導法は、靴を履くといった生活のスキルを教える場合も、遊びや言葉を話すスキルを教える場合も、困った行動を適切な行動に置き換えていく場合も、あてはめて用いることができ、お子さんは褒められることで、モチベーションや自信を保ちながら、楽しく学習していくことができます。



エビデンスに基づいた支援の普及に向けて

ABAに基づいた指導が、自閉症の症状を改善するうえで最も有効であるということが、研究により明らかにされてきたということは、お子さんの可能性を広げる支援方法として科学的な裏付けがあるということです。

私たちは、客観的に効果が明らかな手法に基づいた支援を行うことが、お子さんの教育の権利を保証することにもつながると考えていますが、日本では、ABAに基づいた支援が受けられる機関はまだまだ少ないのが現状です。

近年では様々な現場の方々に、ABAに基づいた支援方法の研修ご依頼を頂くことも増えてきました。今後は、そういった方々と連携を行いながら、エビデンスを軸とした支援方法の選択が行われる文化や基盤の整備を行っていく必要があると思います。

次回の記事では、日本にABAに基づいた早期療育を普及していくために、私たちが行っている保護者支援や学生セラピストの育成といった活動内容について、具体的にご紹介させて頂ければと思います。

<引用文献>
Lovaas, O., I. (1987) Behavioral treatment and normal educational and intellectual functioning in young autistic children. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 55, 1, 3-9.
New York State (2000). Report of the Recommendations – Autism / Pervasive Developmental Disorders. NY State Dept. of Health Early Intervention Program.
Sallows, G., O., & Graupner, D., T. (2005). Intensive behavioral treatment for children with autism: Four-year outcom.

Author:熊仁美
NPO法人ADDS共同代表、慶應義塾大学社会学研究科訪問研究員・博士(心理学)慶應義塾大学大学院心理学専攻博士課程修了。
専門領域:応用行動分析、前言語期コミュニケーション、発達心理学に基づく発達障害児の早期療育、ペアレントトレーニング、療育と育児ストレスとの関連、人材育成プログラム開発など
保護者が家庭でできる療育プログラムの研究開発と効果検証を進め、28年度科学技術振興機構研究開発成果実装支援プログラムに最年少で採択。「エビデンスに基づいて保護者とともに取り組む発達障害児の早期療育モデル」の責任者として全国で療育モデルの実装に取り組む。

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