Eduwell Journal

2020年4月号 vol.86

渋谷スタディクーポンは、教育格差の解消につながったのか?(後編)-身近な良き兄や姉として利用者の学びを支えるブラシス

2020年05月25日 21:41 by eduwell_journal

「スタディクーポン」は、経済的に厳しい家庭に対して、学習塾や習い事等で利用できるクーポンを提供する取り組みですが、クーポンの配布をしているだけではありません。クーポンを利用する子どもに対して、大学生等のボランティアがブラザーシスター(ブラシス)として、学習や進路の相談にのり、学びのサポートをしています。親でも先生でもない身近な存在のブラシスは、どのような存在なのでしょうか?

先の記事(後編:無料塾とは異なる役割。支援の入り口として有効的。)に引き続き、2020年2月13日(木)に国立オリンピックセンターで実施された「渋谷スタディクーポン事業報告会」について、レポートします。第二部では、渋谷区生活福祉課長、大学生ボランティア、スタディクーポン利用者OGなどの方々がご登壇され、スタディクーポンの効果や今後の課題等についての議論が行われました。

▼クーポン利用者のお子さんの相談にのる「ブラシス」(八木茜音さん:ブラザーシスター)

今井:八木さんがブラザーシスター(ブラシス)をやってみようと思ったきっかけを教えてください。

八木:高校の時に吹奏楽部だったのですが、とても熱中できて達成感があって、大学生になっても熱中できることを何か見つけたいと思っていました。そんな時、授業でブラシスのチラシを見て、新歓に行って先輩の話を聞きまして。みんな楽しそうで、一生懸命だったので、自分もやってみようと思いました。

今井:担当しているお子さんとは、どのような話をするのですか?

八木:今担当しているお子さんは5人いて、その子によっても違いますが、吹奏楽の話で盛り上がる子もいれば、「テストでいい点が取れました!」と報告してくれる子もいます。また、勉強の仕方がわからないという相談を受けることもあります。

ほとんど電話の面談なので、顔が見えない中でのコミュニケーションで難しさもありますが、前に受けもっていた先輩から引継ぎをしてもらっているので、それをふまえて深く話をしていくような感じです。

今井:面談をしていて、困ったことはありますか?

八木:「勉強の時間が取れない」という相談があったんです。その子は吹奏楽部で、運動部の子の方が先に引退するから、自分はまだ引退できないからどうしよう…と。

うまく答えることができずに困ったのですが、ブラシスは面談の後にシェアの時間を設けているので、他のブラシスたちに相談して、アドバイスなどをもらいましたね。

今井:ブラシス同士で共有する場って大切ですよね。他にも研修のようなことはあるのですか?

八木:まずブラシスになるための養成研修があり、ブラシスになった後も、面談の記録の取り方、子どもの見えない背景について考える…などのテーマで、年に3回ほど研修を行なっています。

また、「ユニットミーティング」という場があって、それは月に1回ブラシスが集まり、同じ子どものことについて共有し、関わり方について考えていきます。一人の子のことを長期的な目で見た上で、みんなでその子の悩みについて考えていきます。

今井:八木さんがブラシスを続けている理由は何でしょうか?

八木:そうですね…続けて接していると、子どもたちが最初よりも話してくれるようになって。きっと親や友達にはしていないだろうな、と思う話をしてくれた時に、その子の力になったんだと実感して嬉しいなと。それが続けている理由でしょうか。

今井:「学習進路相談」と言うとちょっと固いんですが、日常的なことをふらっと話しながら、子どもたちから相談がきて、それに寄り添えるイメージですね。これからもがんばってください。

▼中学2年生から高校3年生までクーポンを利用(クーポン利用者OG)

今井:現在は、どのような勉強をされているのですか?

クーポン利用者OG:大学に通っていて、耳が聞こえない方や、食べることに障害がある方などのリハビリについて勉強しています。中学2年生から高校3年生まで、クーポンを利用して勉強をし、おととし受験をして関東に来ました。

今井:なぜ、リハビリの道に進んだのですか?

クーポン利用者OG:もともと将来の夢は栄養士だったのですが、高校2年生の冬に母が病気になり、そのことがきっかけで、今自分がやりたいことは、母のような人を助けることだと。それで、リハビリの勉強に進んだんです。

今井:ブラシスはどんな人だったのですか?

クーポン利用者OG:うーん、しっかりした方、でしたね。楽しくお話しさせてもらっていました。ずっと電話でのやりとりだったので、初めて会った時は緊張して話せなかったんです(笑)最初のころは担当の方が何回か変わったのですが、最後は同じ方が担当してくれました。

今井:クーポンを使って塾に行ったことや、ブラシスとの面談は、どのような影響がありましたか?

クーポン利用者OG:塾に通ったことで、自分がやりたいことをやるために、必要なことがわかりました。また、受験ができなかったら、今の大学にも通えませんでした。ブラシスの方や、今井さん、支援者の方々には本当に感謝していて、応援して下さっていることを感じて、頑張って勉強したいという気持ちがさらに強くなりました。これからも頑張って勉強し、団体に貢献、恩返しがしたいです。

今井:自治体の政策などで東北以外にもクーポンの取り組みが広がっていますが、どのように感じていますか?

クーポン利用者OG:経済的な事情で学びたいことが学べない、教育を受けることができない方々が、このような制度に出会って支援してもらえることがわかれば、支援してもらって学べる喜びや、感謝、応援してくれる感情にふれることができ、いいことが起こるんじゃないかな、と思いました。

今井:次はぜひ、ブラシスとして関わってもらえたら嬉しいなと思います。

>>中編:無料塾とは異なる役割。支援の入り口として有効的。

>>前編:低所得世帯の子どもへの学習支援として有効な施策

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Author:Eduwell Journal 編集部
本記事の執筆は、山田友紀子が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。「Eduwell」は、本メディアがテーマとしてきたEducation(教育)、welfare(福祉)、well-being(ウェルビーイング)の3つの言葉をつなぎ合わせて作られた造語です。本メディアは、子どもや若者を対象とした社会教育事業に取り組んでいる認定NPO法人「夢職人」が発行しています。

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