Eduwell Journal

2020年5月号 vol.87

新型コロナの影響で、受験を控える高校3年生の高まる不安(前編)-オンライン授業やAO・推薦入試、学習環境への懸念

2020年09月13日 21:17 by eduwell_journal

緊急事態宣言の延長に伴い、多くの学校で引き続き休校期間が続くことになりました。長引く休校期間は、多くの子どもたちに影響を与えています。

年齢によってその影響は様々ですが、今年度に大学受験を控えている高校3年生は、現在の状況に対して、どのような心境を抱いているのでしょうか?

高校3年生といえば、大学入試の実施方法が大きく切り替わる世代です。入試改革元年とも言われ、数年前から準備を進めてきた高校生も多いでしょう。

しかし、2019年の年末ごろ、英語民間試験の活用や、国語・数学の記述式問題の取り扱いの見送りなど、方針の二転三転が続きました。おそらく、高校教育の現場では多くの混乱が生じていたと思われます。

それに追い討ちをかける形で、新型コロナウイルスの感染拡大と、長引く休校期間。

高校3年生たちは今、何を思っているのか。そして、今後求められる支援や対策とは何なのか。

実際に数名の高校生から話を聞き、支援や対策を整理していきたいと思います。前編の記事では、まず高校生たちの実際の声と、そこから見えてきた課題についてお伝えします。

高校生の生の声を聴く

今回は、首都圏在住、在学の4人の高校3年生へヒアリングを実施しました。4人とも、2月末~3月初めから休校が始まり、今も休校が続いています。下記のコメントは、ヒアリング内容からの抜粋です。(ヒアリングは4月下旬に実施)

都立高校・Aさん

「私の学校のオンライン授業は、まだ『お試し』のような感じなので、私立でオンライン授業が充実している学校や、オンラインで授業配信している塾に通っている人たちと差がついてしまわないか、心配です。

大学受験は推薦入試を考えていて、その対策を夏休みにがっつりやろうと思っていたのですが、夏休みも学校の授業がありそうなので、その時間が取れるかどうか。小論文の添削も先生にお願いしたいのですが、それができない状況です。

学校の先生と連絡が取りあえるオンラインのツールがあるのですが、どちらかという一方的な配信なので、自分から質問したりはしづらいという感じはあります。双方向のやりとりができるとありがたいですね。」

都内私立高・Bさん

「私の学校は、6時間オンラインで授業をしています。オンライン授業そのものは3月から始まっていたのですが、6時間になったのは4月中旬くらいでしょうか。先生が自宅から授業を配信してくれています。

ずっと画面を見ているので、疲れてしまうこともありますね。ただ、わからないことや相談ごとは先生に直接チャットできるようになっているので、助かっています。

私は恵まれた環境にいると思うので、自分自身の困り感はあまりないのですが、公立校に通う地元の友達の話を聞くと、学校ごとの差が大きいと感じます。やる気がとてもあるので、どこの高校でもオンライン授業が整備されてほしいです。」

都内私立高・Cさん

「オンライン授業は4月中旬から始まっています。教科によっては、過去問をただ解くだけとか、先生の一方的な解説とか、そういう授業もあって、もう少しちゃんと理解しながら授業を受けたいな…と思うこともあります。

私は英語関係の大学を志望しているので、出願条件に英検の合格が必要な大学もあるんですね。ただ、この状況なので試験自体が開催されるかわからない。

条件がそろわないと出願できないので、それがどうなるか…という感じですね。もし英検を受けられなかったら、英検が不要な大学を受けるしかないと思っています。」

県内私立高・Dさん

「私の学校は、授業のビデオが配信されていて、それを各自で見る形になっています。実際に見たかどうかの確認は、たぶん取らないのではないのでしょうか。1日30分×5本くらいを見て、勉強しています。

わからない所があった時に聞ける人がいない、ということは不安ですね。塾に通っている時は塾の先生に聞けていたのですが、今は塾も閉まっているので。

2年生の期末テストはなくなってしまったのですが、そこで挽回しようと思っていたので、正直困りました。推薦で行けたら行きたいと思っていたのですが、その期末テストがなくなってしまったことが大きいです。」

高校3年生たちへのヒアリングを行なった結果、いくつかの課題が見えてきました。企業や団体が行ったアンケート調査等も踏まえながら、以下に整理したいと思います。

オンライン授業整備の学校間格差が大きい

全ての授業をオンラインに切り替えている学校もあれば、まだオンラインは試行段階で、自習の時間がほとんど、という学校もありました。

LINE株式会社が運営する「LINEリサーチ」では、日本全国の高校生に対して現在の状況を尋ねる調査を行っています。(LINEユーザーを対象にしたスマートフォンWeb調査)回答時期は4月中旬、有効回収数は910となっています。

その中の「休校中の高校からの学習サポート」に対しての回答で、最も多いのは「休校期間用のテキストやプリントの配布」で61%、「学校からの宿題や課題がネットで出される」が49%で、「オンライン授業が行なわれている」は14%にとどまりました。

この「オンライン授業が行われている」割合は、国公立校は9%、私立校は26%と、約3倍の開きがあることがわかりました。

ヒアリングをした中で、全てオンライン授業に移行している学校(私立校)もありましたが、その学校では休校になる前から、一人一台タブレットが配布されていたそうです。

ICT機器の導入について、もともと差があったところが、この休校期間でさらにその差が開いてしまっている現状がわかりました。

学習に対するモチベーションの維持が難しい

ヒアリングの中では、普段学習で利用していた塾や学校の自習室、図書館などが閉まっているため、自宅で学習するしかなく、モチベーションの維持が大変だという声が上がっていました。

先ほど紹介した調査の中で、「新型コロナウイルスによる気持ちの変化」という質問がありますが、「やる気の起きないことが増えた」が男性で38%、女性で53.4%と、他の回答の中で最も多い割合となりました。

環境を変えることでリフレッシュできることもあると思いますが、今は自宅しか環境の選択肢がない状況です。自宅に自分の部屋があり、学習に集中できる環境の子どもたちばかりではありません。

また、人とのコミュニケーションが断たれていることも、モチベーション維持が難しい要因の一つだと考えます。ヒアリングの中では、教師と双方向のやりとりができる環境の高校生が、わからないことや質問があった時に聞くことができるので、比較的学習に対して前向きである印象をもちました。

推薦入試に対しての不安

高校生から多く上がってきたのが、「推薦入試をどうしよう」という声です。ヒアリングをした4人の高校生は、たまたまみんな推薦入試を考えていて、それぞれ何らかの影響を受ける(受けそうだと思われる)様子でした。

夏休みに通常授業が実施されることによる、対策時間の確保の難しさ、推薦入試の内容に含めようと思っていた活動そのものの中止、出願条件に必要な英語民間試験の開催への不安など、困り感や不安の形は一人ひとり異なり、様々であることがわかりました。

推薦入試は今年から「学校推薦型選抜」という名前に変わりました。出願受付開始は11月でこれまでと変わっていませんが、一般入試に比べると早いため、学校推薦型選抜を考えている高校生は準備をし始めたい時期です。

学校推薦型選抜や総合型選抜(旧AO入試)への懸念の声があがっていることから、萩生田文部科学大臣は4月21日の記者会見で「特定の受験生が不利益を被ることのないよう、出願時期の在り方も含め、各大学に対して配慮いただきたい点などを検討・整理しているところです。」と述べています。(萩生田光一文部科学大臣記者会見録・令和2年4月21日

学校推薦型選抜や総合型選抜の日程が、仮に後ろに倒れるとなれば、準備期間は確保できるものの、今度は一般入試との期間があまり空かないため、推薦で合格できなかった生徒が、一般入試に切り替えて準備できる時間が短くなるという懸念もあります。

>>後編:急がれる経済的な困難を抱える家庭への支援

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Author:Eduwell Journal 編集部
本記事の執筆は、山田友紀子が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。「Eduwell」は、本メディアがテーマとしてきたEducation(教育)、welfare(福祉)、well-being(ウェルビーイング)の3つの言葉をつなぎ合わせて作られた造語です。本メディアは、子どもや若者を対象とした社会教育事業に取り組んでいる認定NPO法人「夢職人」が発行しています。

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