Eduwell Journal

2020年4月号 vol.86

休園が続く幼稚園!奔走する幼稚園教諭・先生に聴く-経験の差も含めて、ありのままの姿を受け止めていきたい

2020年05月25日 17:21 by eduwell_journal

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、今、子どもの遊びは大きく制限されています。

外で遊べない、友達と会えない。

時間はたっぷりある中で、多くの子どもが家の中で長い時間を過ごしています。

感染拡大を防ぐためには、仕方のないことです。ただ、子どもにとって、“遊び”は、本来とても大きな意味を持っています。

「幼児の自発的な活動としての遊びは、心身の調和のとれた発達の基礎を培う重要な学習である」

これは、幼稚園教育要領の冒頭に記載されている内容です。

遊びは、重要な学習です。そして、その重要な学習ができないことにより、今後子どもたちに様々な影響が出てくる可能性も考えられます。

今回は、東京都内の私立幼稚園で学級担任をしているCさんにインタビューを行ないました。お話をうかがう中で、幼児期の時間がいかに大切か、浮かびあがってきました。

幼稚園で遊べる最後の日は、突然やってきた

編集部:Cさんの幼稚園は、一斉休校の要請が出されてから、どのような対応を図ったのですか?

Cさん:休校要請に幼稚園は入っていませんでしたが、兄弟姉妹関係のこともあるので、方針としては「区立小学校に準じよう」となっていました。なので、翌週の月曜日からは休園の措置をとりました。

編集部:Cさんは年長クラスの担任だったんですよね?最後の1か月間子どもたちと過ごせず、どのような心境でしたか?

Cさん:年少クラスから3年間、ずっと担任をしてきたクラスで、年長児の担任も今回が初めてだったんです。

それだけに、何とも言えない、やり場のない気持ちでした。悔しいとも悲しいとも言えるような、うまく言葉にできないような気持ちになっていました。

「今日が幼稚園で遊べる最後の日だよ」と子どもに伝えるときは、耐えきれなくてつい泣いてしまいまして…。でも楽しく過ごしてほしかったので、「今日は何をしてもいいよ、たくさん遊んでね」ということも伝えました。

編集部:子どもたちはどのような様子でしたか?

Cさん:私の言葉に、何かを感じている子もいれば、よくわかっていない子もいたのかなと。そもそもお別れというものを経験することが初めての子も多いので、このまま卒園、という実感がもてていなかったんじゃないでしょうか。

小学校に向け、少しずつ、ゆっくりと気持ちをあたためる

編集部:幼稚園の最後の1か月間って、どんな時期なのでしょうか。

Cさん:これまでの3年間をふりかえったり、小学校への楽しみな気持ちを感じられるようにしたり。「みんなはこれからお兄さん、お姉さんになるんだよ」と伝えて、子どもたちの気持ちをあたためていく大事な時期です。

“幼稚園楽しかったな”だけでなく、“幼稚園でいろんなことができるようになった”と実感できてはじめて、”小学校に行っても大丈夫”という気持ちになれると思うんです。

本当にステップアップしきれるのかな…?小学校に気持ちが向かないんじゃないかな…?ということが、とても心配でした。

編集部:小学校生活につなげていくためにも、大事な時期だということですね。

Cさん:そうですね。私の幼稚園は自由保育中心で、一斉に何かをしましょう、ということはあまりないんです。制作物などを作る時も、子どもが自分で時間を決めて、取り組む形をとっています。

子どもが自分で考える力を育める一方、小学校とのギャップを感じてしまいやすいかもしれない…という心配はありまして。

もちろん、年間のいろんな活動の中で、小学校を見据えたうえで必要な力を育ててきてはいたのですが、3月の卒園に向けた取り組みや行事を経て、改めて小学校でもがんばるぞ!となってほしかったな…とは思います。

卒業証書を渡す意味とは?

編集部:卒園式そのものは実施したのですか?

Cさん:とても簡易的でしたが、実施しました。子どもたちも、さすがにその日は今日が最後なんだ…と理解している様子でしたね。

卒業証書も、一人ずつ渡しました。それを渡すということは「みんなが幼稚園で学べることは、全て学びました」ということの証なので、それはしっかり子どもに感じてもらいたかった。

編集部:最後、子どもたちに向けてどんなお話をしたのですか?

Cさん:何を言おうか、ずっと考えていました。伝えたいことがいっぱいありすぎて…。でも思い出をふりかえることよりも、これからの話を重視しました。

みんなはこんなことが得意で、こんなことができて、こんなに力があるから、小学校に行っても大丈夫だよって。何か知らないこと、新しいことに出会っても、がんばれる力がちゃんと育ってるよ、ということを伝えたかった。

編集部:子どもたちに届いているといいですね。

「子どもがいない=仕事がない」わけじゃない

編集部:卒園式以外の部分では、先生たちはどのようなお仕事をしているのですか?

Cさん:3月は指導要録を書いたり、新年度をどうするかという会議が中心でしたね。あとは、いつも春休みにやっている準備などを前倒してやったりとか。例年と変えなければならない部分が多く出てきたことで、改めて行事の内容を見直し精査する機会にもなりました。

初めは4月からスタートする予定でしたが、緊急事態宣言が出て、入学式も始業式も中止となり。休園も継続となったので、今は預かり保育で出勤する日と、在宅で仕事をする日が、それぞれありますね。

編集部:預かり保育はまだ実施しているのですね。

Cさん:基本的には「自宅でお願いします」と伝えていますが、医療関係者の方もいらっしゃるので、どうしても必要な方のみお預かりしています。多くても5人くらいでしょうか。

預かり保育は、普段は家庭的な雰囲気や環境で遊んでいますが、今はなるべく距離をとって、もちろん検温もマスクもして…という対策を徹底しています。

編集部:リスクがある中で預かることは、先生たちも大変ですよね…。

Cさん:もちろん「何かあったら怖いな」という気持ちはありますが、預かり保育を行う方針には異論ないというか、必要なことだと思っています。

私たちの生活のために働いてくれている方がいるからこそ、今の生活が成り立っているので、こちらも腹をくくらなきゃいけないなって。

編集部:そうですよね。医療関係者の方々、そのお子さんを預かる先生方には頭が下がる思いです。在宅ではどのようなお仕事をしているのですか?

Cさん:新年度なので、子どもの名前書きをしたり、お誕生日の表やカードを作成したり。幼稚園が始まったら配布する資料もわりとあるので、その資料を作成したりですね。

また、毎年園全体で幼児教育に関する研究をしているので、今年のテーマに関するエピソードを整理したりとか。

編集部:子どもたちが登園しなくても、やることはたくさんありますね。

遊びや、人との関わりの中で育めるもの

編集部:GW明けまで休園が続きますが、今、心配していることはありますか?

Cさん:自分のしたい遊びをとことん楽しむことがメインの幼稚園なので、遊べない状況の中で子どもはきっと発散できていないと思いますし、保護者さんも大丈夫かな…と。

今年の4月に年中、年長に進級した子どもたちは、幼稚園がない状態が2か月続くことになるんですね。せっかく作れたリズムがとぎれてしまうことが心配です。

編集部:この時期の子どもにとって、一日一日は大きいですもんね。

Cさん:幼児期は、子どもの日々の小さな変化がたくさんあります。毎日大きく変化するわけではないですが、ふりかえって過去と比べたときに、あ、この子変わったな、大きくなったね、と気づくことが多くて。

だからこそ、日々の積みかさねがすごく必要で、子どもの姿に合わせながら関わっていくことが大事なんです。それってオンラインでできるかというと…できないですよね。

編集部:友達や先生と一緒に遊び、関わる中で成長していく、という感じでしょうか。

Cさん:そうですね。遊べないことで、子どもが自分で気づく力がなくなってしまうのでは…と思っています。

今の環境って、子どもが自分自身で刺激を得ていくことが難しいじゃないですか。何かしようにも基本的に保護者さんの許可が必要で、自由にはできない。

あるものを受け入れている状態なので、いろんな“欲”がなくなってしまうんじゃないかと。「こんなこともできるかも!」という、可能性を広げづらくなってしまう気がします。

この期間は、後で取り戻せるのか?

編集部:この時期、幼稚園に通えないことの影響は大きそうですね。

Cさん:正直、どこでしわよせが来るのかはわからないです。でも、あの時この経験ができなかったから…という影響がいつかあるのではないか、という気もしています。

幼稚園教育要領の改訂に伴って「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」というものが設けられ、卒園(小学校入学時)までに育みたい子どもの姿が10個の具体的な視点から書かれています。その姿を見据えながら毎日を積みかさねていくんですね。

幼稚園に通える期間が短くなることで、今までよりもぎゅっと詰めなきゃいけなくなる。でも、先に伝えたように子どもの変化や成長には時間が必要なんです。

先生から何かを教えるという形ではないからこそ、子どもの実感が伴わないと意味がない。だから、短い期間に経験をまとめればいい、ということでもないし、小学校以降に延ばすことも難しい。

編集部:カリキュラムを実施すればOK、というわけではないですもんね。

今の、ありのままの姿を受け止める

編集部:最後にですが、休園が明けて子どもたちと会えたら、どのように関わっていきたいですか?

Cさん:子どものありのままを認め続けていきたいな、と思います。

きっとお家での経験はそれぞれで全く違って、これまでに積みかさなってきた変化がなくなっている子もいるかもしれませんが、それらもひっくるめて全部、受け止めてあげたい。

ただ、なかった時間を取りもどすように焦ることもしたくないな。今まで通りの日常を感じるようにしつつ、経験の差がついてしまっている部分があれば、フォローしていきたいなと。

でもまずは、なんでもないことも楽しいよーって、過ごしていきたいです。

編集部:早く休園が明けて、楽しい時間をたくさん過ごせるといいですね。Cさん、ありがとうございました。

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Author:Eduwell Journal 編集部
本記事の執筆は、山田友紀子が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。「Eduwell」は、本メディアがテーマとしてきたEducation(教育)、welfare(福祉)、well-being(ウェルビーイング)の3つの言葉をつなぎ合わせて作られた造語です。本メディアは、子どもや若者を対象とした社会教育事業に取り組んでいる認定NPO法人「夢職人」が発行しています。

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