Eduwell Journal

2020年6月号 vol.88

新型コロナウイルス感染症予防の学校再開ガイドラインを読み解く-学校再開後の授業や学校行事はどう変わるのか?

2020年09月10日 11:25 by eduwell_journal

緊急事態宣言が全国的に解除され、3月から休校が続いていた学校も段階的に再開となっています。

感染リスクがゼロとなったわけではない中、引き続き感染予防に努めながら、学校生活を送っていく必要があります。また、日常的な感染予防はもちろん、感染リスクが高い学習活動や学校行事などは、制限せざるを得ない状況が、今後増えてくると予想されます。

本記事では、文部科学省や東京都から出されている「学校再開ガイドライン」を参照しながら、学校の学習活動や行事においてどのような影響や制限が生じるのか整理をしていきたいと思います。

<参照資料>
・文科省ガイド①:新型コロナウイルス感染症対策としての学校の臨時休業に係る学校運営上の工夫について(通知)
・文科省ガイド②:新型コロナウイルス感染症に対応した小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における教育活動の再開等に関するQ&Aの送付について
・東京都ガイド:都立学校版感染症予防ガイドライン(新型コロナウイルス感染症)

学習活動について

まずは「学習活動」の制限や配慮事項について見ていきます。今回は、「音楽」「体育」「家庭」の3つについて述べていきます。

●音楽

文科省ガイド①には、「『音楽科における狭い空間や密閉状態での歌唱指導や身体の接触を伴う活動』は、感染症対策を講じても感染の可能性が高ければ行わない」と表記されています。

また、東京都ガイドには、「音楽においては、歌唱の活動や管楽器(リコーダー等)を用いる活動は行わない」という表記があります。

密室状態で、飛沫が飛ぶ恐れのある内容は避ける必要があることが読み取れます。鑑賞を中心とした授業、または飛沫が飛ぶ恐れのない楽器などを使った授業などが、できることとしては考えられるのではないでしょうか。

●体育

文科省ガイド①には、「『体育科、保健体育科における児童生徒が密集する運動や児童生徒が近距離で組み合ったり接触したりする場面が多い運動』は、感染症対策を講じても感染の可能性が高ければ行わない」と表記されています。

また、東京都ガイドには、「体育における身体接触を伴う活動(複数による準備運動やスポーツなど)は行わず、児童・生徒の体力や健康状況を考慮し、基本的な技能や体力トレーニングを行う」という表記があります。

運動そのものは重要であるものの、児童や生徒同士が直接触れ合うような活動は、やはりリスクが高く、避けたほうが良いということです。

運動する時間は確保しつつも、近い距離にならない、直接触れ合わないような内容となるように、工夫が必要になってきます。

また、文科省ガイド②には、体育を安全に実施するための工夫として「可能な限り授業を屋外で実施したり、児童生徒が集合・整列する場面を避けるなどの工夫をするとともに、用具を使用する前に消毒したり、授業の前後に手洗いを徹底するなど、感染拡大防止のための防護措置等を講じてください」という表記があります。

確かに屋外の方が感染リスクとしては低いですが、これから夏を迎えるにあたり熱中症のリスクがより高まっていくため、双方のリスクを合わせての実施方法の検討が必要になってくると思われます。

●技術・家庭科

文科省ガイド①には、「『家庭科、技術・家庭科における調理等の実習』は感染症対策を講じても感染の可能性が高ければ行わない」と表記されています。

また、東京都ガイドにも同じく「家庭においては、調理実習は実施しない」と表記されています。

食品を扱う活動は、避ける必要がある状況が続きそうです。ただ、調理の専門学科等に関しては、東京都ガイドには、「食品加工の実習を実施する場合は、衛生管理を徹底し、製造した食品については、外部への提供を行わない。また、調理実習を実施する場合は、衛生管理を徹底し、多くの生徒が密集しないよう配慮する。」とありました。

調理について専門的に学ぶ上で、調理実習が不可避である場合には、対策を実施したうえで行なうことは可能だとされています。

学校行事について

次に「学校行事」の制限や配慮事項について見ていきます。ここでは、文科省ガイド②に記載されているカテゴリーを主に参考にしながら整理していきます。

●儀式的行事

大勢が一堂に会する「式」全般についてです。入学式、始業式、終業式、卒業式、離任式などが挙げられます。

文科省ガイド②には、「こまめな換気を実施する等の感染拡大防止のための措置をとったり、参加人数を抑えたり、式典全体の時間を短縮したりする等の開催方式の工夫を講じる」と記載があります。

校内放送などを活用したり、一度に会する人数を減らして複数回実施するなどの工夫が求められると思われます。3月の卒業式や4月の入学式においては、すでに配慮しながらの実施が各学校で行なわれていることと思いますが、今後実施を予定している式に関しても、同様の配慮が求められています。

●文化的行事

文化祭や学習発表会、音楽会やクラブ発表会などの、文化的な活動の集大成として実施される活動についてです。

文科省ガイド②には実施するための工夫として、「小グループやパートごとの練習を基本とし、全員で集まって練習する機会はリハーサルのみとする」や「学年ごとの発表を映像や音声にとり、校内放送で流す」などが挙げられています。

これらの行事は、行事に向かう過程における子どもの学習活動が重要だと思われます。子どもの学びをできる限り減らさず、教育的意義のある形で行事に向けての取り組みを進めていくために、過程内での工夫もより一層求められると考えます。

●体育的行事

運動会や体育祭、球技大会などについてです。運動会や体育祭は5月ごろに実施する学校も多いと思われますが、それらの学校では秋以降への変更がすでに余儀なくされています。

文科省ガイド②には運動会について「特に、児童生徒が密集する運動や、児童生徒が近距離で組み合ったり接触したりする場面が多い運動については、地域の感染状況等を踏まえ、安全な実施が困難である場合は、実施を見合わせることも考えられます」と表記されており、開催そのものを検討するか、各学年の競技内容を見直す必要が出てきそうです。

●健康安全に関する行事

健康診断や避難訓練などの、子どもの健康安全を守っていくために必要な活動についてです。防犯訓練や引き渡し訓練なども含まれます。

文科省ガイド②には、「健康診断について、例えば、保健室への入退室等について小グループごとにするなど、待ち時間が多くならないよう十分配慮する」「避難訓練や引き渡し訓練、防犯訓練などについて、各教室で事前指導を十分に行い、時間をかけずに実施できるようにする 」ど表記されています。

また、東京都ガイドには、「健康診断は、円滑な測定等が行われるよう、学年ごとに登校を分散させるとともに、検診時の待機者が滞留しないよう工夫を行う。」「なお、実施体制が整わない等の事由により、6月 30 日までに実施できない場合は、当該年度末までの間に可能な限り、速やかに実施する。」とあります。

行事というと儀式的行事や、運動会、音楽会などをイメージしがちですが、子どもが安全に学校生活を送るうえで必要な取り組み等も、学校行事内には存在します。命に関わる部分であるとも言えるので、そういった意味では、延期や中止がしにくい行事であると考えられます。

感染症対策を行ないながら、学校生活を送るうえでのリスク回避もできるよう、工夫をしながらの実施が求められます。

●遠足・旅行などの集団宿泊的行事

日帰りや宿泊で実施する遠足、校外学習、修学旅行などについてです。

文科省ガイド②には「バス等による移動に際して、車内の換気に十分留意し、マスクを着用し、余裕をもって座れるようにする」という表記や、修学旅行に関しては「感染防止対策を最優先としていただき、3月9日の専門家会議で示されている3つの条件が重なることのないよう」という表記があります。

また、東京都ガイドには「ホームルーム合宿、修学旅行、遠足、映画鑑賞教室など宿泊を伴う行事や校外での活動は、延期又は中止する。」とあります。

密室のバス内での移動や、宿泊を伴う活動はやはりリスクが高く、実施に際しては相当の工夫が求められると思われます。

ただ、文科省ガイド②には「当面の措置として修学旅行を取り止める場合においても、その教育的意義や児童生徒の心情等にも配慮いただき、中止ではなく延期扱いとすることを検討いただくなどの配慮をお願いしたい」という記載もありました。

宿泊行事はおそらく、年間の行事の中でも児童生徒が楽しみにしている活動であることを考慮し、一概に中止ではなく延期をし、実施の可能性を探ってほしいということが読み取れます。

「子どもの気持ち」も考慮した検討を

以上のようにガイドラインを読み解いていくと、学校が再開しても元通りの学校生活に戻るわけではなく、様々な制限があることがわかりました。

今後、楽しみにしていた行事が中止になったり、縮小したりすることによる、子どもたちの気持ちの面のフォローやケアも必要になってくることでしょう。

また、上記に挙げたような行事や学習活動の実施に際しては、恐らく一つひとつの検討が必要となり、学校の先生たちの負担も多くなってくると思われます。

大変難しいことではありますが、行事や学習活動の中で、根幹となる部分や教育的意義のある部分、そして子どもたちが楽しみにしている部分はどこなのかを見極め、力を入れるべき部分、そして省略してもいい部分を整理していくことが必要なのではないでしょうか。

「安全健康の確保」がもちろん最優先ではありますが、できる限り子どもの目線に立ち、子どもの気持ちも考慮したうえで、一つひとつの検討が進められることを切に願います。

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Author:Eduwell Journal 編集部
本記事の執筆は、山田友紀子が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。「Eduwell」は、本メディアがテーマとしてきたEducation(教育)、welfare(福祉)、well-being(ウェルビーイング)の3つの言葉をつなぎ合わせて作られた造語です。本メディアは、子どもや若者を対象とした社会教育事業に取り組んでいる認定NPO法人「夢職人」が発行しています。

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