Eduwell Journal

2020年7月号 vol.89

オンライン教育の利用が難しく、学習や進路への不安を抱える-生活困窮世帯における新型コロナの影響調査レポート

2020年07月10日 13:01 by yusuke_imai

経済的な困難を抱える子どもたちに対して、塾や習い事、体験活動などに利用できる「スタディクーポン」を提供する公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン(以下、CFC)は、2020年6月3日、新型コロナウイルスが生活困窮世帯の子どもに与えている影響を調査した結果を発表しました。

本調査は、2020年4月14日~5月7日の期間で、CFCの学校外教育補助を受給している中学生・高校生及びその保護者(小学生の保護者含む)を対象に行われ、392名が回答しました。本記事では、同調査により明らかになった新型コロナの影響による課題をレポートします。

調査結果①:生活困窮世帯の7割以上が所得減少

新型コロナウイルス影響下での経済活動の停滞により、雇用情勢が悪化しています。非正規労働者が雇用の調整弁とされる中、感染拡大は多くの家計に影響を与えていることがわかりました。

家庭の経済状況に与えた影響を調査したところ、生活困窮世帯73.0%が「既に所得が減少した」または「今後減少する可能性がある」と回答しています。その背景にあるのは、失業や休職、勤務日数の減少です。また、本調査の対象者は、もともと経済的困難を抱える世帯であるため、所得減少が与える生活への影響が大きく、深刻化する恐れがあります。

<保護者の声>
・子供の身体と心の安全、勉強に不安をかんじながらも、収入が不安で仕方がない。
・食費が2~3万円増えて生活がとても苦しくなりました。
・必要な時に必要な日用品が買えない。母子家庭である事から普段は給食費がかかっていなかったので、学校が休校になり食費が凄く大変になった。食費だけでなく季節的に光熱費も負担が大きいです。

調査結果②:家庭に通信環境や機器がなく、オンライン教育の利用が困難

臨時休校や分散登校下における学校のオンライン授業の取り組みは、自治体や公立私立により導入の差が見受けられました。また、学校外においては、拡充傾向にあるオンライン教育サービスの活用が、各家庭の通信環境や情報リテラシーに左右されることがわかりました。

家庭の通信環境を調査したところ、生活困窮世帯の子どもの4人に1人が自由にインターネットを利用できる環境にないことがわかりました。また、およそ2人に1人の子どもは、パソコンやタブレットを自由に使えない状況にあり、オンライン教育などの様々なサービスを利用することが困難だと考えられます。

なお、休校期間中に家庭で何らかのオンライン教育(※)を利用した割合は20.4%に留まりました。利用しなかった理由を尋ねると、半数以上が「情報不足」をあげており、環境整備だけでなく情報提供等のアクセスへのサポートにも課題があることがうかがえます。

※学校のオンライン授業、塾のオンライン授業、学習教材、動画コンテンツ等。有料・無料いずれも含む。

<保護者の声>
・生活保護世帯で、パソコンやタブレット等を子どもに買い与えることができない為、オンライン学習や無償提供の各教育サービスを受けるとこができません。
・今週から塾のオンライン授業が始まるのに、スマホでは画面が小さくやりずらい為、中古パソコンを購入したりと余計な費用がかかっている。
・学校から出された課題をやって過ごしています。今後、ネットの遠隔授業が始まるようですが、はじめてのことなので、理解していけるかどうか不安です。

調査結果③:多くの子が学習や進路への不安を抱えている

休校による影響は、子どもの学習の遅れや進路に対する不安にも現れています。中高生に休校措置や外出自粛によって生じた困り事や心配事を尋ねたところ、40%以上の子どもが「学習に関すること」と回答しました。また、受験生(高校3年生)の68.4%が「進路や進学に関すること」を心配事にあげています。

<子ども・保護者の声>
・授業が遅れるから、今後どうなるか心配(子ども)
・学校開始が遅れることにより今後ある高校入試にどう響くのかが不安です(保護者)
・家庭学習がきちんとできるか、学力が落ちないか、受験に影響がでないか心配です。(保護者)
・勉強の遅れや休校中に宿題が出されてるとはいえ身についていない気がする(保護者)

考察①:生活困窮世帯の子どもへの学校外教育支援の必要性

本調査より、新型コロナウイルスの影響で多くの生活困窮世帯の経済状況が悪化していること、また子どもたちにとって学習や進路に関する不安が大きいことがわかりました。

一方、全国的な休校措置によって、子どもたちは長期間、家庭での学習を余儀なくされました。休校期間中、保護者が子どもの家庭学習をサポートしたり、学習塾等の学校外教育費用を負担したりできる世帯と、それらができない生活困窮世帯の間では、大きな格差が生まれてしまっています。

学校は地域により再開されたものの、休校期間中の遅れを取り戻すために従来よりも早いペースで授業が進むことになり、引き続き保護者には家庭学習のサポートが求められます。また、いつ第2波が押し寄せ、学校が休校になるかわからない不安定な状況にあります。

学校教育の不安定な状況により、今後、家庭学習のサポートや学校外教育のニーズはさらに高まると同時に、家庭の経済格差が拡大することにより、子どもの教育格差がこれまで以上に拡大する恐れがあります。

考察②:通信環境整備の必要性

本調査より、生活困窮世帯の約2人に1人の子どもが自由に使えるPC・タブレット端末がなく、4人に1人はインターネット接続に課題があることがわかりました。この状況は、学校のオンライン授業の導入を妨げるだけでなく、家庭での学習環境の格差を生み出します。一日でも早く、全ての子どもの自宅通信環境を整備し、この格差を埋める必要があります。

考察③:オンライン教育を有効にするための個別支援の必要性

本調査より、休校期間中に何らかのオンライン教育を利用した子どもは全体の2割程度であることがわかりました。休校期間中には様々なオンライン教育サービスの無償提供が行われましたが、実際に利用に至ったのは一部であることがわかります。

未利用の理由としては「情報不足」が大半でしたが、「子どもの学習意欲」や「通信機器の操作への不安」を理由とする声も一定数ありました。子どもがオンライン教育にアクセスし、かつ有効活用できるか否かは、通信環境だけでなく、子ども本人の学習意欲、保護者の教育関心度、ITリテラシーや情報収集力に大きく左右されます。

以上のことから、私たちCFCは、新型コロナウイルスによる影響を受けた子どもたちに対し、より適切な支援を届けられるよう全力を尽くしていきたいと思います。

公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン:新型コロナウイルスの影響を受けた生活困窮世帯の子どもに関する調査報告書

Author:高田絵梨
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン 職員。
1986年北海道札幌市出身。大学卒業後、一般企業に就職し、人材育成や採用業務に携わる。幼少期から青年期までの多様な学びや経験が、後の社会人生活においての糧になるとの思いから、チャンス・フォー・チルドレンの取り組みに深く共感し、入職。同法人では、新型コロナ緊急子ども支援事業を担当し、支援事業の立ち上げやリサーチ業務などを行う。

Editor:今井悠介

公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事。大学在学中に、不登校児童等の支援に携わる。卒業後、株式会社公文教育研究会(KUMON)に入社し、子どもの学習指導や学習教室のコンサルティング業務に従事。東日本大震災後、チャンス・フォー・チルドレンを設立し、代表理事に就任。子どもの貧困対策センター・公益財団法人あすのば アドバイザー、学校法人軽井沢風越学園評議員。共著「東日本大震災被災地・子ども教育白書2015」。

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新型コロナの影響で経済的困難を抱えた子どもたちをご支援ください!


新型コロナの影響を受け、多くの子どもやご家庭が経済的困難な状況に陥っています。ウイルスとの共存フェーズに入っていく中、子どもたちが経済的な理由で塾や習い事での学びを諦めることがないよう、CFCは緊急支援プロジェクトを立ち上げました。

これまでの子どもたちの支援経験を活かし、新型コロナの影響で経済的困難を抱えた子どもたちに対して、オンライン教育を含む学習塾や習い事等で利用できるスタディクーポンの臨時給付等の支援を行い、子どもたちが安心して学び続けられるようサポートします。

子どもたちに支援を届けるために、皆様の温かいご支援をお願いいたします。



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