Eduwell Journal

2020年8月号 vol.90

コロナ禍における子どもへの心理的影響とは?―孤独感、自傷・暴力行為。小学生のストレス反応・症状が顕著。

2020年09月04日 12:57 by eduwell_journal

新型コロナウィルスの感染拡大により、2020年3月頃から子どもたちを取り巻く環境は大きく変わり、8月になった今も例年とは異なる状況は続いています。災害時と同じように環境の急激な変化は、大人にも子どもにも大きなストレスとなり、その影響が中長期的に続いていくことが懸念されます。今回の記事では、コロナ禍における子どもの心理的影響について考えます。

国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)は、6月22日にコロナ禍における子どもたちの生活と健康の様子についての第一回調査結果を公表しました。本調査は、2020年4月30日~5月31日にインターネットを通じて全国を対象に行われ、7歳~17歳の子ども2,591名、0歳~17歳の子どもの保護者4,750名の合計7,341名からの回答を得たものです。(国立成育医療研究センター:コロナ×こどもアンケート

約75%の子どもにストレス反応・症状

本調査では、以下のように子どもたちのストレス反応・症状の有無を確認しています。なんらかのストレス反応・症状が見られた子どもは、全体の約75%となっています。


国立成育医療研究センター:こどもたちの生活とこころの様子より引用)


国立成育医療研究センター:こどもたちの生活とこころの様子より引用)

ストレス反応・症状の回答について詳細を確認すると、「さいきん集中できない」という項目では、高校生の割合が大きいものの、他の項目では小学生の割合が多いことがわかります。

「コロナのことを考えると嫌な気持ちになる」「考えたくないのにコロナのことを考えてしまって落ち着かない」「コロナのことは考えないようにしている」という回答からは、情報リテラシーや社会経験がまだ未熟な小学生が苦慮している状況がわかります。

また、それに対する睡眠への影響として、「いやな夢(悪夢)をよくみる」「なかなか寝つけなかったり、夜中に何度も目が覚めたりする」という症状が現れ、「だれかと一緒にいてもひとりぼっちだと感じる」「すぐにイライラする」「自分の体を傷つけたり、家族やペットに暴力をふるうことがある」というような精神的な影響が現れていることがわかります。特に自傷行為や暴力行為に至る小学1年生~3年生が18%と最も多い状況は、心のケアが急がれる状況です。

増える家庭内でのトラブル

コロナ禍では家庭で過ごす時間も増えており、保護者にも日常とは異なるストレスが生じ、コロナ前に比べても家庭内でのトラブルが増えています。生活上のサポートが必要な未就学児や小学生は、中学生や高校生と比べても、家庭内でのトラブルを多く経験しています。以下の調査結果では、「どなられる」「たたかれる」などのトラブルが多い状況について子ども、保護者の両方で確認することができます。


国立成育医療研究センター:「コロナ×こどもアンケート」第1回調査報告より引用)


国立成育医療研究センター:「コロナ×こどもアンケート」第1回調査報告より引用)

連絡がとれず孤独を感じやすい状況に

コロナ禍では、以前よりもオンラインでのコミュニケーションが活発になりました。子どもたちの学びについても、オンライン学習が頻繁に取り上げられるようになりました。大人はインターネット等を通じて、様々なコミュニケーションが可能ですが、子どもたちは友達とどのように連絡をとっていたのでしょうか?

通信機器を個人で所有している割合の高い中学生や高校生は、電話やビデオ通話、LINE等で友達とコミュニケーションを取ることができていたようです。しかしながら、小学生は「会ったり連絡をとったりはしていない」という割合が多くなっています。中学生や高校生よりも通信機器を個人で所有している割合が低く、利用する場合も保護者が一緒に対応する必要が出てくるため、小学生は外部とのコミュニケーションを思うように取れていなかったと考えられます。

調査の中では、子どもたちが相談したいことについても尋ねています。「学校や勉強のこと」は、中学生・高校生の割合が高くなっていますが、その他の項目では、小学生の割合が最も多くなっていることがわかります。外部とのコミュニケーションが取りにくい中で、家族以外の誰かに話を聞いてもらいたいという気持ちが高まっているのではないでしょうか。「家族のこと」については、家族には話し難い内容であり、友達や先生など外部の人とのコミュニケーションが必要となります。


国立成育医療研究センター:「コロナ×こどもアンケート」第1回調査報告より引用)

急がれる子どもの心のケアの場と機会

上記の調査結果からも、特に小学生の心のケアが必要となっていることが見てとれます。

小学生・学童期は段々と親から離れ、友達同士の関係が深まっていく時期です。特に小学校の中学年は「ギャングエイジ」と呼ばれ、様々な遊びなどを通じて仲間集団を形成し、「われわれ意識」を持つようになる頃です。ソーシャルスキルを得ていくための大切な期間でもあり、コロナによって「群れる」ことが忌避されてしまう状況は、子どもたちにとってとても辛いものです。

子どもたちの交友関係は、様々な関わり合いの中で意図せず生まれてくるものです。リアルな関わり合いの中で築いた関係性を補完する目的でオンラインでのコミュニケーションを用いることは良いとしても、視覚・聴覚に限定されたオンライン上のコミュニケーションで新たに関係を築いていくことは、小学生以下の子どもたちにとっては、とても難しい状況です。そもそも、オンラインで繋がれる通信機器を自由に扱える状況にないという問題もあります。

6月以降、学校が再開されましたが、以前のような友達との関わりもできず、授業時間の確保や感染予防の観点から様々な学校や地域の行事も延期・中止となっています。また、地域によっては子どもが公園で遊んでいるとクレームが入るなど、放課後も自由に遊ぶことが難しい現状もあります。感染拡大が再び広がり、影響が中長期化していくと予想される中、子どもたちの心への影響も悪化していく可能性があります。

子どもたちの心身の健康を願うのであれば、子どもたちの声にしっかりと耳を傾け、感染予防と平行し、特に小学生のメンタルヘルスにつながる場や機会を設けていくことが急務だと考えられます。

Author:Eduwell Journal 編集部
本記事の執筆は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。「Eduwell」は、本メディアがテーマとしてきたEducation(教育)、welfare(福祉)、well-being(ウェルビーイング)の3つの言葉をつなぎ合わせて作られた造語です。本メディアは、子どもや若者を対象とした社会教育事業に取り組んでいる認定NPO法人「夢職人」が発行しています。

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