Eduwell Journal

2020年10月号 vol.92

学校再開後に急増する女子中学生・高校生の自殺-コロナ禍の10代女子の自殺者数が前年比4倍に

2020年10月13日 12:44 by eduwell_journal

著名人の方の自殺が相次いで報道されています。厚生労働省では、メディア関係者に対して、「子どもや若者の自殺を誘発する可能性」があり、「新型コロナウイルス感染症の影響で、健康面だけでなく生活面や仕事面でも不安を抱えている人が多い現状においては、さらに自殺報道の影響が大きくなることが懸念されること」という点も踏まえ、WHO の「自殺報道ガイドライン」に沿った報道の徹底を要請しています。

厚生労働省:著名人の自殺に関する報道にあたってのお願い

新型コロナウィルスの感染拡大により日常生活が大きく変わり、様々な場面でこれまでにないストレス・精神的な負担が生じています。以前の記事(コロナ禍における子どもへの心理的影響とは?)の中では、子どもたちに広く心理的な影響を及ぼしていることをお伝えしました。

今回の記事では、厚生労働省が公表している自殺統計のデータをもとに、コロナ禍において、誰がその影響を大きく受けているのか考えます。

7月・8月と自殺者数が増加に転ずる

厚生労働省は、警察庁から提供を受けた自殺統計原票データに基づいて、毎月集計を行い、公表しています。2020年8月と前年(2019年8月時点)のデータと比較すると、以下のような状況となりました。対前年倍率が1倍以上の箇所が黄色になっています。

新型コロナウィルスによる影響が広がり、緊急事態宣言などにより外出自粛等の制限があった2020年3月から5月までは、前年と比較すると自殺者数は大幅に減少していることがわかります。緊急事態宣言は、社会生活の大きな転換が短期間で迫られ、「生活が行き詰まり、自殺者が増えるのではないか?」という見解もありましたが、実際には減少しています。

緊急事態宣言が解除され、段階的に社会生活が再開された6月もまだ自殺者数は、合計では減少していますが、7月から女性の自殺者数が増え、8月には全体にも増加に転じています。上記のグラフからも特に女性への影響が増えていることは明らかです。

どこの地域の自殺者が増えているのか?

地域における自殺者数の増減はどのようになっているのでしょうか?都道府県別の対前年同月の自殺者数を比較すると、以下のようになります。左側の図は「増減数」、右側の図は「増減率」をもとに上位5県を示しています。

「増減数」から見ると、新型コロナウィルスの影響も大きく、人口も多い都市部での増加していることがわかります。「増減率」の1位は福井県となっており、人口あたりの感染者数で上位に位置していたこともあり、新型コロナウィルスの影響があったとしてもおかしくない地域です。

新型コロナウィルスの影響が大きかった地域ほど、生活上の様々な制約が長く厳しく続いていることもあり、比例してストレス・精神的な負担も大きかったと推察されます。

どの年代の自殺者数が増えているのか?

年代別での自殺者数はどのようになっているのでしょうか?年代別の対前年同月の自殺者数を比較すると、以下のようになります。

多くの年代や性別において、対前年倍率が1倍以上となっており、前年よりも多くなっていることがわかります。

ここで注視する必要があるのでは「20代未満」です。男女ともに増加し、合計でも前年よりも2倍以上となっています。特に「20代未満」の「女性」については、前年よりも4倍となっており、著しい影響があったと考えられます。

急増する中学生・高校生の女子の自殺

「20代未満」の自殺者数の内訳について、さらに詳細に分析すると以下のようになります。

どの学年や性別を見ても自殺者数が増加していますが、中学生の女子で4倍、高校生の女子で7倍以上となっています。前年に対して、これだけ高い倍率となっていることは、他の年代や性別と比較しても著しく高く、問題の深刻さを表していると言えます。

女子中学生・高校生の自殺の原因・動機とは?

では、なぜ、中学生や高校生の女子の自殺が急増しているのでしょうか?厚生労働省が公表している調査の中では、自殺の原因や動機についても示しており、前年と比較すると以下のようになります。

上記の図表は年代別ではなく、自殺者の中で、原因や動機が特定できた方の総数となっています。「学校問題」の増加が顕著に示されています。特に女子に関しては、6倍以上となっており、先のデータの結果との関連が推察されます。

6月から学校が再開し、授業の遅れを取り戻そうと授業時間の延長や夏休み期間の短縮などの対応が図られていた時期となります。この間が学校でのなんらかのトラブルが生じやすい状況になっていたと推測されます。

「学校問題」の中では、学業不振や進路の悩みなどが含まれていますが、下記の図表で示されている通り、複合的な原因や背景があることを前提に考える必要あります。


平成30年中における自殺の状況:厚生労働省社会・援護局総務課自殺対策推進室、警察庁生活安全局生活安全企画課

新型コロナウィルスの感染拡大により3月から5月まで休校期間となった際、10代の予期せぬ妊娠に関する相談件数が増えていることが各地の支援機関から報告されました。

思いがけない妊娠の相談窓口を運営している「にんしんSOS東京」(特定非営利活動法人ピッコラーレ)では、休校期間中における全体の相談件数は昨年比1.2倍となっており、なかでも10代の相談者数は1.8倍にも増えたことが明かされました。

実際に相談者からは「外出自粛の影響でコンドームを買いにいけなかった」、「家でのデートが増え、その場の雰囲気に流されてしまった」という声もあることから、背景のひとつには休校により屋内でのデートが増え性行為を体験する頻度が高まったことなどもあるのでは、と副代表で助産師の土屋麻由美さんは推測しています。

コロナ禍で相談が増える“予期せぬ妊娠”を考える

このような状況が中学生や高校生の女子への自殺者数の増加の一因となっていることも懸念されます。

今後も注視が必要な子どもたちへの影響

新型コロナウィルスの感染拡大による影響は、今後も続いていく可能性が高く、感染拡大と心理的な影響等に関してタイムラグがあります。今回は、2020年8月までのデータを取り上げましたが、9月以降のデータについても注視が必要です。

コロナ禍における影響が「20代未満」の子どもたちに明らかに現れてきており、この状況がこれ以上に深刻化しないように、対処と予防の両側面から受け身ではなく、より積極的な支援のあり方が求められています。

Author:Eduwell Journal 編集部
本記事の執筆は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。「Eduwell」は、本メディアがテーマとしてきたEducation(教育)、welfare(福祉)、well-being(ウェルビーイング)の3つの言葉をつなぎ合わせて作られた造語です。本メディアは、子どもや若者を対象とした社会教育事業に取り組んでいる認定NPO法人「夢職人」が発行しています。

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