Eduwell Journal

2020年11月号 vol.93

コロナをきっかけに地方移住を考える20代・30代のキミへ-移住して後悔しないために知っておくべき3つのこと

2020年11月10日 11:23 by shoko_hatano

コロナ禍でテレワークやワーケーションという言葉が脚光を浴び、地方移住を考える人が増えているというニュースを目にするようになりました。

実際には埼玉・神奈川等の近県への流出が多いという話もありますので、その真偽はさておき、この風潮に沸き立っている地方があるのは事実です。

3年前、ちょうど30歳で東京から宮崎へ移住した自身の経験から、もし20代、30代で移住を考えるなら知って欲しい3つのことを私なりのメッセージとしてまとめました。

手放したくないもの、手に入れたいものから考える

あなたは今、どんな生活をしていますか?

仕事にはどれくらい重きを置く?
仕事帰りは同僚や友人と飲みに行く?
旅行は年にどれくらい?
家族とは朝も夜も一緒に食事をしたい?
趣味は?

移住をすると、その全てが影響を受けます。海外旅行をするにも、一度東京か大阪を経由しなければなりませんし、趣味でやっていた演劇や卓球は世代や活動日が合うコミュニティが見つからず、できなくなりました。

一方で遅くまで仕事をすることがなくなったので、自炊や睡眠時間が増えて健康になりました。友人の結婚式でさえ気軽に行くことはできなくなりましたが、思い付きで山や海に散歩に行けるようになりました。

あなたが手放したくないもの、また手に入れたいものは何でしょうか?

移住と言うと、都会か地方かという二元論で語られますが、実際には様々な選択肢があります。

23区内に住み、夜遅くまでバリバリ働く生き方から山奥で自給自足する生き方までの幅広いグラデーションの中で、自分のライフステージや取りたいライフスタイルに基づき、環境を選ぶべきです。

私はもともと、地元熊本へ帰ろうと考えていました。しかし、納得のいく仕事が見つからず、悩んでいたときに当時の上司に「九州に帰るのであれば日南市が面白いよ」と提案をされ、日南市で中心的に活動をされている方を紹介してもらいました。

日南市を選んだのには2つの理由があります。1つ目に縁があったこと。運のようにも見えますが、移住先でキーとなる人と知り合いであれば芋づる式に人脈が拡がり、地域コミュニティに入っていくことができます。

2つ目に、日南市に変わっていこうという勢いを感じたこと。当時33歳という九州最年少の市長が誕生し、企業誘致や商店街活性化など様々な改革を進めていました。その改革の内容というより、33歳の市長を選挙で選ぶようなまち・市民に興味を持ったのです。

北か南か、山か海かでも産業構造・風土・市民性は変わりますので、その点を十分に吟味してほしいと思います。


(移住して自然がより身近に。山や海に出かけやすくなりました。)

仕事に重きを置くなら、専門性を高めてから移住する

もしあなたが仕事よりも家族や趣味などを優先するために移住するのであれば、もしくは完全テレワークで仕事に困っていないのであれば、この項目は読み飛ばしていただいても構いません。

ただ、移住先で自分にしかできない仕事をしたい、と望むのであれば、自分の武器となる専門性を身につけてからの移住をお勧めします。

私が思う地方の最大のデメリットは、専門性を高める場が非常に少ない、ということです。人口が少なければ少ないほど、マーケットは小さくなりますので、当然と言えば当然です。

たまにWEBデザインやプログラミングのスキルを身につけたい、という相談を受けることがあるのですが、宮崎市内であっても初心者向けの講座ばかりで、仕事で十分に扱えるレベルまで高めたり、中上級者がさらに学んだりという場はほとんどありません。

最近はオンラインで学ぶ場も充実していますが、「何を」学ぶかより「誰と」学ぶかが大事になってくるようなケースでは、やはり人の集まる都市部が有利です。高い専門性を持った人たちとの人脈もまた、都市部でないとなかなか得られません。

働きがいを求めたい、自分にしかできない仕事がしたいと考えるのであれば、知識・経験ともに自分はこれが武器になる、と言えるものを身につけてから移住した方が、仕事の充実に繋がると思います。


(東京で得た経験をもとに、中高生のキャリア教育や企業の社員研修などに取り組んでいます)

「地方創生」と付き合う必要はない

移住者と言うと地域を活性化してくれる救世主、みたいな見方をされることもありますが、あなたがそれを専門にしていきたいのでなければ、無理に付き合う必要はありません。

もちろん、地域によっては消防団に入ってくれとか、お祭りを手伝ってくれ、とか、そういった地域コミュニティでの役割はあるかもしれません。そういった付き合いは、無理しない範囲でしておくと、何かあった時に助けてくれることもあるでしょう。

しかし例えば、「移住を検討している人に移住の先輩として話をして欲しい」という依頼が来ることがあります。

その程度ならと引き受けていると、移住者を増やす企画をしているので意見が欲しい、そのうち企画委員会を立ち上げるから実行委員になってほしい、みたいな形でどんどん巻き込まれることもあります。

移住者だからといって、企画力とか、マーケティング力とか、発信力といった能力が人並み外れて高いわけではありません。メディアに取り上げられ、大きな成果を上げなければというプレッシャーにさらされ、自分のやりたいことや実力とのギャップに悩む若い移住者を何人も見てきました。

残念なことですが、持ち上げられるだけ持ち上げられて梯子を外されるケースもあるのだと、知っておいて欲しいと思います。


(移住して新たに出会った方も多く、素敵なコミュニティに加わることができました)

移住するタイミングはいつが良いか?

私は3年前に移住した時、とりあえず3年と思って移住をしました。移住でうまくいかなくても、35歳までなら東京に戻って再び希望する仕事に就くことができるだろう、と考えたからです。

フリーランスになるつもりはありませんでしたが、宮崎で私がやりたいことをやるにはフリーランスしかありませんでした。始めは売上が立たず、貯金額が東京にまた引っ越せるだけの額を切るようならすぐ東京に戻ろうと決め、ギリギリまで追い込まれました。

最初に選んだのは日南市でしたが、今は夫の都合で宮崎市に移っています。

移住のタイミングは人それぞれだと思いますが、個人的にはこのタイミングで良かったと思っていますし、いつがいいかと聞かれたら「20代後半~30代前半が良いのでは」と答えます。前述したように、仕事の専門性がつき、自分はこれができる、と言えるようになっていた方が仕事がしやすいからです。

また、お子さんが生まれてから良い子育て環境を求めて移住するという話も聞きますが、もし、子育てのことだけでなく自分自身の仕事やライフスタイルも大事にしたいのであれば、お子さんが生まれる前の方が良いように思います。お子さんがいることで飲み会やイベントに出ることができず、孤立化して悩んでいる方とお会いすることもあるからです。

と、ここまで色々と書きましたが、地方移住は手段であり、結婚や転職などと同じくそれ自体に良いとか悪いとかがあるわけではありません。私自身も地方移住がしたかったのではなく、父を亡くし、一人になった母にもう少し気軽に会いに行ける所に住もうと思ったことが大きなきっかけです。

住む場所というのは仕事やライフスタイルと密接に結びついています。移住を考えるということは、その全てを見つめなおすということであり、常に変化する自分の大事なものを捉えながら柔軟に対応していくことだと思っています。様々な形があって当然だと思いますので、ぜひ、皆様のご意見をお寄せください。

Author:羽田野祥子
教育・研修プランナー。1987年、熊本県八代市に生まれる。東京の大学に進学し、卒業後は企業の新卒採用を支援する会社で営業職に就く。その後、研修企画会社を経て教育関係のNPO法人で新規事業の立ち上げやマネジメントを経験し、2018年10月に宮崎県日南市へ移住。現在は「地方と都市部の教育格差を解消する」をミッションに掲げ、フリーランスとして中高生のキャリア教育や企業の社員研修などに取り組む。

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