Eduwell Journal

2021年1月号 vol.95

中高生が実際のお金を使ってオンラインショップの経営に挑戦!-「にちなん起業体験プログラム」開催レポート(前編)

2021年01月12日 15:44 by shoko_hatano

 「起業家教育」と聞いて、どんな教育をイメージするでしょうか。

起業家を育てるための教育?その一面もありますが、もっと広い意味で起業家精神(アントレプレナーシップ)を育む教育とも言われています。

アントレプレナーシップの定義は様々ですが、一般的には新しい価値を生み出す創造性やリスクを恐れないチャレンジ精神などが含まれるようです。

リーダーシップがリーダーを務める人だけに必要な力ではないように、アントレプレナーシップもまた、起業をする人だけに必要な力というわけではありません。

急激な社会の変化に対応しながら事業を運営することが、官民関わらず多くの人に求められており、そのための力としてアントレプレナーシップが注目されています。

そんな「起業家教育」につながるプログラムを、宮崎県日南市にて開催したレポートです。


(最初のアイディア出し。各グループに一人ずつメンターとして大人がついた)


<開催概要>
にちなん起業体験プログラムは、中高生が「起業家」となり、本物のお金を使ってゼロから事業を立ち上げる社会体験プログラムです。
事業計画を立て、商品を準備し、実際にオンラインショップを自分たちで運営します。
参加者:14名(中学生7名、高校生7名)
主催:日南市ローカルベンチャー事務局
協力:BASE株式会社
後援:宮崎県・宮崎県教育委員会・日南市・日南市教育委員会
URL:https://kigyo-taiken.info/

「企画」で終わらせずに「実践」から振り返る

今回、最も重視したのが「企画」で終わらせずに「実践」からフィードバックを得て改善を繰り返していく、というプロセスです。具体的には以下の流れで実施しました。


参加者に集まってもらったのは全部で六回。

第二回では早速、投資家となる大人へのプレゼンがあり、厳しい指摘の数々に計画の見直しが迫られました。

第三回では商品の準備やオンラインショップの設定に取り掛かり、第四回では地域の小さなショッピングモールでテスト販売。お客さんの反応を見て、商品のラインナップや価格を見直しました。

第五回にも中間の振り返りを設定し、前半の販売結果を元に、残りの1ヶ月の計画を立てる、という形をとりました。

学校外のプログラムで中高生を集めるとなると、期間も回数もそう多くはできないという裏事情もありますが、経験のない中でいつまでも議論をするより、とりあえず出してみて修正を加えていくという進め方は良かったのではないかと感じています。


(4~5名×3グループ編成。学校や学年のバランスを見ながら事務局で割り振りを行った)

商品への「付加価値」が「利益」になる

起業体験の特徴は、お金を稼ぐ仕組みを体感できることだと思います。「お金を稼ぐ」と言うと生々しい感じもしますが、「自分自身で価値を生み出して対価を得る感覚」と表現すると、伝わりやすいでしょうか。

今回はオンラインショップの経営ということで、手に取れる商品が必要でした。単純に商品を仕入れて販売するにしても、そこに何か付加価値がなければ、自分たちの利益を乗せて販売することはできません。

アイディアを出したり、手を動かしたりして、仕入れた商品や材料に付加価値をつけ、それを売値に反映させて利益を得る。そのアイディアや手間・技術にお金を払う価値がなければ、お客さんに買ってもらうことはできません。

職場体験やアルバイトでも労働の対価として給与をもらう感覚は得られると思いますが、その給与は「会社から出るもの」という印象が残ります。しかし実際には、その先にいるお客さんが商品やサービスを買ってくれることによって生まれるお金です。(全ての業種に当てはまるわけではありませんが)

自分の労働がお客さんにどんな価値を提供できているのかを考え、そこから利益が生まれるというビジネスの仕組みを知るには、起業体験が最適ではないかと思います。

(模擬出資を募るプレゼン会。商品の特徴や価格の根拠など、様々な質問がなされ、緊張感の高い場となった)

お金は模擬的な「出資」で集める

中高生のチャレンジというとクラウドファンディングが一般的ですが、クラウドファンディングを集めるための労力や返礼品の準備・発送などが必要になりますし、お金を出してくれた人たちの顔が見えにくくなってしまいます。

今回のプログラムでは、地域の大人に1口1,000円の模擬的な出資を募り、それを元手に商品や材料を仕入れました。自分たちでも一人3,000円ずつ出資し、集まった金額は各グループ3~4万程。

事業プランの具体性や期待値で評価されたグループと評価されなかったグループは大人からの出資額に1万円の差が生まれていました。これもまた現実であり、学びです。

最後には決算を行い、利益に応じて返金をする、という形だったので、売れなければお預かりした1,000円を減らしてお返しすることになってしまいます。その責任も問われました。

ちなみに出資金が足りなければ事務局銀行が貸付をする(金利0.01%)という仕組みも作っていましたが、お金を借りることへのネガティブなイメージがあるのか、利用するグループはありませんでした。

振り返ると、結構、難しいことを課していたのかもしれません。しかし、参加者14名は一人も脱落することなく最後までやり遂げてくれました。

次回は実際にどんなビジネスが立ち上がり、どんな結果に終わったのか、参加者たちの様子をレポートします。

●関連記事:中高生が大人の一日に密着し、本気の「働く」に触れる教育プログラム-「第一回まちのジョブシャドウイング in 日南・串間」開催レポート

Author:羽田野祥子
教育・研修プランナー。1987年、熊本県八代市に生まれる。東京の大学に進学し、卒業後は企業の新卒採用を支援する会社で営業職に就く。その後、研修企画会社を経て教育関係のNPO法人で新規事業の立ち上げやマネジメントを経験し、2018年10月に宮崎県日南市へ移住。現在は「地方と都市部の教育格差を解消する」をミッションに掲げ、フリーランスとして中高生のキャリア教育や企業の社員研修などに取り組む。

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