Eduwell Journal

2013年11月号 vol.9

貧困状態にあると言われる子どもたちは、何に困っているのか?-「つながり」を失った子どもたち

2020年05月23日 23:59 by takuya-murai


(学習支援プログラムの様子)

「家にいると息が詰まる」

「子どもの貧困」が叫ばれ、国も「子どもの貧困対策法案」を国会で成立させた2013年。貧困は単純に所得の問題だけでなく、低所得になった要因としての個人要因、環境要因をしっかり読み解く必要がある複雑なものです。所得が低い状況にあっても幸せに暮らす方々がおられるように、「貧困≠貧乏」です。

「貧しく」「困っている」状態である貧困は、何に困っているのかということに想像力を働かしていくことが大切だと思っています。

そのなか、私たちが普段取り組んでいる「子ども」たちは何に困っているのか。

そんな子どもたちのなかのある1人が言った言葉が冒頭の一言。みなさんにも大なり小なりそういう気持ちになることもあると思います。多くの子どもたちは、友達やまわりのおとなとのコミュニケーションによって、さまざまな状況に対応できるコミュニケーションを身につけ、また心を落ち着かせる術も身につけていきます。

しかしその経験が極端に少なく、どうにもならないエネルギーを家で、力任せに暴言や暴力で発散してしまう。そんな自分がダメなことも自覚はしているので、我慢しようとする。そんな我慢が息を詰まらせていく。息抜く場であるはずの家だったのに。


(生活支援プログラムの様子)

「家、学校、地域、、、そこに居場所がなければ」

家が居場所にならないということは思いのほか多く、またその原因もさまざまです。

三世帯家族であっても、祖父母が介護が必要な状況で介護をしている母、認知症などもあり介護がしんどくノイローゼに。その不満を父にぶつけるも、仕事でストレスを抱えて帰宅する父に受け止める力はなく、夫婦喧嘩が耐えない。

結果、父は喧嘩するくらいならと家に帰る時間が遅くなる、お酒でごまかす。さらにしんどくなった母は鬱に。父が状況に気づいたときは手遅れ。そして両親は完全にコミュニケーションがとれないくらい関係悪化で離婚。その間弟の面倒をかろうじて見ていた私は、家事全般をひとりでこなす。

父が去り、より家をなんとかしないとと家事をするが、もちろん体力的にしんどく学校も休みがちに。休んでいる間についていけなくなった勉強。たまにいっても、「なんで休んでる?」「こんなんもわからないの?」「お前のじいさん徘徊しとったで」、、、行く気も失せる。町内からは祖父の徘徊や迷惑行動に最初はやさしかったのですが、だんだんクレームの対象に。

弟は学校でいろいろ言われ公園で同級生と大声出して喧嘩。地域から学校に「喧嘩なんとかしろ」「静かにさせろ」と連絡がいくので、先生が対応して家に連絡してくる。「しっかりしなさい」「ちゃんとしなさい」「勉強もおくれているんだからちゃんと学校きてがんばりなさい」、、、無理です。

家の中は息がつまり、学校、地域には居場所も頼るつながりもない。どこで歯車は狂ったのか。一度狂いだしたら、割る方へ悪い方へどんどん孤立していく。

このような「居場所を失っていく」話は、実際に私が代表をつとめる山科醍醐こどものひろばの活動に参加している子どもたちの中のエピソードや、全国のさまざま支援活動をされている方々から伺ったお話をつないで描いてみたものです。

いかがでしたか。思った以上に自然に貧困になり、つながりを失っていく感じがしませんか。貧困というものはさまざまなものを子どもたちから奪っていきます。その奪い方はまるで呼吸をするかのように自然に、子ども自身が「私何か悪いことした?」と自分を責めたくなるくらいに奪っていきます。今回は「つながり」を軸に、前回の記事(貧困が子どもから奪っていくものとは何か?-将来、働くという選択肢を失った子どもたち)に引き続き「子どもの貧困対策」について書いていきたい思います。


(生活支援プログラムの様子)

地域で子育てと言うけども

「貧困」は何に困っているのか。ひとつ浮かび上がるのは、さきほど紹介した話のような負のスパイラルから抜け出だしたいけどどうしたらよいかわからないという壁に困っているということがあるのかなと。もちろん困っていることは他にもたくさんありますが、今回はここから。この負のスパイラルはだれにも起こりえることであり、子ども自身の自助努力だけではなかなか抜け出すことは難しい問題です。もちろん親ががんばればというケースかもしれません。核家族だったら起きなかったのではと思う方もいるかもしれません。しかし仕事の場面ではリストラや倒産、職場の人間関係などのストレス、家では育児ストレスなどでぶつかることはよくある話です。

我慢すればよいという方も多いですが、抱え込んで「病気」「自殺」という方が増えているのが今の社会です。家族形態に関わらず起こりえる問題です。そして、そのようなストレスの中で育った子どもたちはコミュニケーションに課題を抱えていたりすることで学校でトラブルを起こすこともある。学校ではそのような対応をクラスの生徒数分関わり、保護者との連絡など対応しながら学校教育としての授業と学校行事をこなしていく。正直、学校で子ども一人ひとりの生活も支えていく時間はないでしょう。いじめや不登校などもっと学校頑張れという声に応える余裕は無い。

家も、学校も本音は「言われんでも頑張っているわ」という気持ちだろう。だからこその地域で子育てといっても、地域は家や学校の代替機能というわけではないので、課題が多数、複雑化でてきても、確実に対応できるわけではありません。また地域活動の多くは自治会や町内会等をベースにしていることも多いですが、加入していない方も多く、普段からつながっていない状況で、困ったを言える関係でも、助ける関係でもありません。そもそも地域を構成している各家族が問題を抱えているのだから、対応も無理というものです。

(小学校の放課後の活動での一コマ)

子どももおとなも、家、学校、地域で無理してる。

頼る当てのない家族と、そこを居場所に感じることが出来なくなった子どもたちが、同じような境遇の子どもたちと夜地域の中で会うようになる。ストレスの発散や同じ境遇だからこその悩み相談など。しかし社会は、そのような子どもたちを非行として指導するようになる。学校も多くの子どもたちに教科教育をこなすために指導ばかりする。ある子どもは、「学校の先生やおとなは怒るだけの人だと思っていた」と言うくらいである。そんなおとなの言うことを聞くはずもありません。ここでも悪循環。そしてお互いがお互い無理をするようになり疲弊する。疲弊したおとなをみて、子どもはさらに将来を悲観する。

山科醍醐こどものひろばの子どもの貧困対策事業では、そんな子どもたちともおとなとも出会う。立場が違えどそれぞれ悩みを抱え「困って」いる。だからこそ私たちが取り組んでいることは、暮らしを食事や入浴、学習などを支えることをきっかけに、そんな「困った」を吐き出せる機会をたくさん、多様に創りだすことに取り組んでいる。出会った頃はひたすら1人で話をしている子ども、攻撃的な口調で話する保護者はもちろん、学校も地域も助けてを言えずにいた方々が「困っている」と言えたことで憑き物がおちる。もちろん問題そのものはまだ解決していませんので、現実的な支援はそこからなのですが、そんな一言が言えないくらいつながる場所がない。そんな環境で育っていく子どもたちなのです。貧困ということでそのつながりはどんどん切れて行く。

今、私たちの活動では、そんな「困った」と言ってくれた地域の活動や学校現場にもどんどん人を送り込んで、一緒に問題解決について考えています。子ども、家庭への活動はもちろんですが、そこだけが子どもが育つ環境ではありません。だからこそ学校や地域そのものと学校をつなぎ直す作業が必要だと思っています。

次回は、その関わり方や、つながり方などについて具体的に紹介していきたいと思います。

Author:村井琢哉
NPO法人「山科醍醐こどものひろば」理事長。関西学院大学人間福祉研究科修了、社会福祉士。子ども時代より「山科醍醐こどものひろば(当時は「山科醍醐親と子の劇場」)に参加。学生時代には、キャンプリーダーや運営スタッフを経験し、常任理事へ。ボランティアの受け入れの仕組みの構築等も行う。副理事長、事務局長を歴任し、2013年より現職。公益財団法人「あすのば」副代表理事、京都子どもセンター理事、京都府子どもの貧困対策検討委員。
著書:まちの子どもソーシャルワーク子どもたちとつくる貧困とひとりぼっちのないまち

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