ひみつ基地

2014年1月号 vol.11

日本と世界から見る子どもが将来なりたい職業とは?-子どもの憧れの職業が映し出す大人の姿

2018年03月02日 15:19 by kimi

アメリカで人気職業の消防士

手元に残るボロボロになった一枚の写真。

90年代、アメリカの大学に在籍し野外教育を学んでいた僕は、人々を野外に連れ出す機会がとても多くなりました。少し郊外に出ればすぐに道路が無いウィルダネスが広がる土地。救急車のアクセスが確保出来ない場所で活動する中で、必要性にかられて取り始めた救急救命のクラスにも自然とのめり込んでゆき、気がついたら異国の地で救急救命士の国家資格を手にしていました。

大学卒業後、粘り勝ちが認められ初の日本人として入った消防署では、持てる知識と限られた道具を最大限に駆使する過酷な日々が待っていましたが、それは同時に刺激的でやりがいのある毎日でした。後に消防士にもなり、二束の草鞋を履きながらの活動は、木の上に取り残されて子猫の救出から事件事故の現場までを網羅し、今まで見たことのない世界への入り口となったのです。

勤め先である消防署は一つのビルを消防署と警察署が共有していたために、共同のリビングキッチンには体格の良い消防士や救命士、警察官がうろうろし、まるで映画のワンシーンのような風景が広がる場所。

体が大きく口の悪い同僚たちは、その見た目からは想像できないほど万人に優しく、地域住民にとても慕われていました。

「困った時は消防署へ」

これが冗談でなく、地域住民がよく口にする言葉だと実しやかにささやかれていたものです。消防車や救急車で道を走ると人々が手を挙げ笑顔で挨拶する。ファーストフード店に寄れば店長が山のようなハンバーガーをプレゼントしてくれる。毎日のように署には手作りのケーキやクッキーが届く。消防士は人々に愛され、そして消防士達はその愛に応えるが如くきつい現場で人々を踏ん張る、そんな日常がそこにありました。



その当時署長が良く言っていた言葉があります。

「消防署の仕事はサービス業。地域住民に喜んでもらって初めて僕らの存在価値があるんだ」と。

そんな彼自身も年に一度の独立記念日にはパリッと糊の効いた白い制服に身を包み、その綺麗な制服と署長という地位に左右されることなく、率先してゴミの片づけをやるような人物でした。

Fire Fighter(火と戦う者)という名で呼ばれる消防士は、アメリカでは人気のある職業として常に人気職業上位に挙げられています。正義感に溢れた彼らは多くの子ども達から絶大なる支持を得ています。911では自分の身も顧みない人命救助により、多くの消防士の尊い命が失われました。そこから多くの国民は実際に存在するヒーローを見て、その結果消防士は憧れの職業として不動の地位を確立しました。

世界の国々での人気職業を見てみると国によって大きな違いがあります。そこから子ども達の心の中を垣間見ることが出来るのではないでしょうか。

日本の子どもたちの憧れの職業ランキング

人気順位 低学年男子 低学年女子
1位 サッカー選手 食べ物屋
2位 学者 保育士
幼稚園教諭
3位 警察官・刑事 お花屋さん

(2013年第一生命保険会社「おとなになったらなりたもの」アンケートより)

これを見ると日本の男の子に一番支持されている職業はサッカー選手。そして二番目が学者。第三位が警察官と刑事。興味深いところではテレビアニメ系キャラ クターが五位。昔からテレビのヒーローごっこを男の子が好む通り、今でもその非現実のキャラクターに男の子は魅力を感じるようです。第三位の警察官・刑事 は東日本大震災で活躍した警察官を見て、他者のために働くといった考えが生まれそれを支持しているようです。

その一方で女子の一番人気は食べ物屋さん。そして二番目が保母さん。そしてそのあとにお花屋さんが続きます。

こうして並べてみると、男の子は多くのスター選手を輩出し、メディアに取り上げられる機会も多いスポーツ選手に根強い人気が集まり、いつも堅実な選 択をする女の子に比べると少しだけ現実的ではないのかもしれません。もちろん夢を持ちそれを実現することは素晴らしいことですが、女子と男子の違いを如実 に表しているように見えます。

子ども達の感覚と感情はとても柔軟である一方、影響も当然受け易いものです。

海外の様子を見るとその国における環境、教育、文化などの要素でなりたい職業は大きく変わっていくようです。

世界の子どもたちの人気の職業

イタリアではゴンドラの職人、トリュフハンター、生ハム作りという職業にも人気があります。やはり長い歴史を持ち、多くの歴史的建造物を大切に残し 続けているヨーロッパでは、子ども達の中にも自然とその歴史を大切にする気持ちが宿っているのでしょう。歴史に携わる仕事に人気があるようです。

ドイツでは人気職業の中にトンネルの清掃員が入っています。これも歴史的に見て由緒ある職業として高い人気を誇っています。日本に置き換えて考える と京都奈良に点在する歴史的な建造物や文化財の保護をする仕事といったところでしょうか。歴史を重んじるヨーロッパらしい回答です。

韓国や中国はどうかといいますと中国では科学者、大学教授のようなアカデミックな職業に人気があり、韓国では公務員に人気があります。

こうして見てみるとその国の置かれている状況、経済性や地域性、その国で起きた大きな出来事が子ども達の将来なりたい職業へ影響を与えているようです。



子どもは大人の鏡

日本の子ども達、そして青少年も他国の同年代と比べて幼く思われる傾向があります。どうやらそれは見た目だけではなく、彼らの行動た態度がそう見さ せるようです。どこへ行くにもゲームから目を離さない子ども達。それのみならず、大人たちが通勤電車内でゲームに興じる、これはどこの国を見てもどうやら 日本だけのようです。

アメリカ人の友人は電車での移動中に週刊誌の漫画を読みふける成人男性たちに驚愕して言いました。「大人が公共の場で漫画を読むの?」と。子ども達 は大人を見ています。彼らの目に映る大人たちの姿が魅力的であれば、彼らも一様に大人になることを求めるでしょう。人気のある職業はそんな子ども達の心の 一面を表しているように思えてなりません。アメリカの消防士がそうであるように、そして日本の警察官が人気職業上位に入っていることが示す通り、本気で動いている大人に子どもは魅力を感じ影響を受けるのです。

子どもの人気職業は大人の本気度を示すバロメータなのかもしれません。

多文化共生子どもサポート団体「感環自然村」代表/通訳・翻訳家 坂井公淳

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感環自然村は「五感を使い人と人、人と自然の環(わ)を創る」「違うがいい、違うが楽しい」「Think outside the box - 型にはまらない自由な発想をしよう」この三つをモットーに国籍や言語の違い、障がいの有無に関係なく誰でも集える場所を創るという想いのもと、2010年5月に長野県飯田市で設立された多文化共生子どもサポート団体です。多文化と触れ合うことで心に壁を持たない大人を育てること、異年齢での活動の中で他者と支え合い協力することを学ぶ事、これらを通しての次世代育成と真の国際人育成を目的として活動しています。現在、日本人、外国人合わせて約60名の子ども達が15名の国籍が異なるスタッフたちと活動しています。

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