ひみつ基地

2014年3月号 vol.13

今、被災地の子ども・家庭支援が直面する新たな問題とは?-「被災者」と一括りにはできない!「個別化」していく課題

2017年09月22日 16:08 by iwakiri_chika


(子ども支援団体や仮設の見守り支援員対象の、虐待防止セミナーを実施)

「個別化」して見え難くくなっていく課題

私は2011年の秋、子どもに関わる復興支援の活動をしようと、愛知県から宮城県仙台市に移り住みました。最初の一年間は受験生を対象とした学習支援の活動に取り組み、その後は現在のNPO法人チャイルドラインみやぎに所属し、子育て世帯への物資提供、子どもたちの居場所作り、親子遠足、支援者のケアや研修などの活動を行ってきました。

震災後丸3年になる今、少しずつ復興している一方で、「被災者」と一括りにはできない深刻な「個別化」という新たな問題を目の当たりにしています。

これまで、放課後の学習会に来た子どもたち、子ども服などの物資をお渡ししたお父さん・お母さん、リフレッシュ遠足で一緒に出かけたおじいちゃん・おばあちゃんなど、支援活動を通じて沢山の被災した人たちに出会ってきました。

「被災した」といっても、それぞれの状況や心情、抱えている困難は様々で、震災から時間が経つにつれてますます「個別化」しているように感じます。

時々、首都圏や関西の知人から、「今の被災地はどういう状況なの」と聞かれることがありますが、いつも答えに窮します。それは、個々に抱えている困難を代弁者のように切々と訴えることにどこか違和感を持ってしまうとともに、「被災地」が現在どういう状況なのかを一言で表すことはとても難しいからです。どこまでが震災の影響で、誰を対象に支援をし、いつまで関わり続けられるのか。それらの区別がとても難しくなっています。


(仮設住宅の集会所で、ハロウィンにあわせてかぼちゃバッグを工作)

復興が進むにつれて積み重なる家庭の問題

「今年は、しんどい一年になるね」

先日のミーティングで、「災害子ども支援センター」(※)に勤務するスタッフが、そう話していました。

このセンターでは、震災の影響で困難を抱えている子育て世帯を対象に、物資提供や相談事業を行っています。ここには様々な形で震災の影響を受けたお母さんたちが毎日訪れており、新しくセンターを利用したいという問合せも続いています。一人ひとりの状況を見ていくと、予算や人員に限りがある中で、私たちは今何をすべきか、誰に関わるべきなのか、常に迷いや葛藤があります。ただ一つ明確に言えることは、経済的に困窮していた家庭や家族関係がうまくいっていなかった家庭など、もともと不安定な状況にあった上に、震災をきっかけとして出てきた"重石”が次々に積み重なっているということです。今年はそういう問題にますます直面していくことになります。

最近、利用者から多く聞かれる話題は、災害公営住宅についてです。災害公営住宅の建設は徐々に進んでいますが、まだまだ全員が入居できるわけではなく、抽 選で決まります。仙台市も第一期の抽選が行われ、抽選に当たった世帯と、そうでない世帯が出ることで、格差が大きく感じられます。あるお母さんは、「前か ら仲良くしていたママ友がいるんだけど、その人が先に抽選に受かったと聞いて、なぜあなたが先なの?と思ってしまった…。仲良しのお母さんなのに、素直に 喜んであげられなかった」と話していました。

「しんどい一年になる」というスタッフの言葉には、こうした一つひとつの格差や、うらやましいと思う気持ちが、復興が進むにつれて取り残される人たちの心にじわじわと積み重なっていくということが込められているのではと思います。


(親子遠足で工場見学に行きました)

一つの家族に、継続して関わること

こうして、家庭間で広がる格差、揺れ動く気持ち、親から子どもに伝わる不安定さを感じながら、第三者として関わる私たちは、何ができるのでしょうか?

地域で子どもたちを見守って一緒に育てるということはもちろん理想的です。しかし、家庭の問題が震災後さらに個別化していること、家庭の中に第三者 が入っていくことはそう簡単ではないことから、「出会った一つひとつの家庭と関わり続けることしかできないのでは?」と考えています。

昨年夏から秋にかけて実施した親子のリフレッシュ遠足には、合計で50組以上の家族が参加してくださいました。皆なんらかの形で被災をしています。 遠足の後もイベントを開催し、毎回全ての家族にお知らせをしています。昨年12月に親子クリスマス会を実施したときには、子どもたちと工作をして遊んでい る間、ふと顔を上げて周りを見渡すと、どの親も、他の親やスタッフたちと真剣に話し込んでいる姿が見られました。話題は住宅、子どもの学校や保育園、家族 の健康、仕事など様々で、「他にこういうことをじっくり話せる場所がないので安心する」「やっと今震災のことを話せるようになった」、といった声も聞かれ ます。

被災地での子ども支援・家庭支援は、まだまだこれからです。継続して関わり続けること、また、そこからそれぞれの生活や気持ちの変化を一つひとつ感じ取ることを大切に、これからも活動し続けていきます。

※ チャイルドラインとは:18歳までの子ども専用電話。全国で統一のフリーダイヤルを運営している。友だちや家族との関係、いじめ、虐待、性の問題などに悩む子どもたちの声が寄せられている。
災害子ども支援センター:震災により困難を抱える子育て世帯を支援している。12年4月に開設。チャイルドラインみやぎが運営協力をしている。 

NPO法人チャイルドラインみやぎ 岩切千佳

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