Eduwell Journal

2014年4月号 vol.14

子どもの貧困を解決するために必要な「学校」という場 -必要な支援を子ども達に届けるための仕掛け

2020年05月23日 23:57 by takuya-murai


(「楽習サポートのびのび」の活動での一コマ)

社会人になるといつも転機だらけで季節に左右されることも少なくなってきましたが、子どものころはやはり進級、クラス替え、進学といった大きな環境の変化が訪れる季節が4月だったなと思います。ワクワクと、不安が入り交じるそんな入学式や始業式を迎えた方も多いのではないでしょうか。今回はそんな子ども時代を思い出しつつ「学校」との連携について書いていきます。

ここではこれまで、「子どもの貧困」について、子どもから「将来」「つながり」を奪っていくものだということを書いてきました。では実際に私たちはそのような状況にどう関わればいいのか。今回は学校という切り口からそのことについてお伝えしていきます。

支援を必要な子どもに届けられないという事実

「子どもの貧困」も実践者の中では、随分なじみのある言葉になってきました。「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が施行され、先日「第1回子どもの貧困対策会議」が開催されました。そこでは、「子どもの貧困対策を総合的に推進するための大綱の案の作成方針」が議論されるなど社会がこの問題を解決していくために動き出し始めています。さらに民間でも「学習」を切り口にその解決に向けた取り組みが増えてきています。特に先般報道にもありましたが、全国学力調査の結果分析でも、年収の多い家庭の子ほど成績が良い傾向があるという事実があきらかになる前から、所得と学力、学歴の関係は問題視され、直接的な学習機会の提供、間接的に学習機会にアプローチできる環境づくりとしてバウチャー制度など多様な支援が生み出されてきました。

しかし、各支援団体が口を揃えるのは、その支援、制度・サービスを必要な子どもに届けられていないという事実です。もちろん、その支援も人材・人員不足、資金不足、活動場所不足ということで質や量を担保できていないということはありますが、この数年で行政なども含め制度、支援が増え、助成金や補助金のテーマでも「子どもの貧困」が重点課題になり、その支援を受ける団体が増えているにも関わらず実際には、届いていないという現状があります。

カテゴリー分けできない狭間にいる子ども達

実際にその当事者である子どもや家庭からすると、「貧困」「虐待」「生活保護世帯」「ひとり親家庭」の支援をしているので来てください、使ってくださいといってアプローチするわけではありません。むしろ、そう思われることを避けるために使わないということもあるでしょう。NPOなどが社会から支援者を募る際には、「社会問題」を明確に打ち出す必要がありますが、それがそのまま利用者向けの打ち出しと同じとは限りません。そして、実際にはこのような言葉でカテゴリー分けできない、狭間にいる子どもが多いのです。線を引いたことで当てはまらない「困っている」子どもの存在。実際にはそこに届ける仕掛けが必要なのです。

(放課後の学習支援の様子)

子どもの貧困を解決するためのつながり

そこで現在取り組んでいることのひとつが小学校との連携です。行政との連携では、世帯として親の状況は把握しやすいのですが、子どもの状態を測ることはできません。しかし、義務教育期間であれば、学校として各児童とその家族の状況を把握しています。もちろん細かな各状態を分析できているわけではありませんが、「貧困」「虐待」「生活保護世帯」「ひとり親家庭」といった子どもの貧困に関わるようなカテゴリーに左右されず、日々接している教員だからこそ見える「困っている」というサインをキャッチしています。そのようなサインについては、碓井真史氏(2014)の「学校現場で感じる子供の貧困と格差」をご参照いただけるとイメージをもっていただけると思います。

また、不登校などの問題も、不登校かどうかも地域や社会として把握もできます。そのことでこの学区に「困っている」を抱えている小学生が何人いるかが見えてきます。それらを踏まえ、私たちは、学校として学校外でも支えが必要な子どもに活動を学校通じて届けています。もちろん、いきなり紹介してくれるわけではありませんので、それまで放課後のボランティアや、夏まつり等の地域と学校の接点の場面で関係づくりを進め、その上で、学校と課題を共有できる関係づくりを進めてきました。


(学校の土曜授業の様子)

学校という場を社会で活かす

現在、学校と取り組んでいるのは、学校内では放課後の学習支援と土曜日授業での体験プログラムづくり、学校外では平日夕方から夜にかけた学習支援と食事支援、場合によって宿泊型のプログラムで生活支援を行なっています。また、土日や夏休みなどの長期の休みの期間での学習や体験活動への参加の機会をつくっています。放課後や土曜授業の必要性も高まっていますが、現在は、教員が無理してそのプログラムを運営している学校も多く、そこを地域で担っていく取り組みをはじめています。

実際にこれらのことで子どもたちがどのように変わってきているかについては、次回にしたいと思いますが、学校教育という制度そのものへの賛否やご意見もあるとは思いますが、現状として問題の把握と届けるという点で学校という場はとても重要な場です。だからといって教職員がすべてを抱えられるはずもありません。学校という場を社会で活かすという視点で子どもの貧困解決に引き続き取り組んでいきたいと思います。

Author:村井琢哉
NPO法人「山科醍醐こどものひろば」理事長。関西学院大学人間福祉研究科修了、社会福祉士。子ども時代より「山科醍醐こどものひろば(当時は「山科醍醐親と子の劇場」)に参加。学生時代には、キャンプリーダーや運営スタッフを経験し、常任理事へ。ボランティアの受け入れの仕組みの構築等も行う。副理事長、事務局長を歴任し、2013年より現職。公益財団法人「あすのば」副代表理事、京都子どもセンター理事、京都府子どもの貧困対策検討委員。
著書:まちの子どもソーシャルワーク子どもたちとつくる貧困とひとりぼっちのないまち

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