ひみつ基地

2014年5月号 vol.15

今、日本の学校教育の現場で何が起きているのか?-多忙過ぎる業務、倍増する病気休職率、低下する採用倍率

2017年09月22日 15:43 by haruki_asatani

学校の不祥事に関するニュースが多く取り上げられ、学校に対する風当たりは強くなる一方です。しかし、学校現場には日々子どもと向き合い真摯に奮闘している先生たちがたくさん存在しています。参考までにですが、1人の教師が大学を卒業してから定年退職するまで約1,000人の生徒を受け持つと言われています。私たちは、子どもたちの今後に大きく関わっている全国に100万人以上いる先生たちをどうエンパワーするのかに焦点を当てて先生向けのWebサービスを開発しています。今回の記事では、あまり知られていない学校現場の現状を先生という切り口でお伝えできればと思います。

なぜ、先生を応援するのか?

私自身、教育系出版社に勤めていたということもあり、それまで教育というと、塾・予備校・通信教育等、学校以外の教育に目が行きがちでした。しかし、2012年9月に高校時代の同級生であり、現在中学の教師を務める友人との再会を経て、教師という仕事に着目するようになりました。教師という仕事のやりがいについて熱く語る彼を見て、こういった先生を応援できれば学校はもっと面白くなっていくんじゃないかと思ったのが現在の活動を始めたきっかけです。


(サービス立ち上げのきっかけとなった同級生との一枚、左が同級生、右が筆者)

生徒たちを惹き付ける授業作りには絶え間ない努力が必要

同じ単元であってもどういった授業を展開するのかによって生徒の反応は全く異なります。特に公立学校は学力別にクラス分けされている塾や予備校とは異なり、生徒の学力差が激しいため、多様な子どもたちに同じ授業で対応しなくてはいけません。私自身、学校でキャリア教育の授業をさせていただいたことがあるのですが、生徒の反応が本当にバラバラなんですね。どの生徒に焦点を当てて話すべきなのか分からず混乱してしまいました。



弊社が開発している学校の先生向けイベントまとめ「SENSEI PORTAL」には、年間2,500件程度のイベントが掲載されています。サイトに掲載されていないイベントも多数あるので全体としてどれくらい数があるのかは不明ですが、プライベートの時間を使ってどうすれば生徒たちにより魅力的な授業を届けられるのかと実践を磨いている先生も少なくありません。一方で、プライベートの時間を使って自己犠牲的に仕事を続けていくのは限界があると思うので、効率化できるところはどんどん効率化していくべきだとも考えています。

急激に増えている病気での休職率

そんな先生たちが勤める学校現場は今たくさんの問題を抱えています。病気での休職率はここ10年で約3倍近くまで跳ね上がりました。(平成24年1月文部科学省・教員のメンタルヘルスの現状) そして、その多くは精神疾患による休職です。精神疾患以外の病気は横ばいなのに対して、精神疾患数は倍近くまで跳ね上がっています。子どもと向き合う教師 の精神疾患数が増えているのは当然ですが好ましくない状況ですよね。原因は多岐に渡りますが、大きな要因としては業務量の増加と人間関係の複雑化にあると 私は考えています。

とても多忙な学校の先生たち

学校の先生は、夏休みは全て休みで、普段も授業だけしていればOKな楽な商売なんて思っていませんか?文科省の調査によると、S41年には8時間 だった残業時間が直近の調査では平日休日含めて41時間。持ち帰り残業時間も踏まえるもっと多い時間仕事していることになります。(平成18年度教員勤務 実態調査)授業をするにはそのための準備が必要であるし、また授業とは関係のない事務作業も年々増えており、学校現場は多忙を極めています。小学校であれ ば日中は生徒に付きっきりなので他の仕事はできませんし、中学校や高等学校であれば部活があります。教師は世間が思っている以上に多忙な仕事なのです。

なかなか相談できる相手がいない

もう一つ精神疾患が増えている原因として、「相談できる人がいない」という心因が大きいと考えられます。周りに先生がいるんだから周りの先生に相談すれば いいんじゃないかと思う方もいらっしゃるかもしれません。ですが、それぞれが忙殺されている中、なかなか他の先生に相談しづらい、またそもそも相談できる までの信頼関係を職員室内で形成できている先生は少ないように思います。

弊社が運営している小中高の先生向けSNS「SENSEI NOTE」 では、日々学校を越えて先生同士が活発なやり取りをしています。この活発なやり取りは相談できる相手がいないというデータが顕在化した形になっているので はと思っています。昔は学校が終わった後に同じ学校の先生で飲みに行ってその場でそれぞれの悩みを打ち明けたりする文化があったそうですが、今日において は残業時間が増えていることもあり教師間の交流は希薄になってきていると言えます。本来であれば学校内で活発なコミュニケーションと信頼関係を築けるのが ベストですが、代替案としてネットでのコミュニケーションが取れるというのは先生たちにとって大きなパワーとなっているようです。

教員採用倍率の著しい低下

教員の採用倍率がここ10年間で著しく低下してきています。学校への風当たりが強く教師という仕事のやりがい以上に大変な仕事というイメージが強くなったせいか。H13年度と比較して採用倍率が半分近くまで落ち込んでいます。

これらの問題をどうやって解決するのかまで綺麗に描ければいいのですが、私たちも日々どうすれば前に進めるのか模索を続けています。これらの問題は 何かをしたから魔法のように解決する問題ではなく、どれも骨の折れる問題ばかりです。お子さんをお持ちの方は、担任の先生に何か手伝えることがないか、あ るいは労いの言葉をかけてみてください。恩師がいる人は恩師を訪ねて感謝の気持ちを伝えてください。それだけでも救われる先生がたくさんいるはずです。 

株式会社LOUPE 代表取締役 浅谷治希

本記事を書いた記者の記事一覧

関連記事

世界や日本で広がる「森のようちえん」とは?-幼児の自然体験にとどまらない効果と価値

2018年1月号 vol.59

貧困状態の子どもに立ちはだかる「10歳・小4の壁」-自治体に眠るビッグデータから読み解く「子どもの貧困」

2017年12月号 vol.58

塾に行かなくても勉強できるんじゃないんですか?-「スタディクーポン」について代表者に聞いてみた!

2017年11月号 vol.57

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)

2018年1月号 vol.59

今月も子どもや若者の支援に関する幅広い情報をご紹介します。各分野の実践家が...

2017年12月号 vol.58

今月も子どもや若者の支援に関する幅広い情報をご紹介します。各分野の実践家が...

2017年11月号 vol.57

今月も子どもや若者の支援に関する幅広い情報をご紹介します。各分野の実践家が...