ひみつ基地

2014年8月号 vol.18

もうイライラしない!子どもを叱るより効果的な「既読スルー」!?-応用行動分析学から学ぶ子育てのコツ

2017年09月22日 10:17 by hitomi_kuma_73

「叱っても言うことを聞いてくれない」という子育ての悩み

例えば、お子さんが騒いでしまう、物を投げてしまうなど困った行動をした時、皆さんはどのように振る舞いますか?大抵の場合、「ダメでしょう!」「やめなさい!」と叱るでしょう。そして、その方法で、反省して困った行動をやめてくれるお子さんもいると思います。

しかし、平成13年~19年に厚生労働省が行った21世紀出生児縦断調査では、2~5歳の子育ての中で「子どもが言うことを聞かない」という悩みを抱えている親御さんは2~3割程度というデータが出ており、この中には、一般的な叱るという方法では、なかなか行動の改善に結びつかないケースが含まれています。お母さん、お父さんの「なんで分かってくれないの?」という想いは、そのまま子育ての悩みやストレスの要因となっていきます。しかし本来は、お子さん達も、お母さんお父さんも、一人一人違うもの。どうやって子育てをするか、その選択肢はもっとあっても良いはずです。

叱る以外の選択肢!「既読スルー」が効果的な理由とは?
 


では、叱ることがうまく機能しない場合、どんな選択肢があるのでしょうか。今、某コミュニケーションツールに関する「既読スルー」という言葉が流行っていますね。これは、送られてきたメッセージを認識しつつ、それに対してレスポンスをしないことを指しています。意外にも、子育てにおいて、この「既読スルー」を上手に使うことで、困った行動を減らせることが分かっています。

一見、お子さんの行動をスルーするなんて、ひどいこと、いけないことをしているように感じてしまうかもしれません。しかし、叱ることばかりで褒める機会がなく、親子関係がネガティブな循環に陥ってしまっている場合は、1つの有効な選択肢になるのです。

応用行動分析学に基づく「既読スルー」のメカニズム

ちょっと想像してみましょう。一般的に「既読スルー」をされたとき、皆さんはどんな行動をとるでしょうか?例えば、友人に「ご飯食べない?」と送る→既読 スルー。これが何度か続いたとき、皆さんは永遠にメッセージを送り続けるでしょうか?ほとんどの人は、何度か送った後に「返信ないし、送っても無駄かな」 と思い、メッセージを送らなくなると思います。

次に、友人に「ご飯食べない?」と送る→「いい加減にしてよ。二度と連絡してこないで!」と返信が来た場合はどうでしょうか?よほどのことがないか ぎり、先ほどの既読スルーの例と同様に、メッセージを送るのを辞めますよね。つまり、「既読スルー」も、「いい加減にしてよ!」と叱る方法も、結果として は「メッセージを送る」行動の減少につながっていくわけです。



逆に、時々でも「遅れてごめん!ご飯行こう」と返信がある場合は、その後もメッセージを送り続けますよね。

このように、行動の後に、ポジティブなレスポンスがある場合は、行動は増えていきます。逆に、行動の後に叱るなどの嫌悪的なレスポンスがある、もしくは既読スルーのように何のレスポンスもないと、その行動は減っていくわけです。



心理学の1つである応用行動分析学(Applied Behavior Analysis; ABA)の用語では、図のように行動の前、行動、行動の後の3つの箱でとらえる考え方を「3項随伴性」、既読スルーによって行動が減少していくような現象 を「消去」、ポジティブなレスポンスにより行動が増えていくような現象を「強化」と呼んでいます。

「おぜん立て」で、褒める機会を作ろう!
 

ここまでで、「既読スルー」のようにレスポンスを返さないことで行動を減らす「消去」という方法を説明しました。これを子育てに応用すると、どうなるかを考えてみましょう。

例えば、太郎くんは、今日のおやつはおしまい、と言われると、床にひっくりかえって大声でやだやだと叫びます。叱ってもいつまでも叫び続けるので、 お母さんがあと1個だけよ、とおやつを増やしてあげると、泣き止みます。しかし、大騒ぎする行動が以前より増えたような気がして、お母さんは困っていま す。

この例を先ほどの3つの箱で考えてみると、以下のようになります。



大騒ぎする行動が、おやつを追加でもらえるというポジティブな結果によって、増えていることが分かりますね。さらに、叱る、という一見嫌悪的なレスポンス をしてみても、大騒ぎする行動は減っていません。そのため、まずは以下のように、大騒ぎしてもレスポンスがない状態(消去)に対応を変える必要がありま す。すると、いったん行動が減っていくと考えられます。しかし、これだけではいけません。

なぜ、「おぜん立て」が重要か?

なぜかというと、幼い子ども達は、持っている行動の手札が少ないからです。先ほどご紹介した「ご飯行こう」とメッセージ→既読スルーをされてしまったよう な時、私たちはメッセージの送信をやめて、電話する、会いに行くなど、別の手札を出すことが出来ます。しかし、子どもたちは、持っている手札自体が少ない ため、次の適切な一手を自らで出すことが難しいのです。そのため、ただ消去をするだけだと、お子さんはどうしていいか分からず、別の困った行動をしてしま うことがあります。

消去と必ずセットで使わなければいけないのが、褒める機会をつくるための「おぜん立て」です。例えば、①予めおやつの量を視覚的に示してあげる、②おやつ が終わったら大好きなビデオを見ようと誘っておく、という2つの「おぜん立て」をしてあげ、おやつを約束の量でおしまいにするという行動を引き出してあげ ます。すると、おやつをおしまいにできた行動を褒めたり、好きなビデオを見せたりする機会を作ることが出来ます。これを繰り返していくと、所定の量でおし まいにするという適切な行動を増やす(強化)ことが出来、ポジティブな循環が出来ていくわけです。



今回、ご紹介したように、叱る以外にも子育ての選択肢があることを知ることで、「叱っても言うことを聞いてくれない。どうしよう」と行き詰ってしまうお母 さん、お父さんが少しでも減っていくと嬉しいです。親子でポジティブな子育てを楽しむために最も大切なのは、日々の生活の中で、いかにお子さんを褒める機 会を作ってあげられるかどうか、だと思います。たくさんの「おぜん立て」をして、お子さんの良い行動を引きだして、たくさん褒めてあげる。ぜひ、楽しくポ ジティブな子育てに生かしてみて下さいね。

NPO法人ADDS 共同代表 熊仁美

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