Eduwell Journal

2014年9月号 vol.19

震災が”始まってから”三年半、深刻化する子どもの孤立-2年連続で中学校の不登校出現率ワーストの宮城県

2019年09月13日 16:44 by yu_monma



ちょうど1年前、「震災が”始まってから”二年半、全国不登校率ワーストの宮城県の今」というタイトルで記事を書きました。ある学校の校長先生がおっしゃった「震災が起きた日が3.11ではなく、震災が始まった日が3.11だ」という言葉、先生の言葉を再びお借りするのであれば、2014年9月11日、震災が”始まってから”三年半となります。今回は、ちょうど1年前に取り上げた被災地・宮城県での不登校出現率を中心としながら、宮城県石巻市の子どもたちの今を書きたいと思います。

2年連続、中学校の不登校出現率ワーストの宮城県 

つい先日、学校基本調査(文部科学省)の平成25年度速報値が発表された。宮城県は、中学校の不登校出現率で3.17%(全国平均2.69%)を記録し、2年連続で不登校出現率ワーストを記録することになりました。

昨年9月に宮城県教育委員会が行った独自の追跡調査(仙台市を除く)では、「不登校となった児童・生徒のうち、約8%が震災を要因としている」という結果もあり、不登校のうち約12人に1人は震災要因での不登校ということになります。

当然ながら、宮城県の中でも、出現率の高い地域、低い地域が存在します。(全体的に、高い数値をたたき出しているのは否めないが…)私たちが事業エリアとしている宮城県石巻市は、まさにこの「出現率の高い地域」になります。

同調査平成25年度速報値によれば、宮城県石巻市における中学校の不登校出現率は3.75%となりました。宮城県の3.17%、全国平均の2.69%を大きく上回る数字です。実に、1学校に8~9人の不登校生徒が存在する計算です。(ちなみに、石巻市内の中学校は単級が多いため、計算上は1クラスに2~3人の不登校生徒が在籍する学校もあります。)



では、小学校の不登校出現率はどうでしょうか。同調査によれば、宮城県石巻市における小学校の不登校出現率は0.52%となりました。中学校と同様に、宮城県の0.4%、全国平均の0.36%を大きく上回る数字であり、彼らが今後中学生となっていく中で、不登校状態が継続することになれば、しばらくは深刻な状況が続くと思います。



宮城県石巻市もさすがにこの状況に危機感を感じ、いくつかの施策に踏み切りました。石巻市立小中学校不登校児童生徒対応協議会は、大学教授や教員OBを含む有識者(と呼ばれる)、スクールソーシャルワーカーや児童・民生委員などによって構成されています。しかし、その実態は「年に数回の不登校に関する講演会の実施」にとどまっており、実質的な有効策は講じることが出来ていません。

不登校になっている子どもたちの行方は…

不登校となった子どもたちがアクセスできる主な資源としては、適応指導教室とフリースクールがありますが、石巻市には適応指導教室が1カ所あるのみです。(民間の学習塾等に、不登校の中学生が通うなどの実態はあるが、不登校に特化をした施設でなく、また学習面のサポートにとどまっている)また、この適応指導教室も被災によって、現在はアクセスがしにくい地理にあるため、極めて少数の利用者にとどまっています。つまり、それ以外の子どもたちは、自宅や親戚の家などに「閉じこもっている」状態にあり、義務教育のため所属こそ失っていないものの、社会から孤立した状況に追い込まれています。

最近ではTEDICへも、不登校に関する問合せが増えてきています。中学生のAさんは、被災により小学校を転校、その後新しい人間関係が築けずに不登校になり、現在まで学校に通うことが出来ていません。今後、仮設住宅から災害公営住宅への移転が進む中で、こういったケースは増加していく可能性があります。

この状況を踏まえて、今年度の6月からTEDICでは大阪府のNPO法人み・らいずと連携し、「ほっとスペース石巻」として不登校の中学生の居場所支援を行ってきました。(ほっとスペース石巻は、2011年6月より開始。)10月からは、TEDIC単独事業として、地元に根ざした形で活動を続けていくつもりです。

また、市内小中学校と連携し、保健室登校や欠席しがちな児童・生徒へのピンポイントの支援を届け、事前予防に取り組んできました。不登校となる要因、また長期化する要因は多岐にわたっているが、学校と密接な連携をとることで、このサインを早期に掴むことができると考えています。

TEDICの事業の一つ、サードプレイス事業に参加しているBさんは、毎週笑顔で公民館にやってきます。スタッフと一緒に趣味の話をしたり、勉強したり、絵を描いたり、時には進路の話もしたりしながら、楽しそうに2時間を過ごしていきます。そんなBさんも、保健室登校が続く中で、TEDICに繋がれた1人です。週1回の公民館でのスタッフや友人との関わりでエネルギーを蓄え、最近では帰りのホームルームに参加できるまでになってきました。苦手意識のある対人関係の克服に加えて、学習の遅れを取り戻すために、必死に取り組んでいます。また、Bさんのケースでは、保護者へのケアも必要となっており、関係機関と連携しながら、包括的に支援をしています。

震災が始まってから三年半、今後の子どもたちに広がるものは…

いま、石巻市では生活保護受給者数が、上昇傾向に転じています。石巻市保護課の資料によれば、仮設住宅世帯(応急、みなし含む)の受給者数の割合が増え、2014年6月には、実に4人に1人の受給者が、仮設住宅世帯となっています。

震災直後から警鐘されていた、被災と貧困の相関関係が、ここにきて露呈してきた形です。仮設住宅から災害公営住宅へと移り変わり、また被災による給付金が減少していく中で、いよいよ経済的困窮とも向き合わなければならなくなりました。これまでも取り上げてきた様々なストレスも、ますます拍車がかかっていくように思います。そういった意味では、校長先生の言葉の通り、震災が”始まってから”三年半なのかもしれません。
 
来年4月から生活困窮者自立支援法に基づき、福祉事務所の設置自治体は、各支援事業を実施することとなりました。全国的な生活困窮者への支援施策を、被災自治体としてどのように活用するのか、復興財源が次々に切れていく狭間で、残り半年で早急に絵を描かなければならないと焦りを感じています。

TEDIC
 代表 門馬優

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