ひみつ基地

2014年11月号 vol.21

高校中退すると人生は終わりなのか?-高校中退者がその後の進路を考えるうえで重要なこと

2017年09月07日 10:01 by yamaguchi_masashi

高校中退した人たちが、その後、どのように過ごしているか知っていますか?また、身近に高校中退した人がいたとき、どのような道を考えてあげられますか?きっと、多くの人が、「高校中退後の人生は大変」「高校は中退しない方が良い」という意見を持たれることでしょう。もちろん、それは「正解」です。しかし、どんな状況でも、どんな学校でも、行き続けなければならないのでしょうか。「高校を中退するしかない」と思っている人たちもたくさんいます。私は、学校に行き続ける以外の答えにも「正解」と言えるようにしていきたいと思っています。

なぜ、高校中退は社会で厳しい状況に置かれるのか?

それは、「高校卒業」が当たり前になった社会の状況が大きいと考えられます。今や中卒の98%を超える人多くの人が高等学校に進学、卒業しており、ほとんどの人が「高校卒業」資格を持っていることになります。ここを中退することは、"ふつう”はできる卒業ができないことだと取られ、何らかの大きな問題がある落ちこぼれだと思われてしまいます。

しかし、「高校卒業」は、それほどの価値があるのでしょうか。私が出会った人の中では、高校中退する人と高校に残る人とでは、決定的に違う何かがあるように思えませんでした。高校を中退していった人たちの多くは、たまたま学校の校風やルールにはまらなかっただけ、家庭や経済的な状況、友人関係の中で中退という流れに逆らえなかっただけのように思えてなりませんでした。それは落ちこぼれではなく、はみ出し者というべき可能性を秘めていました。

高等学校が準義務教育的な位置づけとなり、セカンドプレイスとして必ず属さないといけないものになると、それ以外の道を選ぶリスクがとてつもなく大きくなることを意味します。そのリスクを避けるために学校に留まらなければならないということになると、その強制力が大きければ大きいほど、学校の中で昔から言われている問題がより大きくならないでしょうか。

また、社会では価値観の多様化が進み、それに伴って各学校でも特色を出そうとさまざまな取り組みが行われています。通信制の高校も注目されている今、もはや「高校卒業」と「高卒認定」ではその価値にどれほどの違いがあるのでしょうか。小中学生のフリースクールを教育機関として財政支援を行う動きと同じように、高校でも高等学校という制度以外の生き方も認められていくべきではないかと考えています。

(高校中退後の若者を支えるTOB塾の毎月15日の社会人・大学生・塾生の交流の場「ご飯会」での1シーン)

高校中退者の厳しさ:①社会性

とはいえ、高校中退した後、高校に在籍し続けることと比べて圧倒的に違うものがあります。それは、社会体験の量です。教室内のコミュニケーションや行事で の一体感、校外学習や修学旅行など、自分の役割を持ってたくさんの人たちと一緒にする体験は、社会性を育てるのに大きな影響を与えます。また、そばにいる 人たちの行動や意識に触れることは時に想像以上の成果に結びつくこともあります。

そういう意味ではこの学校やクラスなどの場は、いろんな社会性を育てるためのサンプル収集とコミュニケーションの試行錯誤ができる場といえます。いろんな シーンで、友達や先生たちが様々な反応を見せてくれます。そこは立ち居振る舞いのサンプルやモデルとなる人物が、身近にたくさんある状態であり、その集団 に所属し続けることで、知らず知らずのうちに社会性の吸収と実践を繰り返すことができるのです。ただ、その試行錯誤も間違うと、浮いてしまったり、いじめ られたりしかねないというプレッシャーの中での挑戦にはなりますが。

確かに、高校中退の人たちとの関わりの中で、集団の中では少しコミュニケーションに個性あるかなぁという人との出会いはあります。社会経験の少ない中退者 たちが、バイト探しや就職活動などで敬遠されることは、理解はできるところではあります。しかし、先に述べたように、人間的に何か決定的に欠けているとこ ろがあるわけではありませんし、対人関係に少し個性があってもそれは仕事のかかわりの中で日々成長していくものです。社会性を育てるのが先なのか、社会参 加するのが先なのか、それはどちらでもいいのです。いずれにせよ高校中退者にとっては働くということは数少ない社会参加の機会。できれば雇い入れてくれる ことを願います。

高校中退者の厳しさ:②ロールモデル

そして、高校中退後は、また別のサンプルやモデルが必要となります。それは、キャリアについてのモデルです。なぜなら、社会性醸成のためのサンプルは、個 人レベルでもバイトや就職をはじめいろんなコミュニティに属しながら集めたりしていけるのですが、高校中退後のキャリアは多様でありながら、正確な情報を 集めることが難しく、またそれぞれの道を進んだ先輩の絶対数が極めて少ないのです。そのため、高校中退後は一人ひとりが未開の地を拓いていくイメージに なってしまうのですが、そんなにたくましくしっかり進んでいける高校中退者がどれほどいるでしょうか。

平成20年度の「若者の意識に関する調査」で、高校中退後の進路決定に苦労したこと(複数回答)という項目を見てみると、次の一歩を選択するための情報がない・分からない様子が少し見えてきます。


・適切な情報を得る方法がわからない:19.2%
・気軽に相談できる相手がいない:14.1%
・受け入れてくれそうな学校がわからない:11.1%


また、高校中退や不登校経験を持った方々からも、そういうロールモデルをたくさん知りたかったという声を聞いていました。new-lookでは、2014 年9月末に、高校中退後のキャリアについて、現在、社会人として働いている方に語ってもらい、それを動画サイトに溜めていくというヒラケゴマプロジェクトを始めました。



「いろいろな生き方知って」 高校中退者向け塾運営の一般社団法人がサイト開設(2014.10.19・産経)

経済的・社会的な余力の少ない高校中退者にとって、モデルがいないということは、日々をどのように過ごせばいいのか、どんな道が可能性としてあるのか。何 もわからないまま、バイトや仕事、家事などの日常生活に流されて行ってしまいます。いろんなモデルを集めることで、いろんな生き方があるということを知る ことが、まず、第一歩となります。まだモデルは5人と少ないですが、今後10人、20人とモデルを増やしていけたらと考えています。本当ならば、これに具体的に現実の行動としてのもう一歩二歩を期待したいのですが、それが難しいことも良く分かっています。そこにも寄り添える何かを作っていきたいと思っていますが、それはまた次の話。今後も、いろんな見方を持って今後も活動を広げていきたいと思います。

一般社団法人new-look 代表理事 山口真史

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