ひみつ基地

2014年11月号 vol.21

「子どもの貧困対策に関する大綱」を読み解き社会に活かす方法②-支援を「誰に」「誰が」届けるのか?

2019年06月04日 23:20 by takuya-murai

子どもの貧困対策の動きが、各自治体で少しずつはじまってきました。前回の記事でもふれた栃木県小山市では、2015年度に重点事業として子どもの貧困対策を予算編成し、事業化に取り組むという動きもあります。(下野新聞:小山市、子どもの貧困「撲滅」へ独自計画

筆者が活動を行う京都府では、子どもの貧困対策検討会がすでに2回開催され、国の大綱で示された25の指標に対し、京都府の数字を確認することや、実際に最終的にどのような社会を目指すのかというゴール設定の議論を行っています。検討会を開くまでもなく、現実、どの自治体も、子どもの貧困対策の各項目に適合するそれぞれの施策をすでに実施していたりします。京都府であれば、奨学金の制度は充実している方です。進学意欲があり、制度にしっかりつながることができれば、将来に向けたチャレンジができる状況もあります。

「子どもの貧困」の実態を把握できるのか?

これまでも多様な子ども・子育て施策や教育支援施策、生活保護施策、児童福祉施策といった切り口のなかで、結果的に低所得世帯に暮らす子どもの支援を行っていたというケースがあります。自治体によっては、全く制度がない場合もあり、国が取り組むべきことと思われていた場合もありますが、何もしてこなかったわけではありません。それにも関わらず、制度がない、知らない、という状況が生まれるのはどうしてなのでしょうか?

検討会でも議論に上がっているのは、「だれに届けるのか」「だれが届けるのか」ということがわからない状況を打破する方法がないということです。このような社会問題を解決するにあたって、その現状を把握することが非常に重要なことだということは、多くの方が理解しています。しかし、実際にそのサービスを必要としている子どもを把握しきれていないのが現状であり、把握していないからこそ、届け方がわからないという状態になっています。またそれがわからないことによって、事業化自体が難しいという状況にもなっています。

一方で、既存の支援をすでに受けている子どもがおり、その子どもたちは子どもの貧困の施策として支援を受けているのではなく、他のそれぞれの施策の対象として受けています。個別対処型に施策をうってきた結果、それぞれのニーズ対象者はある程度把握できているので、全施策の合算としてのべ人数は把握できます。しかし、管轄が違うこともあり、実数がわからない、「だれ」というのがわからない状況にあります。


内閣府ホームページより

これまでの多くの施策を図のように振り分けると資料としては、上記のようなきれいに一枚のシートになっています。しかし、実際の支援がこのような隙間のない子どもの貧困問題を包み込む網羅的な支援になるわけではありません。そして、制度があっても申請しなければ得られないのものが多いため、情報をキャッチできない、また情報があっても理解できない対象者も多く、活かしきれていない状況があります。

スクールソーシャルワーカーとは?

だれが届けるかということと、課題を発見するという点においては、今回の大綱では、スクールソーシャルワーカーの存在を大きく打ち出しています。ス クールソーシャルワーカーは、子ども個人とその取り巻く環境のミスマッチによって問題が生じていると捉えます。問題解決に、個人と環境の双方を視野に入 れ、状況に応じて個人への関わりや、環境の改善に取り組みます。

また、個人と環境の間を取り持ち、関係の仲介・調整なども行います。さらに、個人が必要な資源を得られるように、代弁(アドボカシー)していくことや、資源を新たに創出するという開発的な力も発揮します。複雑な問題を多様なアプローチによって解決に結びつけていきます。

その点では、子どもの内面に意識を向け、学校での子どもが抱える問題などの対応に、専門的な知識に基づいたカウンセリングという方法を用いて、教育・心理相談に取り組むスクールカウンセラーとは担う役割が違います。

社会問題を学校に押し込めていないか?

「スクール」という言葉からもその解決に取り組む舞台を学校と位置づけています。指標の多くも進学率などが多く、教育的支援を中心にというのが今回 の内容で色濃くなっています。義務教育というだれもが通る学校という場は、子どもがどういう状況なのかを把握するには適しているため、その後、福祉的支援 を 導入にしてもよい現場にはなると思います。 

しかし、学校をプラットフォームにして地域のチカラをというのは、社会の問題を学校に押し込めた感が否めません。あくまで社会や地域という空間の方 がサイズが大きいわけですから、社会や地域が子どもの貧困問題を解決する上で、学校と子どもにどう向き合うかという視点が必要なのだと感じています。そう でなければ、学校の負担がさらに増え、多くの子どもたちにその負担のしわ寄せがいくことになるでしょう。

むしろ、地域が学校に押しつけてきた責任を引き受け直すことからはじめないといけないのかもしれません。また、スクールソーシャルワーカーには、学 校と地域、そして社会をどう結びつけ、解決していくのかという調整もふくめた包括的なスキルが求められてきます。「見えない課題を発見する」というだれに 届けるかということと、数ある支援をどう選択し届けるか、それらを組み合わせつつ、実際に解決に向かうための支援を行うのかを学校だけでなく、地域からの チカラもつなぎ取り組むことが必要になります。そこを担うのがスクールソーシャルワーカーです。


(商店街と連携して行っているこどもフェスタでの一幕)

1万人のスクールソーシャルワーカーを育成するのは容易ではない

目標では現在、約1,000人いるワーカーを5年後に1万人(全国の中学校の数)まで増やす計画が掲げられています。上記のような獅子奮迅の活躍を してくれれば大きな成果を出すことは可能かもしれません。しかし、求められている役割は非常に多く、複雑であります。そこまでできる専門職を育成するのは 容易ではありません。その意味では、1人のスクールソーシャルワーカーの力に頼るというのではなく、地域の実情に合わせてワーカーや団体・組織がその役割 を共に担っていくことが大切なのだと感じています。

今回は、教育的支援の中でも学校をプラットフォームにということとスクールソーシャルワーカーの配置について触れました。次回以降は、学習支援と生活支援について書いていきます。

NPO法人山科醍醐こどものひろば 理事長 村井琢哉

本記事を書いた記者の記事一覧

  




関連記事

どうしたら日本で若手政治家が増えるのか?~18歳から投票ができるのに、同世代を代表する政治家がいない

2019年7月号 vol.77

高校中退したら高卒認定を取るべきか?~高卒認定をおすすめする5つの理由

2019年6月号 vol.76

なぜ、若者は地方の中小企業に就職しないのか?(後編)~待遇改善や柔軟な労働環境は不可欠!外よりも中にヒントあり!

2019年5月号 vol.75

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)

2019年7月号 vol.77

今月も子どもや若者の支援に関する幅広い情報をご紹介します。各分野の実践家が...

2019年6月号 vol.76

今月も子どもや若者の支援に関する幅広い情報をご紹介します。各分野の実践家が...

2019年5月号 vol.75

今月も子どもや若者の支援に関する幅広い情報をご紹介します。各分野の実践家が...