Eduwell Journal

2013年05月号 vol.3

大学1年生がもう大学を辞めたい!今、大学で何が起きているのか?-全国に広がる大学ミスマッチで大学中退

2020年09月06日 23:09 by shoko_hatano

皆さんは、「大学ミスマッチ」という言葉を知っていますか?

大学に入学したものの、

・思っていたものと違った。

・やってみたらつまらなかった。

・難しすぎて授業についていけない。

・友達ができない。

などで、大学入学後に不適合を起こすことです。高等教育機関の中途退学者は年間およそ6万人。入学者全体の12%にも上ります。

もちろん、中途退学者の中には、経済的な理由など、やむを得ず中退をする人もいます。しかし、新聞報道によると、昨年の再受験者は約4万人いると言われており、この数は6年前の1万7千人から急増しています。(朝日新聞デジタル『大学入学後の「再受験」急増 9年で60倍、予備校調査』

これを見ると、大学で勉強はしたいけれど、この大学ではなかった、という判断の下に中退をした学生も少なくないと考えられます。

実際、この4月に大学に入学した1年生で、「辞めたい」という相談をしてくる子も出てきています。このようなミスマッチは、「本人の問題」で片付けて良いものなのでしょうか。



「学生のうちに遊んでおけ」は正解?


中途退学、再受験とまでは行かなくても、ミスマッチの潜在層は数多くいます。"大学なんて、楽に単位だけとって卒業さえできればいい”そのように大学生活を送っている人、と言われれば、思い当たる人も多いでしょう。

彼らは

・大学なんて意味ない(=諦め)
・自分の将来が見えない(=不安)

と共に漫然と大学生活を過ごし、大学生活において何も得られないまま卒業してしまいます。

その結果、学生の本分と言われる学問だけでなく、それらを取り巻く論理的思考、コミュニケーション、主体性、文章表現、理解などなど様々なソーシャルスキルも身につけることなく卒業していきます。

数十年前は、「大学を卒業している」というだけで付加価値になりました。しかし、大卒人材は飽和状態。

今や慶應大学や早稲田大学であっても就職先が決まらずに卒業する学生が3割以上います。4年間を無駄に過ごしただけの大学生には、付加価値がありません。つまり、大学生活の中身が問われている、ということです。

しかし、大半の学生は「遊べるのは今しかない」とばかりに楽しさだけを追求して4年間を終えます。それで良いのでしょうか?



就職先がないと嘆く学生の裏で、企業も採用したい学生がいないと嘆いている!


「大学生活の中身って言ったって、企業は学歴で採用を決めるじゃないか」

「企業が学歴を見るのをやめてくれないと、何を頑張ったって変わらないよ」

大学進学や進路指導などに携わっていると、このような言葉をよく聞きます。

私は前職で企業向けに新卒採用のコンサルティングをしていましたが、その経験から言うと学歴は「説明会に参加できるかどうか」という入口には残念ながら関係しても、「合格か不合格か」にはほとんど関係しません。採用業務を効率的に運用するために、確率論的に学歴というフィルタで優先順位を決めているだけで、時差はあっても、内定に至る過程には影響しないのです。(ほんとに!)

また、私は企業の人から「東大生を採用したいのに、全然来てくれない」なんて相談はほとんどされたことはありません。(もちろん、ゼロではありませんが)

では何を相談されるかと言うと、「海外に放り込まれてもやっていけるバイタリティ」だったり、「様々な世代や文化の人とも意思疎通ができるコミュニケーション力」だったり、「何かに一生懸命打ち込んだ経験(口だけでなく行動の実績がある)」のある人はどこにいるのか、という相談ばかりです。

"グローバルに展開したい”、"革新的なサービスを生み出したい”、そのような企業の方針の中で、新卒採用はそれを担う人材の獲得として非常に重要な位置を占めています。

しかし、それに応えられる人材がいない。ある人気企業は、10名程度の採用枠に2万人くらいの応募が来ていましたが、それでも良い人がいない、と悩んでいました。

ぜいたくを言うな、と思うかもしれませんが、この経済状況で生き残りを懸ける企業も必死なのです。



責任を押し付け合っているうちに日本は世界から置いていかれる

大学生は就職先がないと嘆いていますが、企業も人がいないと嘆いています。そんなことを言ったって、就職活動の開始が早すぎて何もできないんだ、と言われるかもしれません。

しかし、企業側にも言い分があります。大学で何もしていないため、大学入学時の学力=偏差値くらいしか測れるところがないのです。

どうせ4年間待っても遊んでいるだけなんだから、それなら大学受験で勉強をしてきた、素質のありそうな学生の中から早くに見極め、他の企業より先に囲い込み、自分たちで育てた方が良い、と考えるのも分からなくはありません。

もちろん、企業は自分の企業の利益が優先ですので、本人や社会にとってそれが良いことなのか、というと、疑問はあります。

しかし一方で、時期を遅くするように迫っている大学が、企業が待つ価値がある、と思えるだけの教育をしているかというと、残念ながらそうとは言えません。イギリスの教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションが発表した世界の大学ランキングでは、200位以内に入っている日本の大学はたった5校。教育の質、体系化されていないカリキュラム、勉強しなくても卒業できる制度、その一つ一つが教育機関としての在り方に疑問を感じさせます。

このように互いに自己中心的に主張しあっている間にも、日本の大学の中では付加価値を高める教育がなされないまま、大卒というラベルだけが貼られた人材が次々に社会に送りだされています。日本の産業がどんどん立ち遅れているのは、このせいではないか、という気さえしてきました。

では、どのようにすれば解消できるのか、それは次回の記事でご紹介したいと思います。

>>大学の授業はつまらないのが当然?-大学全入時代に変わりゆく大学の姿とは

Author:羽多野祥子
教育・研修プランナー。1987年、熊本県八代市に生まれる。東京の大学に進学し、卒業後は企業の新卒採用を支援する会社で営業職に就く。その後、研修企画会社を経て教育関係のNPO法人で新規事業の立ち上げやマネジメントを経験し、2018年10月に宮崎県日南市へ移住。現在は「地方と都市部の教育格差を解消する」をミッションに掲げ、フリーランスとして中高生のキャリア教育や企業の社員研修などに取り組む。

本記事を書いた記者の記事一覧

関連記事

コロナ禍における子ども・若者のソーシャルワークとは?(前編)-居場所を失うことは、ライフラインが途切れること

2020年11月号 vol.93

学校再開後に急増する女子中学生・高校生の自殺-コロナ禍の10代女子の自殺者数が前年比4倍に

2020年10月号 vol.92

LINEで10代の進路・就職の相談にのる「ユキサキチャット」とは?-否定せず関わる!幅広く長期的な対応で、悩む若者を支える

2020年9月号 vol.91

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)

2020年11月号 vol.93

本メディアでは、子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・...

2020年10月号 vol.92

本メディアでは、子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・...

2020年9月号 vol.91

本メディアでは、子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・...