Eduwell Journal

2014年12月号 vol.22

目指しているのは、再登校か?オルタナティブ教育か?-日本のフリースクール・フリースペースの現状と課題

2020年09月07日 23:23 by eduwell_journal

平成26年度学校基本調査結果によると、平成25年度の間、長期欠席者(30日以上の欠席者)のうち、「不登校」を理由とする児童生徒数は、小学校は2万4千人(前年度より3千人増加)、中学校は10万5千人(前年度より4千人増加)となり、これまでの減少傾向から一転し、増加傾向に転じています。

安倍晋三首相が2014年9月に、不登校の子どもたちが通うフリースクールに対し、新たに国が支援を行う方針を明らかにしました。その後、文部科学省では、11月に運営事業者らを交えた初の意見交換会を実施し、国・自治体による財政支援や制度的な仕組み検討し、来年度にも取りまとめたい考えを示しています。フリースクールにおける大きな転換点を迎えています。

NPO法人フリースクール全国ネットワークによると、フリースクールは現在、全国に400~500カ所程度あるとしています。その規模は少人数から100名を超える規模まで様々です。文部科学省が2013年に行った調査では、少なくとも2047人の小中学生が利用していました。

今、日本のフリースクールは、どのような現状であり、課題を抱えているのでしょうか?

フリースクールとフリースペースは何が違うのか?

フリースクールは、従来の学校教育・学習指導要領等の規制の枠にとらわれない学びの場・居場所づくりを目指して、NPO(非営利団体)などが運営しています。不登校の子どもたちの受け皿として、フリースクールと並んでフリースペースがあります。フリースクールとフリースペースは、明確な定義はありません。

一般的には、フリースクールは、一定の体系だったカリキュラムがあり、通学制・通信制・全寮制などの形態があります。フリースペースは、フリースクールよりもより自由度が高く、カリキュラムなどもありません。いつ来ても帰っても良いという自由な空間です。毎日の過ごし方などは子どもの自主性にゆだねられています。フリースクールにも通うことが困難な子がフリースペースを利用するケースもあります。

進級や卒業はできるのか?

両方とも学校教育法1条に定める学校の要件に該当せず、私立学校設立のハードルがきわめて高いこともあって、正規の学校としての認可を受けていません。日本の制度上は、学校教育法第一条に規定している学校に籍をおきつつ、フリースクールやスペースに通い、進級・卒業は在籍学校で行うというように、二重に籍をおいている形になります。

現在では、小中高校において在籍している学校長の裁量で、フリースクール等の民間施設に通った期間を、学習指導要録上出席扱いでき、進級・卒業も可能です。あくまでも、学校長の裁量によるものであり、フリースクールによっては認定が厳しい場合もあります。


平成26年度学校基本調査の速報

独自の教育を目指すのか?再登校を目指すのか?

フリースクールの運営目的は、大きくわけると二つに分けられます。

一つは、既存の学校教育とは異なる新しいオルタナティブな教育を目指すものです。オルタナティブスクールとも言われ、モンテッソーリ教育やシュタイナー教育などの強い哲学的な方向性を持つ教育、英語やアート、体験活動などに力を入れている教育などを行っています。この方向性のフリースクールは、学校への再登校を目指すものではなく、独自のカリキュラムによって子どもたちの成長を支えています。

二つ目は、学校への再登校を目指し、学校の教科書を使用したり、進度にあわせた学習のサポートや生活面でのフォローアップを行っています。あくまでも既存の学校教育の枠組みへ戻していくことを前提とした取組みが基本となっています。行政が設置主体となっているケースもあり、退職教員などが子どもの指導にあたっていることがあります。

公的支出がなく、家庭の教育費の負担が大きい


現在は、公的な委託でない限りは、フリースクールへの公的支出はありません。フリースクールを民間団体で単独で行っている場合は、必要な費用は、保護者が多くを負担することになります。

通学定期についても購入もできないということもあり、通常の学校よりも諸経費の負担も大きくなります。保護者は納税していることから考えると、子どもが通っていない学校へ間接的に費用の負担をし、実際に通っているフリースクールの費用を負担し、二重の教育費負担をしているという考え方もあります。(私立学校でも税による助成・補助を受けています)

矛盾を抱える運営モデル

民間団体が単独で運営している場合は、通常の学習塾と同様のモデルとなり、事業の成果として再登校者が増えた場合に、経営が成り立たなくなります。また、教育熱心な方が関わるケースが多いため、子どもたちを一度抱えると学校に戻すという意識が薄くなると言われています。

フリースクールが再登校を目的としている場合は、このような矛盾を抱えてやすい状況になっています。この部分に関しては、もし、フリースクールにバウチャー制度(利用者にクーポンのようなチケットでサービスを利用し、その費用の負担を発行者が代行する仕組み)を適用した場合にも、この矛盾は残ったままとなります。

再登校者を増やすことを目的としているフリースクールは、行政が費用を負担して無料で受け入れ、再登校を目的としないオルタナティブな教育を目指しているフリースクールは自己負担という現在のような形になるのは必然的な流れです。
 
多様な学校教育のあり方の必要

何よりも大切なのは一人ひとりの子ども達が自分の可能性を最大限に伸ばし、社会に巣立っていくことができる適切な教育環境があることです。欧米では、色々な子どもがいることを前提に、学校も多様な内容や形態ができるように支援する流れにあると思います。

約13万人にも上る不登校がいる現状は、少なくても既存の学校教育では、サポートできなかった子どもたちです。日本のこれからの学校教育のあり方を改めて見直す必要性を感じます。

Author:Eduwell Journal 編集部
本記事の執筆は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。「Eduwell」は、本メディアがテーマとしてきたEducation(教育)、welfare(福祉)、well-being(ウェルビーイング)の3つの言葉をつなぎ合わせて作られた造語です。本メディアは、子どもや若者を対象とした社会教育事業に取り組んでいる認定NPO法人「夢職人」が発行しています。

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